”ホット”アイスクリームを作ろうとしたが失敗に終わった

「ホットアイスクリーム」???ネーミングからして間違っているかもしれませんが、このように表現するしかありませんでした。というのも、今回作ろうとしたのが、熱いアイスクリームだからです。熱いから『ホットクリーム』だけど、この名前じゃいまいち伝わりづらいです。このホット(アイス)クリームを作るいきさつをお話します。

ある日ネットを見てたら、ゼラチンと全く逆の性質を持つ物質があることを見つけたのです!多分この説明じゃ、あまりピンと来ないと思いますが、つまり、冷やすと溶けて、温めると固まる性質をもつ物質です。

頭が混乱してきます。常識で考えると、アイスクリームは常温に放置すると溶けますし、高温ではもっと早く溶けますが、冷やすと固まります。

しかし、今回見つけた『メチルセルロース』という物体は、冷やすことで液体になり、熱くなるほど固まってくるという性質を持っているのです。

おそらく、数あるゲル状、ゾル状にする物質(ゼラチンや寒天、キサンタンガムなど)がある中で、この真逆の性質を持っているのは唯一このメチルセルロースではないでしょうか。(ちなみにモノにより零度以下の場合は固まります)

このようなワクワクするものを見つけたからには、試してみないという選択はありません。ということで早速ゲットしました!!

、、、が今回の話は失敗談なので、それを了承で読み進めてください。

まず最初の初歩的な失敗、、、

カルボキシメチルセルロース(左上)ではダメ(オーダーしたものを間違えた)。

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実際、溶かしてみると、粘性は出るのですが、温めても全く固まらず、反応がありませんでした。

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写真にあったメチルセルロースは『カルボキシメチルセルロース』と呼ばれるもので、よくよく調べたらメチルセルロースとは違うものでした。

温めても固まりません(しかし温度が変化しても一定したとろみはあります)。ということで、調べてみると、オーストラリアで、唯一売っているところを発見し、さっそくオーダー。しかし、2種類あり400cpsと4000cpsとがあります。

業者に問い合わせてみると、思った通り、4000cpsの方が固まる強度が強いみたいですが、値段は一緒でした。一応、食べる用かも聞いて、ちゃんと食品に使うようだとの返答がきたので、安心して使います。で、到着しました。

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意外とでかい箱できて、開けてみると500gですが結構な量があります。

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それぞれ500gで、$35(計$70+送料)でした。

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開けてみると納得。かなり細かい粉で、粉糖のようです。

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しかし、水に付けると粘りがあります。左は400cps 右は4000cpsで実験します。どちらも100ccの水で小さじ1杯(約2g)で作っています。

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ちなみに、最初は水で試したのですが、冷たい状態や常温でもとろみ具合は変わりません。そして、温度を上げてみると

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電子レンジでやると、一部が卵白のように硬くなりました。しかし、冷蔵庫に置いておくと、その白いものも透明に戻ります。

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元通り↑(゜レ゜)4000cpsの方は、やはり粘性は強く固まりやすいです。

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これは両方とも4000cpsですが、より高温にすると右のように部分的に固まります。表現すると卵白のような感じです。

さて次はアイスクリームを作る要領で、材料を牛乳、砂糖、バニラビーンズなどで作りました。*ちなみに単に材料を混ぜただけです。

今回のレシピ<牛乳:1 カップ(200 g) 砂糖:10 g メチルセルロース:4 g バニラビーンズ:適量 卵黄:1個>

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メチルセルロースを溶かすために撹拌させます。湯せんでやると、50度を越しても、あまり硬さは変わりません。

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しっかり溶かしてなかったのかもしれませんが、それでもとろみは変わらず、

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おそらく結構高温でないと、白身みたいに固まらないのかなと思いました。もしかしたら水には反応しても、乳製品には反応しないのか!?いまいちよくわかりません。

次に出来上がっている抹茶アイスにセルロースの粉を入れてみると、

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よくわかりません(+o+)温めても、アイスの気泡が無くなってしまい、実際美味しくありません。

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それに、固さも変わりませんでした。そして冷やしても硬さは変わらず、、、失敗です(泣)

以上がホットアイスクリームの失敗談です。

ということで、専門機関に問い合わせしてみましたところ

驚愕の事実がわかりました!!

メチルセルロースを販売しているある会社に問い合わせたところ、

『メチルセルロースですが、高温でゲル化するものは当社では、商品名が○○○と△△△という品番になります。』とのこと、、、

「えっ!メチルセルロースって固まり具合の違いはあるのはわかったけど、高温でゲル化しないものもあるの!?」ということは、今まで失敗していたのは、高温でゲル化しないメチルセルロースを使っていたということになります。さらには、高温でゲル化するメチルセルロースにも種類があり、熱ゲル化した際のゲル強度と粘度が異なるみたいです。

オーストラリア国内では探し出すことはできなかったため、日本から取り寄せようと、聞いてみたら『現在業務用(15kg、22kg)単位でしかお売りできない』らしく、22kgで7万円前後(゜レ゜)さらに海外の供給は難しいかも、、、との返答だったので、残念ですが、今回に限っては断念します。

近い将来日本に一時帰国するときに、業務用を買って(使い切れる自信はないけど)実験してみたいと思うので、その時はまたお知らせします。

最後に意外な盲点というか、よくよく考えたら、当たり前のことだったのですが、

ホットアイスクリームを作る際の重要なポイント

これを公開しようかどうしようか迷いましたが、せっかくここまで読んでくださったので、 ホントは内緒ですが教えます。

高温で固まるメチルセルロースは、ゼラチンと逆のような性質を持っていることはわかったと思いますが、溶かし方も逆です。つまり

加熱してゲル化させるためには一旦メチルセルロースを熱水に分散させ、 冷水に溶解させることが必要となります。(通常のゲル化剤とは真逆の溶解方法です。)つまり、高温では溶解せず、低温で溶解するのです。この溶解方法を誤ると熱ゲル化できないのでご注意しなければなりません。

もう一度わかりやすく言うと、ゼラチンなどとは反対に、50℃以上くらいでメチルセルロースを戻し(撹拌)冷ますことで液体に完全に溶け込んで、再度加熱すると固まる。という解釈になります。

なるほど~と思いました。

*これを知った後、この溶かし方で、購入した(写真で実験している)メチルセルロースで一通り試しましたが、やはりうまくいきませんでした。

それにしても、ますます興味がわきました。メチルセルロース。いつか、意地でもホットアイスクリームを完成させようと思います。