酒や味醂のアルコールを飛ばす時、“煮切る(にきる)”と表現しますが、これは料理の世界で永年にわたって使われている慣用的表現で「不要なアルコール分をとばす」という手法の事です。
そして、この作業を経た日本酒やミリンの事を、それぞれ「煮切り酒(にきりざけ)」「煮切りミリン」といいます。*「日本酒」と「本ミリン」だけに限った話です。「みりん風調味料」や「発酵調味料」には不要です。
日本酒やミリンは、製品になってからのち再醗酵させないよう数10%程度アルコール分を含みますが、これが調理中やその後少しでも残ると、不快な風味がいつまでも残り、おいしく感じられません。
では、どのような場面で使うのかというと、
・食べるまでに加熱しない調理、たとえば「酢の物」や「和え物」を作る時。
・さっと煮たり、焼いたりして仕上げる料理。
・日本酒やミリンを大量に使う料理も、調理中にアルコール分が抜けにくいので、最初に日本酒なりミリンなりを煮切っておく。
※長く煮る料理は自然にアルコール分がとぶため、煮切る必要はないです。
さて、では“煮切る”とどのような効果を発揮するのかというと、みりんはあまみと香りが強くなり、酒はクセが抜けるのです。
煮切りの作り方
煮切りを作るには3つの方法があります。
- 鍋にみりんか酒、または両者を混合したものを入れて火にかける。充分に沸騰したらライターなどで、揮発しているアルコールに火をつける。
- 上記と同様ですが、アルコールに着火せず、ただ沸騰させてアルコール分を飛ばす。
- みりん、酒のほかにも調味料を混ぜ、味をつくった上で沸騰。アルコール分を蒸散させる。
上記1.は西洋料理のフランベと同様の手法ですが、フランベが具材に対して行われるのに対して、煮切りではそのような対象物がありません。あくまでみりんや酒に含まれる、調味に余分なアルコールを除くために行われます。
本みりんの煮切り
みりんを直接使うとアルコールが邪魔になってしまうため、”煮切る”のですが、どんな料理にもなんでも煮切りみりんを使えばいいというわけではありません。
みりんの特徴に
- 上品な甘み
- 料理に照りや艶を出す
- コクを出す
- 魚の 臭みを取り除く
さらに、
- 煮崩れを防ぐ
- 食材のエキスが外に溶け出すのを防ぐ
が挙げられますが、本みりんを煮切ると最後の2つの効果<煮崩れや食材のエキスが外に溶け出すのを防ぐ>が落ちてしまいます。
糖とアルコールの作用によって防ぐことができたのが、アルコールが無くなってしまうと、糖だけとなり、効果が落ちてしまうのです。
酒も同じような効果はありますが、特にみりんはその特性に気を付けて調理をしていくのが大事です。
煮切ることについての個人的意見
よく、沸騰させているところに火をつけ、炎を出しっぱなしにして、その炎が消えるまで、、、ってやり方している人多いです。(たぶん9割以上じゃないかな、、)
これ、どうなんでしょうか、、、?
なぜかって、炎をつけっぱなしにしたら、鍋の内側が少し茶色っぽくなってきません?
こうなってしまうと、繊細な日本料理の味付けに、その焦げた部分のにおいや味などが付いて良くないです。(しかし、逆に香りを出すために軽く焦がすっていう人もいますので、それは料理人によって意見が分かれるかもしれません)
これは、実際当たり前のことですが、高級料亭などではちゃんと気にしています。あと安い居酒屋とかは、そこまでする必要もないでしょうし、おそらく煮切り酒、煮切り味醂なんて使わないでしょう。
他の例ですと、長時間、焚き物をする時、煮物系など、このようなときも、必ず鍋の内側が汚れてくると思いますので、こまめに布巾などで、茶色い焦げになる部分を拭き取りましょう。これもちょっとした違いですが、味に影響が出ます。
ま、そこがお客さんから見えない“仕事をしているか、していないかの差”です。このようなところでも値段の高い料亭、安い食堂の差が出ます。
もちろん安いところでもそのように気をつけているのは、素晴らしいことですが、客層もありますし、そこをこだわるかどうかはあなた次第です。
このような部分でも、知っているか知っていないかで、料理人のレベルがわかります。気をつけましょう!