料理がおいしく感じる味覚の原理 ~五味と舌のミライ~

口で感じる味覚について深く掘り下げてみたいと思います。

料理がウマく感じたり、味の変化がわかるのは、第一に「味覚」と言う感覚が重要になってきます。

それは食べ物の中に含まれる“味分子”と呼ばれるものが、舌の“味蕾(ミライ)”という部分で味を感知し、脳へと伝えます。

味の分子が情報として脳へ行き、五味「甘い」「酸っぱい」「苦い」「塩からい」「旨い」“基本味”を感じるのです。

ここで「あれっ?」と思った方、、、5つ目のの味覚は、「旨い」ではなく「辛い」なのでは?実はこの考え方は中国の五行説での考え方です。

  1. 甘味 – 土
  2. 酸味 – 木
  3. 塩味(鹹) – 水
  4. 辛味 – 金
  5. 苦味 – 火

となっていますが、五原味とも言われる脳で認識できる味の根本は「味の四面体」(甘味・酸味・塩味・苦味)に加え“うま味”です。それで五味となります。

では、「辛み」はどこへ?という解答ですが、それはさらに大きな味覚の一括りで、五原味に加え「辛み」「渋み」「キレ」「後味」「コク」「深み」などと一緒にされています。

舌のミライとは?

舌にある味細胞の集まりである味蕾の数は、子供のころがピークで10~12歳の時に10000個あり、少しずつ減っていき、大人になると2~3000個ほどまで減少すると言われています。

さらに味蕾は新陳代謝が活発で、10日ほどで細胞が入れ替わります。その際、亜鉛不足の食生活をしていると味覚障害が起こると言われています。要するに、激辛料理やジャンクフード、インスタント食品は控えましょうってことです。

さて、味の蕾(つぼみ)と書いて味蕾(みらい)。

これは、味を感じる“舌”に集結しているのですが、では舌のどこにあるのでしょうか?

昔、舌の前、後ろ横などで感じる味覚が違うという話を聞いたことがあり、舌の特定の場所で味わうと苦く感じたり、甘く感じるというものですが、これは完全なデマだったみたいです。若干ショックでした。

WS000755

この図が味覚地図と呼ばれるものです。この嘘の情報を信じている人はいまだにたくさんいます。

私は小さいころ、舌の場所によって味覚が変わる実験をして、本当に味が変わっていたように感じたのですが、それは気のせいだったのか?マインドコントロールされていたのか?その他唾液の分泌量など色々な要素が組み合わさってそのように変化を感じていたのか?

今となっては、わかりませんが、判断するのはなかなか難しいかとも思います。なぜなら、人間はそれが正しいと言われれば、そのように感じてしまう生き物でもあるからです。

例えば、高級な寿司屋に行って50歳くらいのビシッと白衣を着た短髪の料理人に握ってもらったお寿司と、居酒屋で茶髪、長髪のちゃらちゃらした兄ちゃんがへらへらして作った寿司と食べ比べた場合、

もし、その50歳の人が素人で、若い兄ちゃんがものすごい上手な寿司職人だとしても条件として、材料やネタがほとんど同じだとしたら、目に見える視覚だけで判断してしまい、美味しいと思うのは身なりがしっかりした50歳の人(素人)が作った寿司ではないでしょうか?

まあ、その議論をすると、話が終わらなくなるので次の機会にしますが、このように、おいしさを判断する要因は味覚だけではないということです。

味を感知する舌乳頭

舌の上面はざらざらしていますよね。それらは舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれる小さな突起物です。味蕾というのは、そのざらざらした部分に集まっています。この図を見てください。(上が舌奥、下が舌先です)

3舌

舌乳頭は4種類あり、それぞれ場所も違います。

舌の奥にある紫の部分は、有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)舌の付け根付近だけに10個程度存在し、一個あたり数百~数千の味蕾があります。(数の目安:約2200個)

舌のサイドの付け根に近い部分(水色部分)だけに存在するのは葉状乳頭(ようじょうにゅうとう)これらも味蕾を持っていますが、有郭乳頭よりはるかに数が少なく、一個あたり十数個だけです。(数の目安:1300個)

ピンク色の舌全体に広がるのは、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)舌を見た時に白いぼつぼつが見える場所です。舌全体に存在しますが、味蕾は存在せず、味の感知には関係ありません。舌のざらざらした部分で、食べ物を舐めた時にやすりのようにこそぎ取る役割です。

舌先の黄緑色は、茸状乳頭(じょうじょうにゅうとう)舌の先端にあります。糸状乳頭に似ていますが、見ると血管が透けて先端が赤く見える部分です。舌全体、特に先の方の表面に集中しています。一個の突起あたり数個程度の味蕾が存在しますが、味蕾を持たない突起もたまにあるみたいです。(数の目安:1100個)

その他、味蕾は舌以外にも(下の奥の方や喉のあたりに)約2300個存在していて、これらも味覚を感じると言われています。

3舌

これらのことから、舌の後ろ~奥にかけてが一番味に敏感な部分だと言えます。そして味覚のほかに視覚、聴覚、嗅覚、触覚の情報も同時に伝えられることにより、総合して味の判断が下されます。

その他に食べる人の年齢、環境、過去など様々な要因によって、人それぞれ味の感じ方が変わってきます。つまり、まったく同じ料理を食べても、「おいしい」と感じる人もいれば、「おいしくない」と感じる人もいるのです。

その脳や認知の仕方の違いで味の感じ方が変わるメカニズムはまだまだ謎な部分は多いのです。