貝の砂出し・砂抜きと塩漬けされた魚の塩抜き・迎え塩と呼ばれるものについて説明します。
なんとなくの感覚で砂出しや塩抜きをされている方は多いですが、しっかりと原理をわかっていると、説明したり教えることもできますし、ちゃんとした砂出し・塩抜きができます。
貝の砂取りのために、水につける
貝類は砂に潜って呼吸をして、たくさんの砂を吸い込んでいるので、食べるとジャリジャリすることがあります。なので、塩水に一晩漬けます。すると砂は吐き出すだけになるので、貝の中の砂はなくなっていきます。
海水といってもすべての貝がそうではなく、ハマグリ、アサリは海水濃度の3%の塩水でよいですが、シジミは海水と淡水の間の河口に生息しているため、真水でも良かったりします。
また、明るい場所より暗い場所で、冷蔵庫より常温の方が塩を吐き出しやすいです。使う塩も、なるべく天然塩を使うのが理想です。貝の生息していた環境により近い水にしてあげてください。
塩漬け魚の塩抜き・迎え塩・呼び塩
塩サケなど塩分の強い食材の塩を抜きたい場合、塩抜きという作業をします。このときに使う水は、真水ではなく塩水を使います。
~なぜ真水ではなく塩水を使うのか?~
真水を使わないで塩水を使う理由は、食材の表面が水っぽくなるのを防ぐためです。そして、うまみを逃さないためです。
真水だと、食材の内側の塩が溶けだす速度が速くなるので良いと思われるかもしれませんが、実はよくありません。
その理由を説明するために、塩の種類について簡単に解説します。
塩には塩化マグネシウムと塩化カルシウム、そして塩化ナトリウムがあります。
塩化マグネシウムと塩化カルシウムは食材の苦味や渋味の原因となり、塩化ナトリウムは食塩(塩味)のことです。
この塩化ナトリウム(食塩)だけは、その他の2つ(塩化マグネシウムと塩化カルシウム)より水に溶けだすのが早いのです。
例えば、もし塩サケを真水に浸すと、塩気がなくなった状態で真水から引き上げると、苦味や渋味が残り、逆に、苦みや渋味まで取り除こうと、もう少し長時間真水に浸しておくと、今度は水っぽくなります。
なので、塩水を使うことで、塩サケの塩分を少しずつ、内部の塩をゆっくり時間をかけて塩出しすることで、余分な塩味やうまみを逃がさないで済みます。
その時に使う塩水の塩分濃度ですが、1~1.5%がちょうどよいです。海水が約3%なので、「ちょっと塩味を感じるな」程度の塩水加減でいいと思います。
この塩水加減がちょうどよく、3%、5%と塩分が濃くなると、それだけ塩の溶けだしが遅くなります。なので、塩抜きの速度を真水の場合とほとんど同じ時間で、そこまで浸水時間を遅くすることなく、かつ、水っぽくなくうまみも逃がさないためには、1~1.5%の塩水が良いのです。
また、塩サケなど塩漬けされた魚のほかにも、数の子や筋子(イクラ)、塩味が強すぎる海老、梅干しや漬物にもこの方法は使えます。
以上、このように理由がわかると、色々な料理にも応用を利かせることができるますね。