下痢は体の不調を表わすもっともわかりやすい症状の一つです。誰でも起こりやすい症状ですが、治すことにより健康増進に大きく近づけます。
※この記事では下痢に関する基礎知識とともに、あなたの症状を探し出す。チェックシートも用意しているので最後までご覧ください。
下痢を甘く見てはいけない
2004年のデータでは、世界で25億人が下痢になり、150万人の5歳以下の子供が死んでいます(半分以上はアフリカか南アジア)。
発展途上国での死因は肺炎が第1位、そして下痢が第2位と上位に位置しています。
そんな下痢の原因を解明し、治すために、まずは腸の仕組みを簡単に理解しておく必要があります。
健康な便とは何か
便の状態はBristol Stool Chartという診断医療ツールで7段評価をします。
- 木の実のようなコロコロした固い便(通過しにくく、黒くなることがある)
- ソーセージ状でゴツゴツした固い便
- 表面にひび割れのあるソーセージ状(黒くなることもある)
- ソーセージやヘビのように滑らかで柔らかい(平均的な便)
- 柔らかい小塊で、形がはっきりしている
- 小片が混じって周囲がデコボコした泥状の便(下痢気味)
- 全体が水様で固形物がない便(下痢気味)
固さ以外にも、色や匂いも判断に含まれます。色は茶色、臭いは無い(臭くない)ものが正常だと言われています。
下痢の原理
人は1日で、食べ物や飲み物で口から入る水が約2リットル。唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液など消化液が約7リットル。
合わせて約9リットルの水分が腸を通ります。
小腸で7~8割、そして大腸で残りの水分を吸収し、約99%が腸で吸収されるため、便として出て来る水分は1%の100cc程度です。このサイクルが崩れると下痢になります。
腸の仕組み
腸は消化管の一つです。食べ物が口から入り、胃の中に行って、最後に行きつく場所が腸です。腸は大きく2つに分かれます。
『小腸』と『大腸』です。
胃の中の胃液で溶かされた食べ物が小腸に入ります。小腸でその食べ物たちが分解され、栄養素を吸収します。
小腸から栄養素を血液に送り込み、体全体にいきわたらせます。
その時、小腸に残ったものは液状・おかゆ状になり、大腸に進んでいきます。大腸ではゆっくりと水分が吸収されて、固形化して肛門へ送られます。
- 食後約5時間、大腸の入り口では、便の状態は流動状。(イメージとして腹部右下から上に移動)
- 食後約7時間、半流動状
- 食後約8時間、かゆ状(大腸の上のあたりを横に通過)
- 食後約9時間、半かゆ状
- 食後約12時間、半固形状(腹部左上から下に移動)
- 食後約18時間、固形状(肛門に近づく)
- 食後約24~72時間、排便
小腸は食べ物の分解と栄養素の吸収。大腸は水分の吸収が行われます。
また腸に住む腸内フローラには、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」が住んでおり、健康な腸内では、善玉菌が悪玉菌の増殖を抑制しバランスを維持しています。
腸内フローラのバランスは、下痢や便秘といった消化器症状だけではなく、肥満症、アレルギー、喘息などの疾患にも関係するといわれています。
悪玉菌は、ストレス、不規則な生活、たんぱく質や糖質を中心にした食事などが原因で腸内に増えていきます。
腸の中の細菌は、約500~1000種類、100兆個以上にも及ぶといわれ、数のバランスを保ちながら、一種の生態系を形成しています。
小腸の終わりから大腸にかけての腸の壁に、種類ごとにびっしりと分布していることから、お花畑にたとえて「腸内フローラ」といわれている。
腸内フローラの状態を整え、健康を維持するためのポイントは食事・運動・ストレス。
酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌などが含まれた食事や整腸薬も腸内フローラを整える効果があります。
参考資料:http://www.saitama-med.ac.jp/jsms/vol43/01/jsms43_007_008.pdf
下痢とは?
正常であれば、食べ物の水分、飲んだ水、胃液、唾液などの99%が小腸と大腸で吸収されます。
この水分吸収が減るか逆に胃腸から出る水分が増える。このように機能がうまく働かないと下痢になります。
下痢とは健康時の便と比較して、液体またはかゆ状(ゲル状)の便が出ることを言います。
理想的とされるバナナ状の便の水分量は70%~80%ですが、これが80%~90%になると軟便(なんべん)、泥状便(でいじょうべん)、90%以上で水様便(すいようべん)となります。
下痢の2大原因
下痢の原因には大きく2つに分かれます。どちらか1つまたは複数の原因が考えられます。
■内的要因
・吸収不良
・消化管の異常(アレルギー・カンジタなど)
■外的要因
・食中毒(腐敗、ウイルス、薬、化学物質など)
・生活習慣(飲酒、食べ過ぎ、睡眠、冷えすぎ・熱すぎなど)
・ストレス
原因はいくつかに分かれていますが、カンジタ除菌にはストレスフリーや睡眠が大事など、内的要因と外的要因が深くかかわるので、どの下痢に対しても多角的に見る必要があります。
下痢の合併症状
合併症は下痢の最中、または前後に起こります。
直接的:腹痛、悪心、嘔吐
間接的:脱水症状、食欲減退、疲労、体力消耗
下痢の定義
水のような便の回数が増える。1日に200ml以上の便をする。
<継続期間別>
・急性下痢:発症から2週間以内のもの[5]、ウイルス性のものである可能性が高く、ほとんどの場合、自然に治癒する。
・持続性下痢:発症から2週間から4週間以下のもの
・慢性下痢:発症から4週間以上のもの
ストレスからくる神経性のものや、全身的な病気の一症状、または薬物の副作用による腸内の炎症など、さまざまな原因があります。
下痢 3つの症状
1:分泌性下痢
食あたり(細菌感染など)、食物アレルギー、薬(解熱鎮痛剤など)
大腸は水分を吸収するだけではなく、水分の分泌という働きもあります。
超粘膜の障害、腸管内の分泌液が過剰となり便の水分量が多くなって下痢を起こします。原因としては、腸に入った細菌 による毒素やホルモンの影響などがあります。
2:浸透圧系下痢
水分吸収がうまく行われず、下痢を起こす。
原因は、腸の外から水分を取り込もうとする成分があるためです。
糖分の消化吸収が良くないときや、一部の下剤(マグネシウム含有製剤など)、サプリ、人工甘味料(ソルビトールやキシリトールなど)の食品の摂り過ぎで起こります。
牛乳を飲むとおなかを壊す乳糖不耐症の下痢もこの症状となります。
参考資料:日本内科学会雑誌第108巻第1号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/1/108_36/_pdf
3:運動亢進性下痢(ぜん動運動性下痢)
ストレスや暴飲暴食、冷えなどにより、自律神経のバランスが崩れ、腸の動きが過剰に亢進(高い度合いまで進むこと)します。
そのため、便の通過スピードが速くなり、食べた物が短時間で腸を通過し、水分の吸収が不十分になり下痢をおこします。特徴として腹痛を伴うことが多いです。
過敏性腸症候群のほか、甲状腺の病気(バセドウ病)などが該当します。
4:滲出性下痢(しんしゅつせい)
腸に炎症があると、そこから血液成分や細胞内の液体などが滲み出て、便の水分量を増やします。
また、腸からの水分吸収が低下することも関係します。クローン病や潰瘍性大腸炎などが該当します。
下痢の主な疾患
IBS(irritable bowel syndrome)過敏性腸症候群
原因:精神的ストレスなど
症状:3カ月以上、月3日以上腹痛や腹部の不快感。
下痢以外にも、便秘型、または下痢と便秘が交互に起こる下痢便秘型がある。
潰瘍性大腸炎
原因:大腸粘膜の慢性炎症。
症状:粘膜がただれる、潰瘍が多発する。⇒長時間の腹痛と下痢が続く。粘液や血便の混じった便が出ることもある。
大腸ポリープ(腸の中のイボ状に突き出た腫瘍)
症状:下痢や便秘、血便など。放置すると大腸がんになる可能性もあり。
簡単チェックシート
質問ステップ1(期間別種類)
下痢はどれくらいの期間続いていますか?
A:2週間以内 ⇒①急性下痢
急性の下痢の原因で多いのが、食べ過ぎによる下痢です。ほとんどが消化不良による浸透圧性下痢です。アルコール飲料の刺激で下痢することもあり ます。通常、1〜2日で治ります。
*食べた直後の腹痛・嘔吐を伴う症状の場合は、O-157、ノロウイルスといった細菌やウイルスあるいはアメーバなどの寄生虫が、消化管で増殖して傷めたり毒素を発生します。
分泌性下痢や滲出性下痢を起こします。
血便、吐き気や嘔吐、発熱、脱水などの症状も現れる場合、抗生物質や点滴などで治療しなければならないこともあるので、すぐに病院に行くことをお薦めします。
食品アレルギーにも注意してください。
B:2週間から4週間以下 ⇒②持続性下痢
C:4週間以上 ⇒③慢性下痢
慢性の下痢の大半は過敏性腸症候群です。
③の慢性下痢の方は、上記事【下痢の主な疾患】の項目に当てはまるかどうかを確認し、必要な場合は医者に診てもらってください。
質問ステップ2(症状)
以下のチェックに当てはまると、それぞれの症状の可能性があります。
分泌性下痢
▢ 腹痛
▢ 食品アレルギーがある
▢ かゆみ、湿疹などの症状が出ている
▢ 薬を飲んでいる
浸透圧系下痢
▢ 下剤を飲んでいる
▢ サプリメントを使っている
▢ 人工甘味料の入った食品を食べた
▢ 暴飲暴食
運動亢進性下痢
▢ ストレスがある
▢ 食べ過ぎ
▢ 飲みすぎ
▢ お酒を飲む
▢ 刺激物を食べた
▢ 冷え性
その他、または複合
▢ 熱が出ている
▢ 血が混ざる
▢ 体重減少
▢ だるい
▢ のどが渇く
▢ 頭痛・嘔吐・腹痛
▢ 意識がもうろうとする
▢ 痙攣
自律神経の乱れによって起こります。
原因は、腸をコントロールする神経がお腹の冷えにより刺激を受けて、腸が異常収縮してしまうためです。腸を通る便の水分が十分に吸収されずに排出されるため、下痢になります。
原因を確認することが、早い快復の第一歩です。2、3日前からの発症前後の原因を探りましょう。発熱や血便がないことも確認してください。
そのほか、原因として【生理】もあります。
生理時は子宮を収縮させる「プロスタグランジン」の分泌により腸が異常収縮し、腹痛をともなう下痢が起こりやすくなります。
心理的にも不安定な状態が続くため、ストレスが原因となることもあります。
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