人に言えない、恥ずかしい料理

あなたにとっての“恥ずかしい料理”はありますか?

恥ずかしい料理とは、「人に言いたくないけど、実はこんな料理が大好きなんです。」とか、「こんなの食べてると思われると、周りから嫌われそう。」みたいに感じてしまうような料理です。

でも、、、もしかすると、これは私だけの話かもしれません。

この話をすると「おまえはこんな奴だったのか!」と、あなたも含め、私の周りの人は幻滅し、距離を置くようになるかもしれません。そんな恐怖もありつつ、覚悟を持って今からする私の“恥ずかしい料理”の話を聞いてください。

本当の自分

これは、自慢でもなんでもないですが、私は高級日本料理店と呼ばれるレストランで料理長をしています。これまでの経歴も、料理の東大と呼ばれる辻調理師専門学校に行き、さらに技術研究所と呼ばれる専門学科まで進み、飲食業に携わる人なら誰もが知る懐石料亭吉兆で修業を積みました。

このようなエリートコースを進んでいる料理人は、探せば結構いるのですが、意外と少ないようにも感じます。

周りから見たら「すごい職歴だ」と思われがちですが、本当の自分は、全然そんなことはなく、むしろ凡人以下だと思うことも多々あります。それが今回お話する「恥ずかしい料理」につながります。

やっぱりあまり話したくない、、、

正直、ここまできても、文字を打つ手を止めてしまうくらい気にしていることでもあるので、かなり躊躇(ちゅうちょ)しています、、、私は今でこそ、これまで積み重ねてきた経験があるからこそ、お客さんからお金を頂いて、料理を提供することができます。

時には、キャビア、フォアグラ、トリュフなど、世界3大珍味を使った料理を創作し、出すこともあります。

客単価1人数万円いただくお店で働いていたので、どのような仕事・料理・サービスをすればお金をいただけるのかもわかります。

で、、、ここまで来ても、「まだ自慢話かよ」と思うかもしれませんが、今は自分を上げておいて、ここから落ちるところまで落ちるので、期待して楽しみに読んでください(笑)。

そして、次に話すのは、“恥ずかしい料理”につながることでもあり、私が料理人として、いかに“不適合な人物”なのかをお話します。

料理人が天職じゃないと思われる 3つの理由

1つ目 そもそも自分はエリートでもなんでもない

今でも思いますが、私は「やるぞ!」と決めて飛び込んだ仕事が、メチャクチャ場違いな分野だったということに気付いたのは、飲食業界で働き始めて、結構初期の頃です。

高校を卒業して、いきなり飛び込んだ調理師学校もそうですが、自分のエゴで、背伸びして手の届かないような場所を選びました。料理の東大である辻調理師専門学校は、工業高校出の私にとっては、ある意味“東大”という文字だけに魅かれた部分もあります。

というのも、工業高校なので、生徒の98%は就職する中、私は料理の専門学校へ、、、1%の生徒は大学に行くのですが、頭の悪い私は、あたりまえのように大学に行く学力などありません。

工業高校では普通科目の授業はほぼ無いので、というより、まあまあの不良高校というのもあり、だれも授業を聞きません(工業科目しかり)。私に至っては、真面目にテストを受けて、ホントに0点を取ったこともあります。さすがにその時はショックでしたが、それくらい頭も悪く、赤点は当たり前でした。

そんな私が背伸びをして、周りの空気も読まずに、「料理の専門学校に行く」と言い出した空気の読めなさは、結構誰にも負けませんでした、、、なので、高級とか東大とか、そんな言葉とは無縁の世界に生きていたのです。

調理師専門学校時代に、住み込みで働いていた串カツ屋も、ヤクザのトップや社長や貴婦人が来るような高級串カツ屋で、高級住宅地の真ん中にあるような店でした。という、そもそも住む世界が違ったのです。

2つ目 マイナスからのスタート

料理人を目指す多くの人は、「料理が好き」という理由でその仕事を始める人が多いです。しかし私は違いました。

まず、工業高校だったから、みんなと同じ“就職”という選択をしたくなかった。かといって大学行く学力もない。、、、という理由も少なからずありました。また、料理は小さいころにちょっとだけ作っていましたが、自分で作っていたと言っても、チャーハンくらいしか作っていないです。

しかもなぜ料理を作っていたかというと、両親が共働きだったので、食べるものがなく、私には妹がいるので、「妹にも何かたべさせてあげないと」という思いから、チャーハンを作っていました。

なぜチャーハンかというと、当時の料理番組でチャーハンを作っている人の姿が、なんか恰好良かったからです。

ただ、それだけです。だからと言って、「料理がものすごく好き!」という感覚はありませんでした。なので興味を持って料理や食材の勉強をすることもなく、実際に、高校卒業間近に調理師学校に行くと決めた後に、「よし食材の勉強をしよう」と思って、スーパーに行きましたが、白菜とキャベツの見分けも付きませんでした。

マジの話です。

だから、料理の世界に入ったのは、0(ゼロ)からのスタートではなく、完全にマイナスからのスタートだったのです。なので、飲食業界に飛び込む前は、食材・料理の一般常識レベルでさえ持ち合わせていませんでした。なので家族には、「白菜とキャベツもわからないのに大丈夫?」とよく言われていました。

3つ目 極度のアレルギー持ち

これは、かなり自分自身悩みました。何かというと、メチャクチャ“アレルギー持ち”だからです。

はい、アホの極みです。

小さいころからさまざまなアレルギー持ちで、幼稚園のころから花粉症でしたし、アトピーでもあります。その他、色々アレルギーがあるのですが、医者に言わせると、「アレルギー検査のために採血すると、血液が大量に必要で、それだけで死ぬレベル」と言われていたくらい、アレルギーの数はものすごくあります。

そんなアレルギーだらけの私が、食物アレルギーリスクいっぱいの飲食業に飛び込むのは、まさに素っ裸で戦場に飛び込んで死んでいくようなものです。

当時、そんなことさえ思いつかないくらいの知能の低さ、単純さ、良く言えば純粋、、、だったのです。

そんな理由があり、20年以上たった今でも、「自分、この仕事向いてないんじゃないかな、、」とふと思うことがあります。ホントですよ。

今でもいくつか食べ物アレルギーは持っています。なので、かなり作る料理にも影響が出ます。なぜなら、味見するとアレルギーが発症するからです。最近発覚して、ショック過ぎたのが、Soy(大豆)アレルギーです。

ご存知だと思いますが、日本料理でよく使われる醤油は英語でソイソースと呼ばれるように、Soyが原料です。

先日医者から宣告され、日本料理人なのにSoyアレルギーって、、、笑うしかありませんでした。

お医者さんも笑っていました(笑)、というような、結構珍しいほど、料理人に適していないと自分でもふと思うことがあります。

恥ずかしい料理

ここまで引っ張ってきてすみません。ようやく本題です。

先ほど話したように、私はこの飲食業界に入る前、料理とは程遠い世界で過ごしてきました。ただ、今は、それなりのポジションも確立しているため、このような話をしても、周りからは、「え?うそでしょ!?」と言われます。

今の仕事ぶりを見ている人から見たら信じられないのかもしれません。しかし、修業当時は毎日のように怒られ、「今日は怒られるのは、できれば5回までにとどめておこう」と毎回仕事前にビビりながらお店に入っていました。

それが2年間くらいです。つまり、相当仕事ができなかった証拠です(苦笑)

、、で、今は美味しい料理を作れます。なので、たまに勘違いする人がいて、よく言われるのが、

「あなたみたいな料理人を彼氏にすると大変そう」「料理作ると評価されて、文句いわれそう」「料理上手な人と過ごすのはちょっとしんどい」なんて思われます。(特に異性には)

でも、、、全然そんなことないんです。なぜなら、私はどちらかというと、裕福ではない家庭で育ちました。

3カ月に1回くらい、たまーに父が連れて行ってくれる吉野家の牛丼を食べるのが、メチャクチャ贅沢でしたし、クリスマスに出てくるケンタッキーフライドチキン、誕生日に連れて行ってくれる回転すし、これが私にとって、最高の贅沢だったのです。

逆に、中学生くらいのころ一度だけ、回らない寿司屋に行ったことがありますが、なぜか美味しいと思わなかったです。そんな味覚の持ち主でした。

そんなこと言うと、周りから逆に「え!?それで料理人大丈夫なの?」と思われそうなので、だからあまり言いたくないんですが、実はそうだったんです。

、、、で、恥ずかしい料理。

今だからこそ、「絶対味覚をもっているんじゃ?」とか「いつもいいものばかり食べてるんでしょ?」と言われますが、

本当に大好きで、毎日食べたい料理、または、昔食べていた料理というのがあります。これを聞いたら、けっこう引かれるかもしれません。

特に、日本での修業時代、自分一人の時によく食べていた料理(料理と呼べるかわからない)を公開します。

<恥ずかしい料理 一覧>

  • 醤油かけご飯を海苔でまいて食べる
  • 玉子かけごはん
  • さば缶とごはん
  • パンの耳を揚げて、砂糖かける
  • しょうゆバターごはん
  • 納豆ごはん
  • ふりかけごはん
  • ツナ缶+マヨごはん

<番外編 好きなもの>

  • 梅干しの種の中の種みたいなの(天神様と呼ばれるもの)
  • トンカツの肉の周りの衣(肉じゃない)
  • 天かす・天かすごはん
  • 饅頭の皮の外側の部分
  • 余っている食材、全部炒め
  • 焼き魚の血合いの(真ん中の黒くなっている)部分
  • 胡瓜の内側(みずみずしい種の部分)だけ食べる

特に若いときは、いかに少ないおかずで大量のごはんを食べられるかを考えていました。そしてどれだけこっぴどく怒られても、ごはんだけはガツガツ食べていたので、神経も相当鈍かったと思います(笑)

以上、そんな料理人もいるんだよってことを頭の片隅にでもおいてくだされば幸いです。