串打ちをする意味

焼き物の串打ちについて、日本料理では、焼き物を焼く時、串を使います。 なぜ串打ちをするのかというと理由は3つあり、

  • 素材の形を整える
  • 串を打つことにより火の当たり方(距離や位置)を調節できる
  • (金串の場合)熱せられた串を通して、内側から加熱する

これらの意味で串を打って焼くのです。形を整え、曲げて串打ちすることにより、立体感も出て、盛り付けが華やかになります。ちなみに海外で金串を見つけるのはかなり難しいと思います。(場所にもよりますが)

私は、海外で働いる時、どうしても金串が欲しくて、日本に帰国した際にまとめて買ってきて、空港の税関で止められた経験があります(笑)。長いし、先が尖っているので、危険物だと思われたんだと思います。何とか持ち込むことはできましたが、海外に持っていくのも一苦労です。

では、金串が無ければどうやって焼いていたのか? と言うと、魚の切り身を平らなまま、網などに乗せて焼いていました。

その焼き方がどうしても我慢できなくて、日本まで買いに行ったのですが、金串にも色々あります。長さや太さなど、魚によって使い分けなければなりません。

もし、今働いている店で串打ちして魚を焼いているのであれば、どの太さ、どの長さの串なのか覚えておいた方がよいでしょう。ちなみに、鯛の姿焼などは、普通より太めの串を使います。   では基本的な串の打ち方について簡単に説明します。

平串(扇串)

基本の串打ちで、素材に対してまっすぐに打ちます。 鯛の切り身とかの場合、背骨に対して垂直方向に打つと身割れがしにくいです。 (あと身が縮んで破れないように皮目にも切り込みを入れると良いです)

平串のポイント

3本以上の金串を使って打つ時、 まっすぐ刺さずに、扇のように左右へ外側(向う側)に広がるように打って下さい。理由は手元がもちやすく、扱いやすくなるためです。

2~3つ素材を縦に並べて同時に打つ場合も同様に扇になるように打った方が良いので、手元から素材の小さい順に並べて、串打ちをすると綺麗にできます。

扇の広がり具合は、手元で一番扱いやすい幅で調整しましょう。余りにも広がりすぎると逆に扱いづらくなるので注意してください。この打ち方は、平串に限らず、どの打ち方でもほとんど当てはまります。

波串

波のように、縫うように打つやり方です。 へぎ切り(斜めにカット)した魚や、身が薄く幅が揃っていない素材に適しています。(鮭・マナガツオなど)

波串のポイント

串が打つ時、山と山の間の部分で、盛り付けて表になる側に金串が飛び出して見えないように気を付けて下さい。 理由は、串を抜いた時に、その後が表面に見えて、汚く見えるからです。

褄折り串(片褄折り串・両褄折り串)

端を折り込んで打つやり方です。 身が薄くて、幅が揃っている魚に向いています(カマスなど)。ぐるっと丸め、?(はてな)マークの上側のような感じで丸めて打ちます。

  • 両側とも丸めて串打ちしたのが「両褄折り串」
  • 片方だけ丸めて串打ちしたのが「方褄折り串」「わらび串」

とも呼ばれます。

褄折り串のポイント

皮が固い魚も多く、皮を貫通させて打つやり方なので、皮目に切り込みや飾り包丁を入れてやると、串打ちがしやすくなります。

踊り串

夏の鮎(あゆ)の踊り串は有名です。というか、大概の料理屋では鮎でしょう。川魚など、鮎に似た小さめの魚で踊り串を打ちます。

鯛(タイ)の姿焼なども似ていますが、 鯛と鮎の打ち方は、少し違います。

店によって、踊り串でもやり方は異なってきます。 説明が難しいですが、鮎の右目の下から串を打ち、反対側に貫通させずに、背骨をぐるっと一周させて縫うように時計周りに串を通します。

左側(鮎から見たら右側)打った串が飛び出て見えますが、反対側(鮎の左側)は盛り付けてお客様に見える方になるので、串は見えないように打ちます。

たぶんこんな説明では、さっぱりわからないと思いますが、絵にするとこんな感じです。

IMAG0642[1]

背骨が絡みついているように打ちます。(絵がへたくそですいません(+o+))

以上、これらが串打ちの種類です。

串打ちポイントまとめ

魚や野菜、肉などの串打ちで、 全てに共通して言える事ですが、串を打って、持ち上げた時に、左右どちらにも傾かず、まっすぐに素材が保持できるように打たなければなりません。

少しでもバランスが悪いと、前後左右どちらかの焼き目が付け過ぎになり、扱いが難しくなるので、串打ちはとても重要です。この串打ちの基本ができていないということは、素材をしっかり把握していないことにもなります。

金串は使いませんが、 豆腐の田楽などで、豆腐に串打ちをする時、この場合は竹串を使いますが、かなり緊張感があり、バランスを要求されます。

木綿豆腐などの固めなら、まだやりやすいかもしれませんが、私は昔、京都から毎朝わざわざ配達してくる、絹ごし豆腐の田楽を提供していたことがありますが、 超難しいです。

寸分の狂いもなく、バランス良く打たないと、すぐに豆腐が割れてしまい、うまくいったと思っても、焼いているうちに崩れてしまいます。

豆腐に打つバランスもそうでしたが、竹串も自分で竹やぶに竹を取りに(笑えますがマジです)行って、1から竹串を作っていたので、その作った竹串自体のバランスが悪くても良くありません。

当時、焼き場にいて一番神経を使ったのが、豆腐の串打ちです。はっきり言って、豆腐でうまく串打ちできるなら、魚はおそらくかなり簡単でしょう。

このように、串打ち一つとっても、職人の技術が試されます。

料理人はわかっていると思いますが、今まで、串打ちなんてしたことが無い方は、 今度、料理屋で焼き魚などが出てくる時に、今回話したことを思い出して食べていただけたらいち料理人としてうれしく思います。