におい・香りの調理科学実験です。
アロマスプーンとアロマフォークの実験と検証結果
結構前に販売された、ガストロノミー系の調理器具を扱う会社が、アロマスプーン、アロマフォークを作りました。
これは、かなり興味深いもので、料理を食べる時の人の味覚の8割は匂い(嗅覚)によるものという結果から、アロマ(香り)によって、料理の味がどれだけ変わってくるのかを実験できる道具です。
まずは、アロマスプーン、アロマフォークを使った実験結果から。
この実験キットにあるアロマ(香り)の種類は、なんと21種類もあります。
全て液体状になっており、付属の小さなスポイトを使って、数滴取り出し、シートに垂らして香りを出します。
その21種類の概要は、左側から見て、
Spices: Cinnamon, Black Pepper, Wasabi, Ginger
スパイス系:シナモン、黒胡椒、わさび、生姜
Herbs: Basil, Cilantro, Mint
ハーブ系:バジル、シアントロ(コリアンダー、パクチー)、ミント
Fruits: Strawberry, Banana, Lychee, Passion Fruit
フルーツ系:イチゴ、バナナ、ライチ、パッションフルーツ
Beans: Coffee, Vanilla, Chocolate
豆系:コーヒー、バニラ、チョコレート
Umami: Olive oil, Truffle, Smoke, Butter
うまみ系:オリーブオイル、トリュフ、スモーク(燻製)、バター
Nuts: Peanut, Coconut, Almond
ナッツ系:ピーナッツ、ココナッツ、アーモンド
です。それぞれ、香りが凝縮してあるため、1滴だけでも香りが充満します。どこに垂らすのかと言うと、スプーンやフォークの途中に穴があるのですが、
そこに、丸い厚めの紙のようなもの(下写真の左下の白いやつ)をセットして、お客さんに出す直前に、香りを出したいアロマを数滴たらします。
匂いはかなり持続し、3時間以上経っても、香りは無くなりません。しかし、やはりスポイトからアロマを垂らした直後が一番香りが強く効果的でしょう。
説明書はこちら
写真には載せていないですが、かなり色々な食材を試しました。その結果、わかったことがいくつかあります。
それは、「このアロマスプーンやアロマフォークは、長時間、口の中でもぐもぐするような料理は向かない」です。“一口でするっと飲みこめる料理”に適します。
なぜなのか?
その理由は“人はどこから香りを感じるのか?”という部分がかなり重要になってきます。
というのも、このアロマスプーンとアロマフォークは、食べたと同時に、鼻から香りを吸って、味を感じるというものです。しかし、食べ物の味と言うのは、約8割を香りが占めるとも言われますが、その香りとは、鼻からの香りではなく、口に含んだ後に出てくる“口の中から鼻に向かう香り”のことだからです。
スプーンやフォークからの香りは、口に含むその一瞬だけであり、その香り自体は口の中にまでいきわたらないため、口に運んだその瞬間は、アロマの味を感じますが、すぐに口に入れた料理の味に戻ります。
この香りのアロマも、料理自体の味や香りも同じ種類・系統のもので統一して食べれば相乗効果になりますが、例えば、ミントの香りをスプーンに付けて、チョコレートを食べても、“口に運んだ瞬間”はミントの香りがするので、若干ミントチョコレートのような錯覚を起こしますが、しばらく口の中でチョコレートを嘗めていると、ミントの香りはチョコレート自体からは発生しないので、ただのチョコレートの味しか残らなくなります。
つまり、アロマを強調させたいのであれば、料理とアロマを最初の一口で感じさせられ、インパクトに残るような組み合わせがよいかと思います。
どんな食材が効果的なのか?
今まで、味の薄いものでは、ご飯、そうめん、パン、お寿司(醤油付けないで塩だけ)、ゼリー、アイスクリーム等、試しましたが、一番効果の高いものは、バニラアイスクリームでした。アイスだと、アロマの香りを嗅ぎながらするっと喉奥まで短時間で運べるので、匂いの効果が高く感じられます。
ご飯などは、口に含む時に一瞬香りがするだけで、噛んでいくと、最初に嗅いだアロマの香りはすぐに消えてしまいます。
その他にも味の濃いものと組み合わせたり、色々変わった組み合わせ(手毬寿司をスプーンに載せて、チョコレートのアロマで食べたり)をしましたが、どちらにせよ、香るのは一瞬なため、そこまでインパクトはありませんでした。
特に香りの強い料理と、それ以外のアロマと組み合わせても、口の中から香る匂いが圧倒的に勝るため、このアロマスプーンやアロマフォークの効果は薄いです。
ただ、アイスクリームのように、スルっと口の中を一瞬通り抜けるようなデザートや料理であれば、上手く使えると思います。
なかなか面白いので、色々試してみる価値はありますが、アロマ自体がちょっとわざとらしいというか、若干ケミカル(作られた匂い感)があります。
また、自分の味覚センサー実験として、目隠しをして21種類それぞれのアロマをランダムで嗅いでみて、どのアロマなのかを当てるゲームをしても面白いです。以外に当たらなかったりします。
さて、ここまでが、アロマスプーン、アロマフォークの実験検証結果ですが、この匂いについて、もう少し詳しく解説したいと思います。むしろここからが本題です。
ですが、長くなってしまったので、次の記事へ、、、アロマクッキング 匂い(香り)の化学 vol2