熟成肉のヒミツ 質問集Q&A

熟成肉(ドライエイジング)について、さまざまな疑問にお答えしていこうと思います。

余談ですが熟成は英語でAginigなので、熟成肉は英語で牛肉ならAged beefとなります。Aged fish, Aged steakなどレストランのメニューでは表記されます。

前回、前々回の記事はこちら

肉を美味しく健康的に ~熟成の種類 ~

熟成肉(ドライエイジング)のポイントと注意点

【熟成肉のQ&A】の前にちょっと、少し前に体験した熟成に関する衝撃を受けた話をします。この前、日本に帰国した際に、奈良のとある料理屋で熟成した魚の刺身を食べました。

それが結構、衝撃だったのですが、その魚は金目鯛で、市場から採れたてのものを卸して 軽く塩をして5日間熟成させたものでした。

通常、マグロなどの大きな魚は別として、お造り(刺身)で食べる魚は、美味しく食べられるのは、昆布ジメなどしてもせいぜい頑張って3日くらいまでです。それ以降は生で食べるのは良くないですし、美味しくもありません。普通は仕入れたその日に使いきるのが理想です。

しかし、その熟成された金目鯛は、塩をしただけで5日間も経っているのにも関わらず、いままでで食べた金目鯛でも群を抜いて、抜群に旨みがありました。つまり、魚でもちゃんとした温度、湿度、衛生の中で一定期間置くことによって美味しくなるのだというよい勉強になりました。

ちなみに、別の日には、大阪で熟成肉専門店に初めて食べに行ったのですが、その肉も、今までにないくらい抜群の旨みをもった肉で、私は熟成されていない時の同じ部位の肉の味を知っていたので、「熟成でこれだけ違うものなのか」と感動した瞬間でもありました。

奥が深いです。熟成、、、さて、それでは前回お話しした熟成肉について、もう少し詳しく、いくつか質問にお答えして、 疑問点を解消したいと思います。Q&A方式で解説します。

【熟成肉のQ&A】<熟成に関する質問集>

【Q1:熟成に向く牛肉の種類や部位はありますか?】

A1: 国産牛肉には、黒毛和牛、ホルスタイン種など色々な種類があります。

もちろん海外も含めればもっとありますが、牛の種類については好みがありますし、特にどれが合わないというのもありません。ただ、どの種類でも赤身の多い部位の方が熟成に向きます。

脂が多ければ熟成されにくいですが、脂も味があるため、 わざと脂身が入っている部位を使う場合もあります。

【Q2:かたい肉でも美味しくなるのか?】

A2: ドライエイジングはまさに、サシの入っていないかたい肉を美味しくするための方法とも言えます。

赤身は旨みが増して柔らかくなり、脂身はさっぱり食べやすくなります。肉の価値を一段と上げることができます。もちろん質の良い牛肉の方がよりおいしいですが、 低価格の肉でも熟成させることでとてもおいしくできます。

【Q3:熟成する時の並べ方は?】

A3: 一番良いのは吊るしておくのがよいですが、 飲食店等の場合、そのような大きなスペースはなかなかありません。なので、骨付き肉の場合は、かたい骨が下になるように棚に置いてください。骨を上にすると、身に負担がかかるのでよくありません。

肉に負担をかけず、できるだけ空気がこもらないように並べましょう。ドリップが出ると腐敗の原因になるので、肉に触れないように清潔に保つのもポイントです。ちなみに熟成庫は大きければ大きいほど良いです。

【Q4:熟成庫を選ぶポイントはありますか?】

A4: 一番の条件は、熟成庫内を均一で清潔な環境に保てることです。

具体的には、

  • 肉に均一に風が当たり
  • 肉の湿度が調整でき
  • 温度を安定させられる

熟成庫です。よい空気環境を作るのがベストでしょう。大前提として、風が緩やかに循環すること。また、冷蔵後が大きければ、温度差を少なくするためにも冷蔵庫内に熟成庫を作るのがよいです。

【Q5:乳酸菌を吹きつけると熟成して加工品になるのか?】

A5: 乳酸菌はもともと肉が持っている菌です。なので、加工品にはならないです。ただ、乳酸菌を肉にかけたり塗ることで、乳酸発生時にガスが生じるため肉にとって良くないです。できれば乳酸菌を吹きつけたりしない方がよいです。

乳酸菌は多すぎても良くありません。ちなみに真空パックなどウェットエイジングの場合、 乳酸菌が多いと、乳酸発酵してガスが発生します。

【Q6:木の板を入れると菌が培養しやすくなりますか?】

A6: 木の板や竹をいれる、またはさきほどの乳酸菌を植えつけるという方法は、 菌を増やすための方法の一つです。

例えば熟成庫が大きい場合、床は清潔にしなければなりませんが、その他の場所を毎日ピカピカに掃除をしても、それはそれで、大切な酵母菌まで無くなることになりかねないので注意が必要です。もし、常に熟成肉が熟成庫内にすでにいくつかあるのであれば、その肉自体が菌床になってもくれます。

 

以上、熟成肉の質問&回答でした。