“油”と聞くと、イメージとしては“身体に悪いもの”と思いがちですが、油にもさまざまな特徴があります。ちなみに、ここでいう『油=脂質』という意味としても捉えていただければと思います。油に限らず、食べ物でも特定のものだけを過剰に摂取することはよくありません。
油に関しては、どの油をどのバランスで摂取するかであなたの身体の良い、悪いが分かれます。
これからお伝えする知識は、料理をして相手に食べてもらう場合でも、自分の身体を管理する上でもとても大事なポイントになるので覚えておきましょう。ではまずは、“身体に良い油の摂り方”についてお話する前に“脂質”について、簡単に説明します。
脂質の役割
脂質は身体には無くてはならない栄養素で、とても大切な役割を持っています。特に、次の2つがポイントとなります。
細胞膜(生体膜)の形成
細胞膜は、
・栄養素を取り込む
・老廃物の排出
・細菌やウイルスの侵入を防ぐ
・細胞同士の情報を伝達する
・ホルモン様物質の材料になる
などの大切な役割があります。
エネルギー源として働く
人の身体のエネルギーとして、最初に使われるのは、糖質(ごはんやパンなど)です。そして、糖質がなくなると、次は、脂質からエネルギーを使うようになります。脂質は糖質の約2倍のエネルギーを放出するため、効率のよい燃料源となります。その他、
・体温の調節
・太陽の光でビタミンDを合成
・脂溶性のビタミンA・D・E・Kなどの吸収を助ける
などがあります。
脂質の種類
脂肪には大きく分けて“飽和脂肪酸”と“不飽和脂肪酸”の2つがあります。
・飽和脂肪酸 肉や乳製品などの動物性の脂肪
・不飽和脂肪酸 ベニバナやコーン、オリーブ、亜麻仁など植物性の脂肪
※不飽和脂肪酸はさらに、「オメガ3」「オメガ6」「オメガ9」と細かく分類されます。
体内で作られる脂肪と作ることができない脂肪
飽和脂肪酸は体内で合成できるため、必ずしも食事からとる必要はありません。むしろ動物性脂肪のとりすぎが問題となっています。
不飽和脂肪酸のオメガ9は体内でも合成されますが、オメガ3とオメガ6は、どちらもヒトの体内では作り出せないことから、食事などで外から補わなければならない「必須脂肪酸」と呼ばれています。
このことから一概に油を取るといっても、大切なのは、必須脂肪酸と呼ばれるこの“オメガ3”と“オメガ6”をバランスよく取り入れることが大事になってきます。
油=脂肪酸の分類
動物性脂肪 飽和脂肪酸 (体内で合成できる)
<食品例>
- 肉(牛や豚の脂身)
- 乳製品
- バター
- マーガリン
- ショートニング
- ヘッド
- ラード
- ココナッツ油
- 綿実油(めんじつゆ、コットンシードオイル)など
<酸化しやすさ>酸化しにくい 加熱処理に向く
<身体への影響>血中LDL(悪玉コレステロール)値を高める、発ガンの原因となる。アレルギーへの影響は特になし
<備考>摂りすぎに注意する
オメガ9系 オレイン酸 不飽和脂肪酸(体内で合成できる)
<食品例>
- オリーブ油
- キャノーラ油
- 高オレイン酸のサフラワー油・ひまわり油・ピーナッツ油・米ぬか油、パーム油など
<酸化しやすさ>酸化しにくい 加熱処理に向く
*オリーブオイルは150度以上に加熱すると、有害な過酸化脂質やトランス脂肪酸を精製するので注意。
<身体への影響>HDL(善玉コレステロール)は下げずにLDLだけを下げる。癌への影響は特になし。アレルギーへの影響は特になし
<備考>積極的に摂ることが望ましい。ちゃんとした本物のエキストラバージンオリーブオイルを使うこと。(安物は高熱処理により、トランス脂肪酸が発生している可能性有り)
*ちゃんとしたエキストラバージンオリーブオイルの条件とは
1:低温圧搾(Cold Pressと記載)されているもの(遠心分離法は質が良くない場合が多い)
2:色のついた瓶や缶に入っている
3:一カ月以内に使い切れる量を買う
4:オーガニックのもの
オメガ6系 リノール酸 不飽和脂肪酸 必須脂肪酸(体内では作り出せない)
<食品例>
- コーン油
- サフラワー(紅花)油
- 月見草オイル
- ひまわり油
- 菜種油
- 大豆油
- サラダ油
- ごま油
- クルミ油
- アーモンド油
- 綿実油(めんじつゆ、コットンシードオイル)
- マヨネーズ
- 牛肉、豚肉、鶏肉など
(サラダ油・植物油と呼ばれる油の原料は、菜種、大豆、とうもろこし、ひまわりの種、ごま、紅花、綿実、こめ、ぶどうの9種類の原材料のうち、いずれかを用いて精製しています。また、2種類以上の原材料を混ぜて使う場合は“調合サラダ油”と言い、マヨネーズなどの原料にも使用されています。)
<酸化しやすさ>酸化しやすい
<身体への影響>
・LDLを下げるが同時にHDLも下げる
・発ガンの原因となる
・免疫を弱める アレルギー促進 炎症促進
<備考>
オメガ6が体内で不足すると、皮膚状態の悪化、成長の遅れ、肝臓や腎臓におけるトラブル、感染の頻発などが起こることがわかっています。スーパーで売っている安価な油や、食品メーカーや外食産業が使用している油もほとんどがアトピーを悪化させます。
摂りすぎに注意ですが、必須脂肪酸でもあるため、オメガ6に分類される脂肪酸は、高品質なものをバランスよく食べることが大切です。
オメガ3系 「α・リノレン酸」
「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA(エイコサペンタエン酸)」、不飽和脂肪酸 必須脂肪酸(体内では作り出せない)*DHA・EPAは青魚に多く含まれています。
<食品例>
- 亜麻仁油
- シソ油
- エゴマ油
- チアシードオイル
- 亜麻の種(フラックスシード)
- エゴマの種
- クルミなど一部のナッツ類
- 海藻
- いわし、あじ、さば、カツオ、マグロ、サケなど生の青魚など
<酸化しやすさ>酸化しやすい
<身体への影響>
・血中のLDLを低くし、HDLを高める働きをする
・血圧を下げる、血液の粘度を下げる 血栓抑制、血管拡張
・癌を予防する
・アレルギー抑制
・脳の健康維持(うつ、認知症予防)
・神経疾患の予防
・骨の健康維持
・炎症を抑える
・抗メタボ
など免疫機能を高める役割をします。
<備考>
高温で加熱しない、長時間空気にさらさない、光にあてない、低温で保管する、などに注意して、新鮮なうちに、積極的に摂りましょう。ただ、例えば1年以上フラックスシードオイルばかりを摂取していると、こんどはオメガ6欠乏症という問題が発生します。
オメガ3とオメガ6の比率
このオメガ3とオメガ6の理想の摂取比率は、「1:1」や「1:4」またまた「2:1」などが良いとさまざまです。
要するに自分の食生活を見て、身体と相談して、バランスよく摂取することが大事になります。(*近年の日本人の食事では、オメガ6(リノール酸)の摂取が多く、1:10~40に及ぶとも言われています。)
オメガ3とオメガ6は、必須脂肪酸で、なくてはならない栄養素なので、不足したり、摂取バランスが崩れると体の機能は大きく狂ってしまいます。
なぜバランスが大事なのかと言うと、2つの必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)は体内で全く正反対の働きをするためです。
以上のことから【オメガ6】の過剰摂取を避け、不足している栄養素の【オメガ3】を積極的に取ると良いでしょう。
オメガ3とオメガ6の特徴と効果 まとめ
オメガ6にはアレルギー促進や炎症促進、血栓促進作用があるので、摂りすぎの食生活は、アトピーや花粉症などのアレルギー症状の悪化の原因のひとつになっているといわれています。
その他、マーガリン、ショートニング、菓子類、ファストフードに大量に含まれる“トランス脂肪酸”は、多量に摂取すると悪玉コレステロールを増加させ、
・心筋梗塞や狭心症のリスクを増加
・肥満を発症させやすい
・アレルギー疾患を増加
・胎児の体重減少、流産、死産を生じさせる可能性がある
・母乳を通じた乳児へのトランス脂肪酸の移行
があるといわれています。
逆にオメガ3は、アレルギー抑制、炎症抑制、血栓抑制とまったくその逆の働きをするので、意識的に、揚げ物や、ファストフード、菓子類を抑え、良質なオメガ3の油を摂ることが大切になります。
このバランスを見直しだけで、例えば
・アトピーや花粉症が緩和
・炎症を抑える
・血液を流れやすくする
・ガンの増殖をとめる
など、リノール酸の危険因子を中和してくれます。また、α-リノレン酸は、学習能力を高める作用もあるといわれます。ただこのように言うと、オメガ6は全てが悪いような気がますが、オメガ3とともに協力して「脂質の役割」や、様々な生理活性物質を生む、無くてはならない“必須脂肪酸”です。
大切なのは摂取バランスです。
トランス脂肪酸について
植物性マーガリン・ソフトマーガリン・植物性ショートニング
これらの商品は、何年おいてもかびも生えないし、虫が卵を産みつけもせず、ねずみやゴキブリも食べません。
その理由は、トランス脂肪は、「異変脂肪」「プラスチック脂肪」と言う学者もいて、精製された油やマーガリン・ショートニングは本来自然界にないもので、長持ちさせるため水素化合処理という化学処理で生まれたものです。
このトランス脂肪酸が発生するオメガ-6系油からは
・アトピーを激化させる
・関節炎の痛みを強めるホルモン様物質を噴出する
・喘息や湿疹・感染症になりやすく、免疫反応がいつも過敏になりやすい
・黄疸を含めた肝臓の慢性的トラブル
・関節炎に似た諸症状
・皮膚炎・花粉などに対する免疫系の過剰反応
・心臓や循環器系の悪化症状
・脳の細い血管の破損
・腕・脚の感覚の不能とチクチク痛み
などの症状が促進される原因の1つにもなっていて、
・アトピー性皮膚炎が激化し、間接の痛みが激しくなる
・大腸炎では、腸の内層が腫れ上がります。
・大腸がん、乳がん、動脈硬化、心臓病などの危険因子になる。
・攻撃的・注意欠陥障害・アルツハイマーへと結びつく
等とも言われています。*リウマチの症状を緩和する自然の療法としてオメガ3が使われます。
オメガ3についての豆知識
オメガ3脂肪が欠乏するとどうなる?
・ひどくのどが乾く、
・頻尿・乾燥肌・ふけ症・腕・大腿部・ひどくかたい隆起が起きる
・「もっともっと油っこいものがほしい」というメッセージを送ります。
すると、マーガリンやポテトチップスなどのリノール系(オメガ6)の油や肉を欲しくなり、それらの油を多く摂ることになり、ますますオメガ3が減って、肥満となっていきます。
ダイエットにはオメガ3が必要
「脂肪をとると減量できる」と言ったら、一般常識からすると驚くかもしれませんが、実はオメガ3というたいへん柔らかいオイルを摂ることで、体内の中の硬い脂肪を除々に溶かしていくのです。
オメガ3は中性脂肪や過酸化脂肪の溶解の働きもしてくれます。「油は油でないと溶かせない」ということですね。
以上、身体に必要な油についてお話ししました。これで、油に対する見方が変わってきたのではないでしょうか?料理をする際にも、それぞれの特徴を把握したうえで、使い方を分けることをお勧めします。