修業時代の話です。
仕事をする上で、どこでも人間関係が一番の悩みであることが少しずつわかってきた頃。
私はそこまでトラブルを起こす人間ではなかったですが、他の料理人はケンカっ早い人が多く、ある時はラグビーの日本代表と柔道の九州代表が取っ組み合いをしていた時もありました。ケンカの理由はいたって簡単。
「おまえ、いつも態度が気に入らねーんだよ」
「おまえこそ、仕事できねーくせにデカいクチたたくなボケ!!」
、、、こんな子供みたいな理由です。(だいたいこんな感じの理由が多いです)
そんな場面を収めるのは、いつもその上の先輩で、その方はとても穏やかなのですが、身長がバカ高く腕力もあり、そんな2人の喧嘩をいとも簡単に止めてしまいます。私も少林寺拳法の黒帯なので弱くはないのですが、かれら怪物に比べればネズミみたいな小動物です。
大概は素手で戦いますが、ぶっ飛ばされるので、あちこちにぶつかり調理器具が散乱します。
ただ、まだその頃はみんな20代の若い世代の喧嘩ですが、30代超えると、取っ組み合いのケンカは少なくなり(無くなるわけではありません)、言葉や精神的にきつい喧嘩が起こります。
ハッキリ言って、そっちの方が“たち悪い”です。
若いときは、仕事において実力も経験もなく自信もない代わりに、己の体力や腕力などで力を誇示しようとしますが、経験を積むと、それなりに知識も実績もつくので、それを元に権力という圧力を使ってケンカをします。
これは武器を使って戦争していた国同士が、武器を使わず国家権力を使って政治戦争をしているのと似ています。
どちらがいいとかないのですが、こと料理界においては、実力行使の戦争より、政治的な喧嘩の方があまりしないで欲しいです。理由は上の人たちがケンカすると、下の子も気を使ったりイライラして、調理場全体の雰囲気が殺気立つからです。
そんな、大人になっても、おじいちゃんになっても血の気の多い業界が料理業界です。年齢関係なくおじいちゃん料理人でも殴ったりします(笑)
ただそれも、私くらいの世代でだいぶ変わってきたので、スポーツ得意や運動得意な料理人ばかりではなく、おたくのひきこもりゲーマーなども料理界に参戦してきている時代でした。
さらに今は、もっと色々な方面から年も経験も関係なく参入するので、日本の料理業界もかなり変わったと言えるでしょう。
ただ周りを見ると、けんかっ早い人の方が店をオープンする時も勢いがあって、その分、成功する人も多いと感じます。