目に見える味 ~分子で料理説明~

「元素」って聞いて、パッと思い浮かばないかもしれませんが、元素とは、物質の最小単位のことを言います。

そして「分子」というのがあります。

「分子ガストロノミー」とか「分子美食学」とか呼ばれる料理を科学的に見た分野や、「分子栄養学」のような栄養を分子レベルで見て判断する学問などで使われます。

「分子」は、元素よりもちょっと大きくなったもので、元素の集まりが分子になります。

例えば、水素Hの原子2つと、酸素Oの原子1つをまとめると、「H2O」となり、これが「水」の分子となります。

分子栄養学とは、それくらい細かい単位まで落とし込んで、体の機能が分子レベルでどのように働いているのかを知ることで、色々なアプローチができるものです。

料理の分子ガストロノミーは、一時期私もかなりハマっていて、塩化カルシウムとアルギン酸ナトリウムという物質を液体などに加えて、人工イクラを作ることができたりします。

しかし、今思うと、私の作っていた分子ガストロノミー料理は、「なんちゃって」でした。

なぜかというと、全然原理をわかっていなかったからです。正確に言えば、「わかった気がしていた」ように思います。

説明通りに作れば、人工イクラは作ることができますが、塩化カルシウムが食材にどのように働いて、なぜ固まるのかなどを、表面的に説明できても、より具体的に科学的に説明することはできていなかったように思います。

そんなこともあり、今は巡り巡って分子よりか細かい、原子から学んでいるのですが、「あの時は、全然わかっていなかったな」という経験というのは、本当にそのことをわかり始めた時に気付きます。

どんなことでも同じで、ある程度のレベルに達した時に、過去を振り返ると、「昔の自分、超レベル低っ!」と思うことはたくさんあります。

当時は「自分すごい」と鼻高々に思っていたことなので、なんか恥ずかしくなります。

そんな経験を積んで成長していくと思うのですが、そんな話ではなく、分子の話です。

先ほどのHとかOとかの原子の組み合わせで、味が変わるということを知りました。

具体的に言うとアミノ酸というたんぱく質をもっと細かくした単位で、さきほどの分子が、もっといろいろ結合したものなのですが、そのアミノ酸って、膨大な種類がある中、いくつかは味を形成するものがあります。

例を挙げるとグルタミンには「甘味」があったり、メチオニンには「苦味」があります。

まだはっきりとは言えませんが、このように分子の構造の違いで味覚を形成するのであれば、

食材に入っている、アミノ酸しかり、その他の物質の味の違いを理解していれば、かなりの精度で、料理の味をコントロールできるのでは?と考えられます。

実際すでに、こういう研究は昔から進んでいて、料理人ではなく、研究者と呼ばれる人たちがすでに行っています。

とはいっても、私がやりたいのは遺伝子操作的な味の組み合わせではなく、食材を分子レベルまで深く理解したうえでの、自然の味で作る料理をベースに考えています。

もうすでに作られている人工的な味で言うと、うま味調味料はまさにそうですし、そのような分子レベルで組み替えた「コク」も発明されています。

たぶん多くの人は気付いていないですが、カレーのルーに入っている添加物で、食品表示の裏に「アミノ酸など」
とか書かれている場合、

そこには色々なうま味系の物質が入っていますが、なんと科学的に作られた「コク」も含まれている可能性もあります。

もともと「グルタチオン」というコク味物質がありましたが、

2010年には、「グルタミルバリルグリシン」と呼ばれるグルタチオンの10倍のコクを持つと言われるコク味物質ができました。

日本では2014年に食品添加物として入っており、食品表示には「グルタミルバリルグリシン」なんて書いていませんが、先ほどの「アミノ酸等」の中には、グルタミルバリルグリシンが含まれているかもしれません。

こういう情報って、知らないうちにアップデートされるので、気付かないですよね。

そんなこともありますし、どんどん味覚の研究も、食事と体の研究も進んでいます。

AIが私たちの食事を管理する時代も目の前に来ています。

ということで、原子の話に戻りますが、

味覚の話になるとかなり複雑になりますが、健康という面においては、原子をちょっと知っておくだけで、食事と関連付けて、より健康になるようにちょっとずつ変えていくことができると思います。

興味があれば、一緒に勉強しましょう。

原子については、前のブログにも書いたので、読んでみてください。

https://wp.me/s50ahn-symbol