まとめて入れるとカリッと上がらないのは、油の温度が下がるため、そんなことは、少し考えればわかりますよね。でも、もう少し掘り下げてみたいと思います。

たとえば量にもよるが、180度の油に海老の天ぷらを入れたとすると一気に3-4分間で170度まで落ちてしまう。これは、揚がるときに水分が勢いよく蒸発するからそのため、温度が下がります。

液体は気体に変わる時に周りから熱を奪うためです。材料を入れれば入れるほど温度は下がるので注意しましょう。

分かりやすい例でいえば、真夏に地面に水をかけると涼しくなるという原理と同じ。この時水は蒸発しながら地面から熱を奪います。

油に限らず、何かをボイルするのもたくさん一気に入れると温度が下がってなかなか火が通りにくくなりますよね。とはいっても水に比べ、油は温度が上がりやすい(下がりやすい)です。

なんとなく感覚で分かりませんか?同じ量の水と油を同じように火にかけても油の方が早く温度が上がります。

それはなぜかというと、比熱というものが関係しています。ある物質の温度を上げるのに必要な熱量を比熱と言います。

で、水の比熱を1とすると油は0.47です。水の半分以下です。つまり半分の時間、もしくは半分の熱量で油は熱くなるという事です。

つまり油は比熱が小さいため、温まりやすくもあり、冷めやすいのです。なべに入れる材料の量の目安は多くても油の面積の3分の一から半分がいいでしょう。

 

あと材料にも、温度の下がり具合は違います。海老とか、牡蠣とか水分の多いものは、下がりやすいし、また、コロッケのような塊よりもかきあげやポテトチップスのような平たい材料の方が温度を下げやすいです。

油の難しいところは、だからと言って最初に温度を上げすぎても焦げやすくなるし、油の温度を頻繁に上下させると油が悪くなります。要するに、たくさん入れないことと、油をたっぷり使う事、揚げもの専用のなべを使う事がポイントです。

ちなみに油を入れて鍋底からの深さは最低5cm欲しいです。ただし、なべぎりぎりまで油を入れるのは危険なのでやめましょう。温度を上げれば、油が膨張して体積が大きくなるので、気持ち少なめに入れておくことをお勧めします。

 

<雑学>家で揚げ物するときの誤った認識

家庭の場合、、、鍋の上のネットに揚げものを置いたりしますが、実は良くありません。

落ちた油が無駄にならない。鍋から近いから楽ちんだ。との理由からでしょうが、鍋の上には蒸発した湿気でいっぱいです。つまりその上に揚げものを置くと、せっかくカリッとした揚げ物が、昇ってくる蒸気でシナッとなってしまいます。

ですので、専用のバットに、ペーパーや網をを敷いてその上に置くようにしましょう。

あと、あがったものを重ねるのも良くありません。重さがかかると衣から油が出てきてしまいます。

さらに冷め始めると、内側に閉じ込められていた食材の水分も逃げ出して自分の衣ばかりか周りの衣まで湿らせてしまいます。揚げもの同士を離して立てておくのが良いです。