9月の味暦 ~仲秋の旬暦・食材・異称・行事・風情・語源・由来~

9月の味暦

仲秋の味

9月に入ると、雲の流れにも秋を感じるようになり、時には先日の猛暑がうそのように涼風が吹き、食欲もだんだん増してきます。この月の下旬には秋の彼岸を迎えますが、そのころになるとめっきり秋らしくなり、季節の変わり目の長雨や台風に見舞われますが、概して空は高く澄み、木々を渡る爽やかな風の秋本番を迎えます。

仲秋とは、陰暦の8月のことで、陽暦では9月になりますが、9月7日頃に24節季の一つである白露が訪れます。この頃になると盛夏期とは違い、夜間に草むらの葉に降りた露があたかも白い粉を吹きつけたような状態を見せ、二百十日や二百二十日頃の台風一過の澄み渡った秋の空は、共に本格的な秋の到来を知らせてくれます。

そして仲秋の名月に芒(すすき)を生け、芋や団子を供え、秋分(9月23日頃)には秋の彼岸の墓参りをするなどして、10月8日頃に24節季の寒露を迎えます。白露から寒露の前日までが仲秋の期間です。

9月9日は五節句の一つである重陽の節句、陽数の極みである九を重ねた賀の日で、重陽の節会では菊の酒を賜るのが習わしです。別名を菊の節句とか山九日とも呼ばれます。

杯に菊花を浮かべて酒を飲むのは邪気を払い長寿を祈ってのことで、正月節の屠蘇酒、三月節の桃酒、五月節の菖蒲酒、七月節の笹酒と同じ願いが込められています。また、月見の宴を連想させるような雅(みやび)な趣向の料理で、お客様をお持て成しするのも、この頃の特徴です。

実りの秋、収穫の秋にふさわしく、食材には海、山、里の幸が豊富で味が良く、一例として挙げても秋鯖、秋刀魚、鰯、カマス、鱧、落ちアユ、栗、銀杏、きのこ類、里芋、さつまいも、馬鈴薯、南京、冬瓜、枝豆、秋ナス、柑橘類ときりがありません。

この時期、食欲の秋という言葉を待つまでもなく溢れる食材を駆使して腕を振るうのは、料理人冥利に尽きる楽しみではないでしょうか。

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仲秋の旬暦

旬の食材

魚貝類・肉類

あこう・はた(きじはた)

くえ

あじ

あなご

あわび

いしがれい

いわし

おこぜ

かます

かれい

かんぱち

きす

こち

くるまえび

くろだい

このしろ

栄螺

秋刀魚

芝海老

シマアジ

するめいか

生ウニ

はぜ

ひしがにオス

ひらまさ(平政)

ぼら

ほや

おちあゆ

あゆうるか

かわえび

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野菜・果物類

あけび(通草)

青柚子

糸瓜

枝豆

えのきだけ

オクラ

カボス

貝割菜

きごしょう(木胡椒)

小かぶら

ゴボウ

サツマイモ

里芋

椎茸

しろうり

新ぎんなん

新ゆりね

ずいき

すだち

千石豆

つるな

唐辛子

冬瓜

とうもろこし

茄子

南京

葉紫蘇

はすいも

はつたけ

穂紫蘇

松茸

実紫蘇

みょうが

むかご(零余子)

れんこん

あおみかん

いちじく(無花果)

ざくろ

なし

ぶどう

メロン

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9月の異称、別名、呼び方

長月

菊月(きくづき)

稲刈月(いねかりづき)

寝覚月(ねざめづき)

季秋(きしゅう)

紅葉月

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9月の行事

9/1 二百十日・関東大震災記念日・防災の日・二学期

1923年(大正12年)9月1日午前11時58分、相模湾を震源とするマグニチュード7.9の大規模な地震が発生。地震発生がお昼どきであったため、焼失家屋は47万戸以上など、東京都・神奈川県を中心に空前の被害をもたらし、後に「関東大震災」と呼ばれるようになった。

関東大震災を教訓として防災意識を高めるため、1960年(昭和35年)、9月1日の「防災の日」が制定され、。また台風の厄日・二百十日と重なる時期で、台風への心構えの意味も含まれています。

9/7 白露

9/9 重陽節句

9/8~ 大相撲秋場所

9/11 二百二十日

立春から数えて210日目を「二百十日」、220日目を「二百二十日」と言って、旧暦8月1日の「八朔」とともに、古くから台風に見舞われることが多い農業の厄日とされてきました。

昔は二百十日の頃は、ちょうど「八十八の手間をかけて」育ててきた稲の開花の時期に当たり、秋の実りを間近に控えての暴風雨は、稲をはじめ農作物の収穫の大敵だった。古来、各地で二百十日、二百二十日の風を鎮め、五穀の豊穣を祈る「風鎮めの祭り」や「風の盆」が行われている。

9/14 岸和田だんじり

9/中旬 中秋名月

中秋の名月は十五夜とも呼ばれ、旧暦8月15日に見える月を意味します。旧暦で秋は7~9月となっており、その真中の日が旧暦の8月15日になるため「中秋」と呼ばれます。

秋は最も空が澄みわたり月が明るく美しいとされていたため、平安時代から十五夜には観月の宴が開催され、江戸時代には、その宴と秋の収穫を感謝する祭事が合わさって一般に広まり、今の「お月見」が形成されました。

「十五夜」から、15日が中秋の名月だろうと思っている方が多いが、実際は、毎年9月中旬~10月上旬の間に旧暦の8月15日がやってきて、これは、旧暦と現在の暦の数え方が違うためなので、かならずしも15日とは限りません。

9/15 敬老の日

敬老の日は、多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し長寿を祝う国民の祝日。

長寿の祝いには以下のようなものがある。
60歳 還暦(かんれき)   60年で干支がひと回りし生まれた年の暦に戻ることから
70歳 古希(こき)     杜甫(とほ)の詩の「人生七十古来稀(こらいまれなり)」から
77歳 喜寿(きじゅ)  「喜」の草書体は「七」が3つで「七十七」に見えることから
80歳 傘寿(さんじゅ) 「傘」の略字が「八十」と読めることから
88歳 米寿(べいじゅ) 「米」の字を分解すると「八十八」になることから
90歳 卒寿(そつじゅ) 「卒」の略字が「九十」と読めることから
99歳 白寿(はくじゅ) 「百」から「一」をとると「白」になることから

9/20~26 彼岸会

9/21頃 秋分の日

秋分の日(9月21日頃)には、昼と夜の長さがほぼ等しくなる。「春分の日」と「秋分の日」を中心とした、それぞれ前後3日間の計7日間が「彼岸」と言う。

春分の日・秋分の日を「彼岸の中日」と言い、彼岸の初日を「彼岸の入り」、最終日を「彼岸の明け」と言う。「寒さ暑さも彼岸まで」と言われるように、寒気や暑気が一段落してしのぎやすくなる頃。祝日法で、秋分の日は「祖先をうやまい、亡くなった人々をしのぶ」日とされている。

彼岸はもともと仏教用語で、現世と来世の境を川にたとえ、煩悩の多い現世を川のこちらの岸「此岸(しがん)」、悟りの境地である来世を川の向こう岸「彼岸」と呼びます。

彼岸はインドなど他の仏教国にはない日本だけの行事で、正月など神道にまつわる行事を行う一方、 仏教を説いた釈迦の教えも受け入れています。彼岸は「日願」でもあるため、太陽の神を信仰する神道と結びつきやすかったという説もあります。年に2回の彼岸は、墓参りなどの機会にもなる、とても良い日本独自の風習です。

9/下旬 秋の交通安全運動

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9月の風情

豊年

秋台風

下り簗(やな)

秋草

桔梗

芒(すすき)

撫子

女郎花(おみなえし)

藤袴(ふじばかま)

菊人形

野菊

菊日和

菊枕

渡り鳥

尾花蛸

渋採り

名月

十五夜

十六夜(いざよい)

月見

芋名月

秋の空

鰯雲

秋晴れ

秋の長雨

蝗(いなご)

蓑虫(みのむし)

野山の錦

萩ご飯

栗ご飯

野分

花野

秋衣

障子貼る

竹伐る

砧打つ

観月の宴

秋風

三五夜(さんごや)

満月

望月

立待月

居待月

臥待月(ふしまちづき)

更待月(ふけまちづき)

秋鯖

秋茄子

里芋

新大豆

葡萄

紫蘇の実

曼珠沙華(まんじゅしゃげ)

鶏頭(けいとう)

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