当たり鉢の当たり方(すり鉢の擦り方) 使い方テクニック編

すり鉢を使うとき、どの方向に向かってすり棒を動かすのかをプロ目線でマニアックに説明します。すり鉢は、ラーメン屋でお椀にも使われたりしますね。ちなみに当たり鉢とは、すり鉢のことです。

なぜ“当たり”なのかというと、“すり”という言葉は“掏る(する)”=物を盗むと連想してしまうことから、すり鉢ではなく、縁起の良い当たり鉢と呼ばれるのです。

その他でも日本料理では、悪い連想をさせるような言葉は、縁起の良い言葉に変えることはよくありますね。

参考記事 縁起の良い料理名

当たり鉢は、日本料理では、胡麻を当たる以外にも、味噌汁を作るときに使われたり、真丈・真薯・真蒸(しんじょ・しんじょう)といって、魚(えび・かに)のすり身に、山芋、卵白、だし、酒、みりん、塩など加えて蒸したり、揚げたり、ゆでたりして薬味をつけて食べたり、お椀(お吸い物)などに使われます。

・海老を加えたら“海老真丈”

・カニを加えたら“カニ真丈”

などと呼ばれます。

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ちなみに胡麻には、当たり胡麻と呼ばれる、ペースト状の胡麻が売っていますが、当たり胡麻=ペースト状というわけではなく、当たり胡麻=すり胡麻です。

しかし、なぜペースト状の胡麻を当たり胡麻と呼ぶのかと言うと、まずネーミングが縁起が良いというのもありますが、実は、すり鉢でゴマを木の棒(当たり棒・すり棒)でずっとすり続けると、ドロドロのペーストになるのです。

ミキサーで長時間胡麻を入れておいても、どんどんペースト状になります。胡麻油は、そのペーストになったあとに、細かくなった胡麻が沈んでいくので、上には油だけが残ります。それが胡麻油となります。(市販されているものは、製法は異なります)

<無駄なく使うワンポイント>

胡麻もそうですが、特に真丈など、当たり鉢にこびりつくものは、この下写真のように、爪楊枝を何本か並べて、頭の方をテープ留めると、ちょうど当たり鉢の間隔が爪楊枝を並べたものの間隔と同じなので、その溝にそって、爪楊枝でこそぎ取ることで、無駄なく使うことができます。

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ちなみに、当たり鉢の溝はどのようにつけているのかと言うと、櫛(昔の髪をとく楕円形の“くし”)でつけていると言われます。

私は、修行時代、胡麻和えのゴマダレを作るために、毎朝、胡麻の状態から30分近くかけて、ペーストにして、調味料を加えたりして作っていました。そのように作ると、時間はかかりますが、風味が抜群に良いです。

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真丈を作るときは、胡麻と違って、結構硬いので、力が必要です。

大量に作る時は一人で持つのも大変なくらいのドでかい当たり鉢を当たり棒を使って作るのですが、腰を使って、身体全体を動かさないとできません。

そこまで大きいものではなくても、真丈を作るのは、時間がかかるのですが、ずっと、当たり棒を丸く、時計回りの円運動で動かしていても、ちゃんと力を入れることもできないし、うまく混ぜ合わせられません。

そこで、当たり鉢の中で当たり棒を動かすのに、色々なやり方が出てきます。

当たり鉢の当たり方(すり鉢の擦り方) テクニック編

まずオーソドックスなのが、

円・丸 Circle / Ring

と呼ばれる円運動です。

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時計回りにグルグル回すものです。

これは胡麻を当たる場合など、比較的、中に入れるものが軽いものは円に動かす形で大丈夫です。しかし、真丈を作る場合は、丸く動かすだけでは効率が悪くなります。

 

そこで、

三つ葉 Three Leaf Clover

という技が登場します。

三つ葉とは、その名の通り三つ葉を作るように、当たり鉢の中で3つの円を描くように当たり棒を使うテクニックです。

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順番は上の写真の矢印の順に動かします。しかし、それだけでもずっとやっていると飽きてきます。

 

そこで考え出されたのが

五芒星(ごぼうせい)・桜 pentagram / Cherry Blossom

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これは、三つ葉よりも複雑ですが、当たり鉢全体をまんべんなく行きわたらせることができるので便利です。

三つ葉をマスターしていないと、なかなかできない技です。

 

花丸・華丸・ひまわり Sun Flower

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これは、重たい材料は不向きですが、満遍なく混ざります。

 

メビウス(無限)Mobius / infinity

これは横方向に、無限∞を描くように動かすもので、

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キレイに描くのは、結構難しいです。

蝶々(ちょうちょう)の羽のようなので蝶々(butterfly)とも呼びます。

 

そして、めちゃくちゃ重い(固い)材料を当たる時は、

一文字 The (Straight) line

これで対応します。

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これは単純に、当たり鉢の向う側をぐるんぐるんと左右に一という字を右から左から書くように当たる方法で、めちゃくちゃ力を入れて、一方向に向かって力を入れるので、この場合、必ず2人がかりでやらなければなりません。

もう一人は、反対方向から当たり鉢を押さえる役目です。

真丈100人前以上作る時など、大きな当たり鉢を使い、この一文字だけで切りぬけます。

 

その他の当たり方では、上からガンガン叩いて潰す

バクダン Bomb

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(漢方や薬草を作る時は最初このやり方をしたりします。)

 

小さい円から大きい円に回しながら、また大きな円から小さな円に戻ってを繰り返す

螺旋(ラセン)

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やり方は、様々です。

 

あとほとんど見ることはないですが、かなり珍しいやり方で

勾玉(まがだま)comma-shaped jewels

もあります。

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かなりの上級テクニックなので、私もできません。(力の入れ具合がめちゃくちゃ難しいです)

用途によっても、当たり方は違うので、どのやり方が良いのか、色々と試してみてください。

 

以上、当たり鉢を使ってのテクニック(遊び?)でした。