我らの時代の魚のおろし方高度資本主義前史

今回、魚の水洗いをしたり、おろしたりする際に、自分では当たり前と思っていても、教えてもらう側にとっては知らないことであり、教えている自分自身では気付いていない部分を発見したので記録に残そうと思います。

魚の目利き

まず、簡単に、魚の目利きでわかりやすい見分け方は、
  • 目が澄んでいるかどうか?
  • エラがきれいなピンク色をしているかどうか?
  • 身やヒレなどが傷ついていないか?
  • 魚を上から見たときにやせ細っているよりも横に太っている方が良い
  • ぬめり具合
などがあります。
 

ぬめりについて

ヌメリの主成分は「ムチン」という、糖蛋白質。人間の胃粘膜とか、口や目やあらゆる器官の粘膜も同じ物質だといわれています。
 
そのぬるぬるは 海水の中の細菌に感染しないための保護膜のような物です。魚同士や岩などに接触したら怪我をします。そのとき細菌により感染を防ぐ働きがあるのが“ぬめり”です。
 
人の場合は、水などにいつも接していないため空気感染による病気がありますが、魚は、いつも水の中にいますが、空気中と同じように、いろいろな汚染物質や細菌が水に溶け込んでいます。ぬめりは、保護膜の他に、水との抵抗をへらして泳ぎやすくするなどの効果があります。
 

ぬめりの取り方

塩を振る

両面に少量の塩をふってしばらく放置して、10分位たつと臭みの水分がでてくるので、水でよく洗ってすぐにキッチンペーパーで水分を拭き取ります。すぐに拭き取らないとまた臭みが出てきます。
 
アンコウ等の海の底に住む魚や臭みのある魚は、湯煎にくぐらせて臭みやヌメリ等を取ります。 
サーモンや鱒は中層の回遊魚なので湯煎にくぐらせなくてもそれ程臭みは無いです。(獲れる場所にもよります)
 
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片栗粉でぬめりをとる

タコなど、この方法でぬめりを取ります。
塩ではなかなかぬめりが取れない時や、塩味がついてしまうのを気にする場合、片栗粉を使って取る方法もありです。
 

熱湯をかける

熱湯をかけるてぬめりを落としたり、臭みを取り除く手もありますが、その場合ポイントは80℃のお湯と酢。グツグツ沸いた熱湯だと、魚の皮が破れる原因になるので、 沸く手前か沸騰した湯に水をさして調整し、そこへお酢少し入れます。
 
また、鮭に限らずほとんどの魚もヌルヌルしているほうが鮮度がいい証拠です。ヌルヌルは魚が活きている時に細菌から身を守るためのもので[タンパク質=アミノ酸]です。
 
死んで時間が経つとヌルヌルはなくなりザラザラします。こうなると鮮度が落ちています。
 

魚の保存温度

冷蔵庫は一般に5℃くらいですが、魚にとって一番心地よい海水温度は、3~4度だと言われています。もちろんこれは海の中にいたときの温度です。ただ、難しいのは、魚によって、住んでいる海の温度が微妙に違ってくるということです。
 
、、、そればかりは、調整するのは難しいかもしれません。
 

魚の水洗い(うろこを取ったり内臓を取る)

いざ水洗いをするときに、鱗をとりますが、魚には鱗の大小があります。
 
鰹のように、表面には鱗はほとんどなく、頭側、背側、腹側に異常に硬い鱗がある魚もあれば、鯵にもゼイゴと呼ばれる尻尾に近い部分に硬い鱗の塊があります。
 
これら硬い鱗や皮はどうしても、通常のうろこの要領では取り除くことができないため、魚の体表に包丁を付けて、ギザギザ動かしてこそげ取るように鱗を取ります。
 
アマダイも同じく、 アマダイに関しては身体全体にものすごく頑丈な鱗がついているので、尻尾の方から(どんな魚でも尻尾から包丁を入れて鱗をとります。逆だと鱗にそった形になるので取れません)皮一枚だけを残して鱗を取ります。
 
アマダイの調理法には、鱗をキレイに取り、それ自体を焼いたり油に通したりして、身と一緒に鱗を食べる料理もあります。または、わざと鱗取らずに身に残して、そのまま鱗をしっかりパリパリに焼く場合もあります。
 
「ウロコ焼き」や「松笠揚げ」と呼ばれるものが、ウロコも一緒に調理した料理名です。
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では次。
 
内臓を取り除きますが、注意点はニガ玉と呼ばれる、苦味の塊です。ニガダマとは、魚類の胆嚢をさす言葉です。調理中に潰すと、身に苦味が回り洗っても落ちません。ですので、腹に包丁を入れる時は表面だけを切ります。
タイなどはタイの子と呼ばれるように魚卵が入っていたり、鰹も酒のあてになる酒盗の材料である内臓が入っているので、それら内臓も使える部分は多くあるので、どの内臓も傷つけずに切り込みを入れることが大事です。また、最終的にエラと一緒に内臓を取り出す際にも、取り出しやすいという利点もあります。
 
このニガダマは通常は取り除きますが、サンマやアユは例外的に好んで食べられます。内臓を付けて焼きますよね。
 
内臓を取ったら、頭を落とす前に内側の中骨に沿った血の塊を包丁の切っ先で傷つけ、ササラと呼ばれる道具や歯ブラシなどで、中の血を十分にきれいにします。
 
この時頭を落としてしまうと、落とした部分の身が真水に触れてしまうことになったり、血が付いたりして臭みや痛みの原因になるので注意してください。
 

魚のおろしかた

魚を3枚におろすのは、経験です。(笑) 頑張ってください。出刃包丁を入れたときに、包丁の下に骨を感じるのであれば、上手におろしている証拠でしょう。
 
ただ唯一、魚の中でもマナガツオだけは、骨がものすごく柔らかく、切っていても骨を感じることがかなり難しいので、これはまあまあ技術が必要です。
 
また、包丁は何度も身に入れるのではなく、できれば一回で腹の部分なら腹の部分、背の部分ならの部分など包丁を入れる回数を少なくすることで、出来上がりの身の状態もキレイになりますし、魚の負担も少ないです。
 
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また、おろしている時、本当にちゃんと正しい位置に包丁が進んでいるか、大丈夫かどうか不安だと思いますが、だからと言って、その身を持ち上げてチェックしたりすると、魚の身が割れてしまって、商品として価値が無くなる可能性が高いので、身は持ち上げてはいけません。
 
特に鰹や鯖など身の柔らかい魚は注意して、鰹などは、その理由からも、3枚卸ではなく5枚卸にして、身の崩れを防ぎます。
 

節どり(柵に分ける)

魚をさばいたら、次は節どりですが、とりあえず端折ります。
 
要点だけ説明すると、用途にもよりますが、腹と背に半分に分ける時、刺身にするのかとか、切り方はどうするのか、どんな料理になるのかによって腹と背に分けずに、骨を抜く場合もあります。
 
小さい魚は骨を抜く場合が多いですが、大きい魚はそれなりに骨も大きくなるので、抜きづらくなります。
 
また鱧(はも)など骨が多すぎる魚や、骨自体が柔らかい場合、骨切りをして使う場合もあります。
 

皮のひき方(取り方)

次に皮を取り除くのですが、これも魚によっていろいろで、鯖など皮が薄い場合は、皮ごと食べても良いです。しかし生で食べる時は、イカとかもそうですが、皮には何層かあって、表面のとても薄い皮だけを取らないと、口に残ります。また、タイの皮でも、焼いたり熱湯をかけて、表面に切り込みを入れることで、皮ごと食べることもできます。
 
包丁を使って皮を引く場合、包丁の背をまな板にピタッとくっつけて、皮を引っ張りながら外します。基本的には、頭側から尾に向けて皮を引きます。それは、魚の繊維の方向から見て負担が少ないためです。しかし、ロスなどを考えたり、やりやすさを重視し、尾側から頭に向かって皮を引く人は多いです。
 
最後はお造り(刺身)にする場合の切り方ですが、説明するとキリがないし、ここでは説明しきれませんのでしません。
また今度の記事に書きます。
 

まとめ

全体を通して言えることは、“姿勢を意識する”こと。それは「カウンターでお客さんから見られているから」という理由ではなく、自分自身を見つめなおす意味が大きいです。
 
私は経験上、一目見てその人が上手いか下手か判断できます。また、今後上手くなるか、ならないかとかもなんとなくわかります。それが姿勢から出ています(姿勢というのは見た目の姿勢も心持の姿勢も両方あります)。
 
例えば、教えていても、相手が自分のことを信じていない場合、それが姿勢として現れるので、わかります。まあ、こちら側の伝え方もあるんですけどね。
 
ということで、今回の魚講習で、教える立場として学んだことを書きました。