12月の味暦 ~仲冬の旬暦・食材・異称・行事・風情・語源・由来~

12月の味暦

仲冬の味

木枯らしと小春日和を繰り返していた天気のリズムは、12月に入ると本格的な冬型の気圧配置になりますが、これは大陸が冷えてシベリア高気圧が発達し、この高気圧から日本列島に向けた冷たい空気が大量に流れ込むためです。

こうした北西の風は、日本海側から中央山脈を乗り越えて太平洋側にまで吹き降ろしてきますが、すでに日本海側の空気中に含まれている水分は雨や雪となって降ってしまっているので、風は乾燥していて肌を刺すような寒さを覚えます。こうした時には火災が発生しやすくなりますから、火の用心が大切です。

年の暮れには、どの家でも僧を迎えて経をあげ供養をします。そのため僧は、各家を忙しく走り回ることになるので、師が走るとして12月を師走とも呼びます。

師家では12月13日を“事始め”といって、この日から新しい年を迎える準備に入りますが、弟子は鏡餅を持ってお世話になったお家に出向き、この1年のお礼の御挨拶をしてから、それぞれ正月迎えの準備に取りかかります。

仲冬とは、陰暦の11月のことで、陽暦では12月になりますが、12月8日頃に24節季の一つである大雪があり、年迎えの慌ただしさが本格的になる12月22日頃に冬至があります。

この日は太陽が南回帰線上を通過するため、北半球では昼の最も短い日となり、この日以降は昼が徐々に長くなるので“一陽来復”として春の兆しを喜びます。そして1月6日頃に24節季の小寒が訪れます。すなわち大雪から小寒の前日までが仲冬の期間です。

12月には、蓮根、牛蒡、蕪、大根、人参、長芋、山の芋、えび芋、里芋、くわいなどの根菜類が滋味を深め、また、白菜、水菜、みぶ菜、芹、ほうれん草、特に葱は霜がおりて寒くなればなるほど素晴らしく味が良くなります。

海の幸では、外洋性の鰤やマグロをはじめとして、鰆、まながつお、甘鯛、鯛、鮃などいずれも越冬に備えて脂肪を蓄え、それに種々の貝類も身を肥やして味が大変良くなります。

この月は、飲食業にとっても忘年会などの宴会が多く、大変忙しい毎日ですが、気持ちよく元気に働いて、お客様にこの1年のご哀願を感謝し、来年も変わらぬご贔屓をお願いします。そして、年末には新しい年を祝い迎える食べ物として、お重詰料理を感謝の心を込めて大切に作ります。

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仲冬の旬暦

旬の食材

魚貝類・肉類

赤貝

甘エビ

甘鯛

あんこう

いいだこ

いせえび

おこぜ

貝柱

牡蠣

かじきまぐろ

からすみ

かれい

くるまえび

このしろ

このわた

こもちはぜ

さいまきえび

シラウオ

しろぐじ

スミイカ

たら

とこぶし

なまうに

なまこ

ばいがい

はたはた

はまぐり

ひしがにメス

ひらめ

ふぐ

ぶり

マイワシ

まぐろ

まながつお

松葉ガニ

みるがい

むつ

もんごういか

うずら

こもちぶな

すずめ

すっぽん

ひがい

もろこ

わかさぎ

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野菜・果物類

青味大根

うぐいすな

えびいも

かぼちゃ

おおばゆりね

かぶら

かんぞう

からしな

きくな

きゃべつ

黄柚子

京葱

銀杏

京人参

黒川茸

小かぶら

ごぼう

慈姑

ざくろ

さつまいも

里芋

しいたけ

すだち

大根

ちしゃとう

ちょろぎ

つくねいも

長芋

なめたけ

ねぎ

白菜

冬苺

ブロッコリー

ほうれん草

干し柿

ほりかわごぼう

みかん各種

水菜

壬生菜

めいも

めねぎ

やつがしら

やまといも

りんご各種

れんこん

わけぎ

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12月の異称、別名、呼び方

師走(しわす)

極月(ごくげつ)

臘月(ろうげつ)

梅初月(うめはつづき)

乙子月(おとごづき)

春待月(はるまちづき)

季冬(きとう)

「師走」の由来。僧侶(師は、僧侶の意)が仏事で走り回る忙しさからという平安期からの説。また「年果てる」や「し果つ」等から「しわす」に変化したなどという説もある。

英語での月名、Decemberは、「10番目の月」の意味で、ラテン語で「第10の」という意味の「decem」の語に由来している。 実際の月の番号とずれているのは、紀元前46年まで使われていたローマ暦が3月年始であり、3月から数えて10番目という意味のためです。

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12月の行事

12/1~ 歳末助け合い運動・年末年始防犯運動

12/3 秩父夜祭り

12/4 人権週刊

12/7 大雪(たいせつ)

12月7日頃(2014年は12月7日)および冬至までの期間。小雪から数えて15日目頃。山岳だけでなく、平野にも降雪のある時節ということから大雪と言われた。全国的に冬一色になる季節。冬の寒さが日ごとに加わり、熊が冬眠に入ったり。鰤(ぶり)など冬の魚の漁も盛んになる。

12/8 針供養・事納め

12/9 京鳴滝大根焚き

12/13 正月事始め・京料理展

「正月事始め」は単に「事始め」とも言う。煤払い(すすはらい) や餅つきなど、この日から本格的に正月を迎える準備をする。煤払い(すすはらい)は単なる大掃除ではなく、年神様を迎えるための神聖な行事として行う。

12月13日は、二十八宿の鬼宿日(きしゅくにち)で、婚礼以外ならすべての事が吉のめでたい日とされている。新暦になっても日時は変わらず、12月13日が事始めとして伝わっています。昔は、「松迎え」といって、門松やお雑煮を炊くための薪に必要な木を恵方の山へ取りに行く習慣があった。

12/14 泉岳寺義士祭

12/15~ 年賀郵便特別取扱

12/17,18浅草観音年の市

12/22 冬至

12月22日頃および小寒までの期間。大雪から数えて15日目頃。太陽が軌道上の最も南に来るときで、夏至と反対に、夜が最も長く、昼が短い日。

夏至から徐々に日照時間が減っていき、日中の太陽の高さも1年で最も低くなる事から、太陽の力が一番衰える日と考えられてきました。

冬至は「日短きこと至る(きわまる)」という意味で、中国では、この日から新年の始まる日で、先祖を祀る習俗があります。冬至といえば柚子湯と言われ。この日に柚子湯に入ると風邪を引かないと言われ、柚子には体を温める効果があり、柑橘系の香りでリラックス出来ます。

12/23 天皇誕生日

1989年に明仁親王が天皇として即位するとともに、今上天皇の誕生日である12月23日が国民の祝日となった。この日、皇居では一連の誕生祝いの行事が執り行われる。一般の人々は皇居の建物の中にまで入ることは許されていないが、天皇にお祝いの言葉を伝えたい人々のために、皇居の敷地内に記帳所が設けられます。

天皇誕生日には、天皇一家が数回バルコニーに出て、皇居につめかけた人々に手を振って挨拶するのがならわしになっていて、お祝いの人々は日の丸の小旗を振って、これに応えるのです。

12/24,25 クリスマス

12/28 御用納め

12/31 年越し・除夜祭・祇園おけら参り

歳末大売り出し・顔見世興行・冬休み

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12月の風情

節季

木枯し

数え日

初氷

掻巻き(かいまき)

綿入れ

雪吊り

鰤起し

歯朶刈り(しだがり)

埋火

暦売

羽子板市

歳末売りつくし

餅搗き(もちつき)

餅配り

鰭酒(ひれさけ)

行く年

年忘れ

大晦日

1年の最後の日を「大晦日(おおみそか)」または「大晦(おおつごもり)」と呼ぶ。「晦日(みそか)」とは毎月の末日の事で、一方「晦(つごもり)」とは、「月が隠れる日」つまり「月隠(つきごもり)」が訛ったもので、どちらも毎月の末日を指します。1年の最後の特別な末日を表すため、末日を表す2つの言葉のそれぞれ「大」を付けて「大晦日」「大晦」と言う。

大晦日の行事は古く、平安時代頃から行われていました。本来大晦日は歳神様を祀るための準備が行われる日でしたが、仏教の浸透とともに、除夜の鐘をつく習慣も生まれ、大晦日の風物詩でもある「年越しそば」を食べるようになったのは江戸時代からです。

元々、江戸時代の商家では毎月末日(晦日・みそか)にそばを食べる習慣があり、忙しい晦日は手早く簡単に食べられるようにという事からでしたが、それが大晦日に食べるものとして一般に広まったと言われます。

始めはそば団子で、やがてそば切りを食べるようになりました。この意味は「そばのように細く長く長寿であるように」との願いが込められ、そばはうどんなどと比べて切れやすい事から「一年の苦労や災いを断ち切る」という意味もあります。また、金細工の職人が作業場で散った金をそば粉の団子で取っていた事から、「そばは金を集める=金運を願う」という説もあります。

年が変わるまでに食べ終わらなければ幸運を逃す、縁起が悪いと言われ「片付けは年を越さず年内に済ませよう」という戒めも込められているのかもしれません。

霰(あられ)

山茶花(さざんか)

葉牡丹

南天の実

風呂吹き

柚子風呂

冬至粥

柚味噌

夜啼(よな)きうどん

晦日蕎麦

除夜の鐘

塩鰤

蒸し鮨

千枚漬

鍋各種

お歳暮

事始めから12月20日ぐらいまでに贈るのが習わしとなっていたが、最近では12月の初めから贈っている事も多い。

元々は日本古来の行事である御魂祭り(みたままつり–1年を2回に分けて先祖の霊を迎えてお供え物をして祀った)が起源で「分家から本家に」「嫁ぎ先から実家に」「使用人から雇い主などへ」お供え物が贈り届けられた事に発祥します。

当時は正月を前にして、年の瀬を無事に越し新しい年を迎えるにあたっての必需品として、お酒・お餅・干し魚・数の子・スルメ・昆布・塩鮭などの日持ち食品が贈られていました。現在では、実家や日頃お世話になっている方々へ一年間の感謝を込めてお礼の気持ちが贈られています。

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