あなたの知らない!?お寿司屋さんの裏側

めずらしく寿司についてお話しします。多分今後、栄養や健康関係なく寿司について語ることはないでしょう。

ちょっとした寿司についてのまとめです。

提供方法の変化

寿司の出し方は昔と今とでは変化しています。

今は「お好み(おこのみ)」で食べるお客さんは少なくなりました。(カウンターで食べる高級すしの場合)

*「お好み」とは、自分の好きなネタ、例えば卵とかマグロとかそれぞれ好きなネタだけを注文する食べ方です。

2000年以降は「おまかせ」で食べる人が多くなりました。

*「おまかせ」とは寿司職人がネタの順番を決めて一貫ずつ出していくやり方です。

「おまかせ」は色々スタイルはありますが、寿司の貫数で言うと少なくとも10種類以上、多ければ30種類の寿司屋もあります。

このような出し方をすることで、お店で使っている魚介類とかのネタを食べることができ、またそのお店のお寿司の味やスタイルを余すところなく味わうことができます。

また料理人としてもお客さんと会話をしながら、食べ方を見ながらお寿司を出すことができるので、シャリの大きさや、お寿司を出すスピードを調整できます。

お腹の具合なども聞くことができますし、それによってお寿司の貫数も決めることができます。もし足りなければ追加注文もOKです。

*オーソドックスなお寿司屋さんだと最後は巻物(かんぴょう巻きなど)が出ます。

お寿司を味わうならアルコールは飲まない

お酒を飲む人はビールだったり日本酒だったりと、一緒にお寿司を食べる事は多いです。(私は間違いなく飲みます)

けど純粋にお寿司を味わうのであれば、一番良いのはお茶です。

これはお客さんの好みなので、もちろんおまかせします。

また店側にとっては、お酒も売れた方が売上になるのでいいと言えばいいんですが、本当にお寿司のを味わうという意味で言えばお茶が一番だと個人的には思います。

それはビールの炭酸や、お酒の飲みすぎなどで、舌が鈍くなり味がわかりづらくなるからです。

寿司職人のこだわり

お寿司のネタの種類・状態、シャリ(寿司飯)の温度もとても細い気遣いをしています。

職人は「これが一番!」と思った状態のネタしか出しません。

例えば『づけ』と呼ばれるマグロを醤油(厳密には醤油だけではないが)につけて握る寿司があります。

その場合、どれくらいの時間(何分何秒単位で)漬けておくのかで味が変わってきます。

さすがに1秒2秒は、差はないかもしれませんが、30秒にもなると結構味に差が出てきます。

それをお客さんが来店する時間を逆算してネタの仕込みをします

*ごはんの炊き時間も同じ。来店時間によって、それぞれの魚の処理を始める時間やタイミングを見計らいます。

なので予約した時間に遅れることは絶対にしてはいけません!

もし遅れてしまったりすると、その美味しさが半分以下、下手したら2、3割くらいしか伝わらなくなってしまいます。(寿司職人のペースも乱れるので、余計悪循環になる)

 

寿司職人は、握るテンポや順番も気にしています。

20貫近くあるお寿司の中には、タイのようなあっさりとした白身もあれば、大トロのようにインパクトの強いネタもあります。イカのような食感が異なるネタもあります。

そのような様々なネタを順番に食べていっても、お客さんの口の中が飽きないようにすればどうすればいいのかということを考えながら構成を考えています。

おまかせ寿司の基本は会席料理

「おまかせ寿司」の元となるのが会席料理です。

会席料理は「先付」から始まります。「先付」とは季節の食材を使って、小鉢などで少量で出てきます。

次に「向付」と呼ばれるお造り(お刺身)、そして「お椀」と呼ばれる汁物(お吸い物)が出てきます。

その後、揚げ物や焼き物、炊き合わせ、八寸などが出てきて、ご飯物、香の物(漬物)や味噌汁(赤だしなど)。

最後にデザートやフルーツ、水菓子(和菓子)などの甘味で終わります。その時に抹茶も出てくることもあります。

この会席料理の構成は口当たりの優しいものからあっさりしたもの、そして味の濃いものは中盤から後半にかけて出てきます。

色々と変化を持たして、もし冷たい料理が出たら次は温かい料理、そして次は常温など、味の薄いものを当てたら次は濃いものというように組み合わせていきます。

これが会席料理で(他にも色々ポイントはありますが割愛します)構成がすごく綿密に考えられているんですね。

お寿司の「おまかせ」は会席料理のお寿司版と言い換えることもできます。

おまかせ寿司の流れ(例)

その「おまかせ」寿司で、一つ例を出してみます。最初は会席料理と同じく、先付のような少量の一品が出てきます。

お寿司は、ヒラメとかスミイカなど味の薄い(たんぱくな)ものから始まり、赤身・中トロ・大トロなど、順番に脂の多いネタに変化します。

その後は光物と呼ばれる酢締めしたコハダとか、はまぐりなどの貝類、車海老やウニ、ホタテ(小柱など)そして、いくらなどを出し、煮アナゴなど濃い味で締めくくります。

最後には玉子焼きも出てきますね。

会席料理と少し違い、メニュー(お品書き)を作っていない場合があります。

その時によって急遽変更もあるので、事前に構成を伝えることはあまりありません。

お客さんにいちいち「ここからこうですよー」とか「ここから種類変わりますね」とか説明する事ってあんまりなかったりします。

でもそれはまあ寿司職人それぞれです。

*もちろんアレルギーや好き嫌いはありますが、できれば寿司職人に全て”おまかせ”したいところです。

 ネタの構成 具体的な説明

では先ほど説明した寿司のネタを、もう少し詳しく説明しています。

ヒラメ。これはコリコリとした食感と甘みがあります。そして淡白な味ですのでシャリの酸味を味わうこともできます。

イカは甘みがあります。隠し包丁することで食べやすく旨味も引き立ちます。

カンパチとかハマチとかくることもあります。ちょっと脂が乗ってて少しコリッとした食感を楽しめます。

その後マグロが3種類。赤身・中トロ・大トロという順番です。

最初は酸味のある「赤身」。赤身はほとんど脂がないです。

次に脂と香りがちょうどいい「中トロ」。最後に口の中でとろける「大トロ」。このような3段階でマグロの違いを楽しめます。

はまぐりは煮て、常温で出すことが多いです。

次には人肌に温めた車海老。そして冷えたネタなどに戻るなど、このように変化を付けて出します。

変化を出し出すことで、口の中が大きく解放されたと思うと次はギュッと締まって、料理に変化をもたせることで楽しむことができます。

さらに緩急をつけることによって味覚や嗅覚が敏感になって一つ一つの寿司ネタの美味しさが際立ちます。

ウニやイクラの軍艦巻きで味や触感に変化を持たせ、最後の方はアナゴなど、結構味の濃いもので終わります。

煮アナゴは、煮詰め(甘いどろっとした醤油)を上に刷毛で塗ります。

煮詰めは寿司職人によっては、何度も追い足しして作っていて何十年物のようなオリジナルのものを持っている人もいます。

そして最後は、寿司屋の顔とも言われる玉子焼き

これは甘くない場合もありますが(お寿司屋さんによります)玉子焼きは甘味として(懐石料理の和菓子の立ち位置)使う寿司屋は多いです。

 

以上、かなりオーソドックスなおまかせ寿司の流れですが、もちろんこの流れが一番いいわけでも、これでやらなきゃいけないというわけではありません。

いきなり味の濃いものが出てくるようなお寿司屋さんもあるかもしれません。それはそのお寿司屋さんそれぞれですので、そんな部分も楽しみながら「おまかせ」を堪能してください。

王道の流れはやはり理にかなっている

最後に一言、ちょっとお伝えしておきたいことがあります。

例えば、最初に味の濃いマグロなど食べてしまうと、その次にヒラメとか淡白な味のお寿司を食べてしまったら、そのヒラメの味が台無しになってしまいます

なぜなら最初にインパクトが強すぎるものを食べてしまったがために物足りなさを感じてしまうからです。

つまり味覚が麻痺してしまうのです。

もし大トロの後に白身を出す料理人がいたら、私なら「なんでこの順番なの?なんで?意味は?どうして??」と理由を問い詰めて納得しなければ説教します。

では、そんな「脂の乗った大トロの後は何がいいのか?」と言うと、しっかり酢の効いた(酢でしめた)こはだなどの光り物と呼ばれるものが合っています。

このような酸味を持つネタが口の中に入ることで、大トロの脂を消すことができます。

もちろん大トロを食べた後にガリ(生姜)を食べたり、酸味の効いた甘くないシャーベットをお口直しとして出すところもあります。

 

そういえば昔は「お寿司屋では卵焼きから食べなさい」と言われました。

その理由はお店の味の違いが明確にわかるから、寿司職人の判断基準として、最初に食べることで評価を決める。という意味合いで言われてきました。

*それぐらいお寿司屋さんによって卵の焼き方や味が違う。

でも最初に玉子焼きを食べてしまい、その後にさらっとした白身などのネタが出たら味が分からなくなってしまいます

なので個人的にはやはり玉子焼きは最後が良いです。

*玉子焼きは、しゃりと一緒に握って出す場合もありますし、玉子焼きだけ単体で出すこともあります。

 

また、ちょっとややこしいかもしれないですけど、煮穴子をマグロの前に出してしまったら、今度はマグロの味を殺してしまうことになります。

かといって同じ煮た食材でも、煮アワビ(蒸し鮑)はアナゴより前に出した方がその味がわかると思います。

寿司職人はそのようなことも考えて構成を組んでいるので、「おまかせ」はとてもおすすめです。

言うまでもなくネタはその日の仕入れによって、季節によっても変わります。

春夏秋冬、魚の種類は違ったとしてもお寿司の構成や緩急の付け方、最初は味の薄いものから入るというような流れはそこまで変わることはないと思います。