料理の裏側:お寿司編 握りの練習・作法と動作

お寿司の裏側をちょっとお伝えしようかなと思います。

お寿司を握る練習をする時、魚などのネタを使わず、寿司飯だけをずっと握り続けて同じ大きさになるのか同じ形になるのか、ちゃんと綺麗に揃ってるのかチェックします。

また慣れるまで、ティッシュペーパーなどをシャリの形・重さに合わせたものをつくり、日常生活でずっと握っています。

ポケットの中に常に仕込ませて、隙あらばにぎりの練習をします。

ネタも、魚などは高いし何度も練習できません。なので油揚げなど、安い食材で寿司ネタの形に切り、見立てて練習します。

握りの作法

とても重要なのはシャリを握る作法です。つまり握る動作

寿司職人は特殊で、多くの料理人は調理場の中で仕事をしています。

しかし、カウンター商売の寿司職人ってお客さんの前で目の前でお寿司を握ります。

もちろん接客力・サービス力・トーク力も必要です。つまりパフォーマンスです。寿司職人はある意味エンターテイナーでもあります。

シャリの握り方は大事なんですけど、どれだけ美味しそうに握っているのか 

ここもかなり重要になってきます。

例えば、

お客さんで(※これから言うことは決してお客さんをバカにしているわけではないことをご理解ください)回らない寿司を食べ慣れていない、料理人でも寿司職人でもない人が、何かの記念でカウンターの寿司を食べに行ったとします。

その時に、目の前に頑固そうな年配の職人さんと、若い茶髪の職人さんがいたらどう思いますか?

もし茶髪の方が大ベテランで年配のおっちゃんは見習いだったとして、初めての店なら、寿司だけを食べた場合に、それが本当に店の味かどうかを判断するのは難しいです。

寿司職人なら寿司のレベルの違いが判ると思います。

ですが寿司を知らない、食べ慣れていない料理人、もしくは一般人ならわからない可能性もあります。

変な話、口先だけでトーク力が高かったら、その場の雰囲気で流されることはあります。

とは言え、そんなあからさまに差のある寿司を出す店はないですが、、、

料理もしかりですが、出されたものが、職人にとっての100%のものかどうかなどは、なかなか判断するのは難しかったりします。

だた、お客さん視点ではわからずとも、同じ調理場で働く者同士であれば、お互いの実力はだいたいわかります。

シビアなようですが、いくら話が上手で知識もあり、気合があったとしても(もちろんその要素もとても大事です)、育ってきた調理場の環境やレベル、もしくはその職人の向上心や努力次第で、実力の差は明確に出ます。

年齢は関係ありません。

海外でよくありがちなのは、日本人以外が多いのですが「私はなんでもできます!」と面接時に言っていたのに、実際トライアルでキッチンに入ると使い物にならない、というパターン。

だいたい1日見ればわかりますが、念のため3日ほど様子見したら、やっぱり仕事できなかった。というビッグマウスでオラオラで仕事に臨む人は少なくありません。(もちろん面接の段階で採用されるために、自分を大きく見せることは大事です)

 

話は戻りまして、 

たとえど素人でも、目の前でとても上手な寿司職人が握った寿司そうでない人が作った寿司を食べ比べた場合、同じ食材、同じ寿司飯だったとしても明確に違いがわかります。

それくらい「握り」は差が出ます。 でも単発で、たまたまに食べに行った寿司屋だったら、その寿司がほんとうに良いのかどうかわかりづらいと思います。

それぞれの握りのスタイル

握り方は、それぞれ寿司職人が色々研究しています。

ただ、大げさ大きな動きをして握ればいいっていうわけでもありませんし、逆に手元だけ使ってこじんまり握ったとしても迫力に欠けます。

もちろん自分なりのスタイルや教えてもらったやり方があるので、何が正しいとかはないです。またお客さんがどう思うかというのも大事です。

例えば外国人や子供には大げさにパフォーマンスをしながら寿司を握ると、すごく喜ばれます。それにお客さんとの会話のネタにもなります。

それはお店のスタイルや客層、客単価、大将のこだわりなどで決めていいと思います。

ただ、個人的にはそんなに大げさなパフォーマンスはいらないと思っていますが、何度も言うように人それぞれです。

「にぎりの温度やスピード、味を重視しているので、見た目のパフォーマンスはいらない」というのであれば、それはそれでいいと思います。好きにしてください。

あくまで私の意見として言いますが、寿司も料理も同じく、お客さんあってのお店です。

つまりは料理も含めた色々な面での総合で判断されるということは頭の片隅に入れておいた方がよいでしょう。

料理ですから「結局は味」ということも理解しています。

ただ、一般人やお寿司のことを知らない人、もっと言えば寿司を握ったことがない料理人に限っては、どのような部分でお寿司の美味しさを判断するのかってとても難しいものがあります。

かといって、毎回人によって握り方とかを変えるというのもおススメできません。

一般的な握る時のテクニックてきなこと

ネタでの違い

握り方でもう少しだけ言うと、当たり前のことでもあるのですが、白身を握る時、穴子の時、イカ、アワビとかそれぞれの食材の食感が違います。

ということは、もちろん握る時のシャリの硬さや量も、若干の温度もネタによって変わってきます。

シャリに使う酢自体をネタによって変えてるお店もあるくらいです。

 お客さんでの違い

お客さんの方での食べ方による握りの違いです。

食べ方を気にする人はいるでしょう。「握り寿司って手で食べた方がいいよ」とか言いますが、もちろんお箸で食べてもOKです。

お箸で食べる人には、手で食べるお客さんよりもちょっと固めにシャリを握るなどの調整はします。

また、外国人の場合でも箸の使い方がすごく上手だったら気持ち柔らかめにシャリを握ったりということも工夫します。

 

さて、タイトルに沿った話はここまでにして、ちょっと愚痴をいいます。

シャリの方に醤油をつけて食べる人の意図

おまかせ寿司(カウンター)の場合は、ほとんどの場合、すでに味(塩なり醤油なり煮切りなり煮詰めなり)を付けた状態でお客さんに提供します。

だから、お客さん自身が醤油につけて食べる事ってあまりないです。こちら寿司職人の方で味加減を調整します。

でも、よく外国人が寿司飯に醤油をジャバジャバつけて醤油の味で食べるっていうような光景をテレビとかで見たことはあるかもしれません。

ただ、この光景は、寿司を知らない人からしたら常識ともいえる行動です。

なんでこんなおかしなことをするのかというと、たぶん本当に新鮮でおいしい寿司を食べたことが無いからだと思います。

もしくは単純に味覚がおかしいかのどちらかです。

外国など、または安い寿司などカチッカチに固くなったシャリの寿司で、さらに新鮮ではない臭みの強い魚の寿司を食べたら、醤油やワサビの味でごまかして食べるなんてことはありえます。

そしてガリを食べまくる。

このような寿司は、醤油で誤魔化さなきゃ食べられないっていう気持ちも分からなくはないですが、とても悲しいです。

日本人でも意外とそういう人います。そのような人を見つけたら、一度マジでおいしいお寿司屋さんに連れて行ってあげてください。お願いします。

 

そういえば、もう一つ聞いてください。

寿司って、私的にはかなり万能など思います。

どういう意味かというと、ご飯に酢、そして醤油、さらに海苔など加わると、そこにどんな食材を足しても大概美味しくなります。

チープな例えになりますが、カレーの具に何を入れても美味しいのと似た感覚です。

つまりハズレが少ない料理の一つだと言えます。

だから、カレーも色々な種類ありますし、寿司もここまで世界中に広まったのだと思うのですが、そんな万能な寿司でも特に海外だと、吐き出したくなるくらい不味い寿司がたまにあります。

不味く作るのが難しい寿司を不味く作るのだからある意味すごいのですが(私の「おいしい」のキャパシティーはかなり広いです)、そんな寿司を食べると良い意味で料理の概念が外れます。

お寿司で一番大切な要素

お寿司で一番大切なのって何でしょうか?先ほどから話しているのでわかると思いますが、それはシャリです。寿司飯です。

当たり前と言えば当たり前かもしれません。ではそのシャリの何が一番大事かと言うと、実はそれは温度です。

ではどれぐらいの温度が一番いいのかと言うと人肌がいいです。

一般的には人肌の時にネタの持ち味が一番引き出せます

そしてシャリの表面が滑らかで手につきにくいです。さらにまとまりが良くてふんわりした握りになります。寿司職人はこのベストの状態を逆算してご飯を炊きます

そしてタイミングを合わせてシャリを切るのですが、「シャリを切る」というのはご飯に酢を合わせるという意味で、すし酢を入れて混ぜることです。

なんで「切る」と言うのかというと、ごはんと酢を合わせる時に、木のシャモジで切るように混ぜるからです。

寿司桶とか飯台とか呼ばれる、円形の桶は木ですが、​余分な水分を塗りのない白木の寿司桶に吸収させながら作ることで、水分量が調整されて美味しい酢飯になります。

ご飯と寿司酢を合わすときは素早く一気に混ぜます。

ただ、寿司屋によっては、このシャリを合わすのも一度に作らずに、例えば3貫ずつとか5貫ずつとか少しずつシャリを作るお店もあります。

そういうところはけっこうスタッフがいる状態でしかできないです。

※かなり贅沢に人件費を使っています。たぶん見習は相当安月給だろうと予想されます。つまりブラック企業(たぶん)

 

寿司用のご飯は、炊く時通常のご飯炊く時よりも水の量が少ないです。理由はもちろん、その後で寿司酢を入れるからです。

ちょっと違うやり方だと、ご飯が炊けた時に下の方は水っぽく上の方は水分が少ない状態になりますよね。

これは重力の関係でムラができるのはしょうがないことですが、けどそのような特性を利用して上の水分が少ない部分のご飯だけを使って寿司飯を作ることもあります。

その他、お米は古米がいいとか、洗い方含め細い部分はありますし、寿司のお酢も赤酢を使うなども言われますが、それはお寿司屋さんそれぞれです。

ということで最後はだいぶ脱線しましたが、伝えたかったことは書けました。