酢の成分と作り方 ~酢酸発酵とアルコール発酵~

料理に頻繁に用いる酢

酢は、「糖分があるものであれば何でも原料になる」と言われ、種類もたくさんあります。

日本で一番なじみの深い“米酢”の場合、麹菌を繁殖させた米麹をアルコール発酵させてもろみをつくり、酢酸発酵させて作ります。

つまり、アルコール発酵と酢酸発酵という、“2度の発酵”が酢をつくるのです。*ちなみに、もろみから搾った液体は酒になります。お酒とお酢は作り方からして関連性がとっても深いのです。

酢の種類

ここから、色々な聞きなれない酢の名称が出てくると思いますが、頑張ってついてきてください。

酢は、微生物の働きによって酢酸発酵した「醸造酢」と、化学的に合成した「合成酢」に分類されます。さらに細かくすると、米などの穀物から作る「穀物酢」と、果物から取れる「果実酢」及びその他の「醸造酢」に分けられます。

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ヴィネガーexcel(ダウンロード)

以下に簡単にそれぞれの酢の種類を説明します。調理場や家庭にある『酢』をじ~っとよく見て、どんな種類の酢を使っているのか確認してください。

「醸造酢」

微生物の働きを利用して酢酸発酵させてつくる酢

「合成酢」

氷酢酸や酢酸を薄めたものに、糖類や酸味料、調味料、塩などを加えた液体調味料。

出回っているほとんどが業務用

「米酢」

1リットルにつき40g以上の米を使った酢。特徴はとがった酸味。醸造アルコールを添加することもあります。

ちなみに、米だけを原料としたのが「純米酢」で、米酢に比べて酸味にまろみがあり、色も濃いです。

玄米だけを原料としたのが「純玄米酢」と表示されます。

「黒米酢」は玄米を原料にした酢で、酸味が複雑で奥深く、コクと甘味が強いのが特徴です。

大麦が主原料の場合「大麦黒酢」もあります。

「穀物酢」

米酢以外の穀物酢で、1種類か2種類以上の穀物を原料とし、その総量が1リットルにつき40g以上のものです。

酒粕、麦、とうもろこし、豆、サトウキビなどが原料で、穀物の配合によって風味が変わります。

「果実酢」

りんご酢とぶどう酢以外の、さまざまな果物を原料とした酢です。1種類または2種類以上の果実を原料としています。その使用料が1リットルの酢につき、果汁で300g以上のものです。

「りんご酢」

1リットルの酢につき、、リンゴ果汁が300以上のもの。リンゴ果汁だけを原料とするものは「純りんご酢」と表記できます。

「ぶどう酢」

1リットルの酢につき、ブドウ果汁が300g以上のものです。ワインを原料とするものもあります。

「(その他の)醸造酢」

穀物酢と果実酢以外の醸造酢です。穀物、果実、アルコールを原料とします。

酒粕から作る「粕酢」や高濃度の「酒粕酢」、「蒸留酢」などがあります。

「鎮江香醋」

上海近郊の鎮江の酢。モチ米から作った紹興酒の酒粕が原料です。仕上げに砂糖で調味するのが特徴。

「シェリービネガー」

スペインの酒精強化ワイン、シェリーが原料。酢酸発酵に時間を要し、オーク樽で長期熟成させる。

「バルサミコ酢」

煮詰めたブドウ果汁が原料です。製法に規定があり、規定外のものはバルサミコ酢と表示できません。

「赤ワインヴィネガー」

赤ワインを発酵させた酢。フランスの規定では、酢に含まれる酢酸の濃度が6%以上とされている。

意外にだれも知らない“お酢”の作り方

酢とは、酵母によって原料の糖分をアルコール発酵してアルコールに変え、そのアルコールを酢酸菌によってさらに酢酸発酵させたものです。

イメージとして、<米⇒日本酒⇒酢><ブドウ⇒ワイン⇒ワインヴィネガー>という流れがわかりやすいかもしれません。

原理として、酢は糖分のあるものなら何でも原料にすることができ、上記のようにさまざまな酢が存在します。

どの酢も基本的な作り方の流れは変わらず、米酢の場合は、

1:原料の米の品質

2:酢酸発酵させる前のアルコールの内容

3:酢酸発酵の方法

この3つが仕上がりの風味に影響を与えるといえます。

酢の風味に影響する3要素

原料の米の品質

これは新米を使うのが一番ですが、実際は古米や米ぬかを使うことが多いです。

酢酸発酵させる前のアルコールの内容

米から酒(もろみ)をつくるのが伝統的な方法です。

ただ効率化のため工業的に作られた醸造アルコールが使われることもあります。

酢酸発酵の方法

酢酸菌の力だけで発行する「静置発酵」が自然なやり方です。

効率化、安定化のため、短期間で酢酸発酵させる「全面発酵」をする場合も多いです。

お酢の作り方

酢をつくる工程には大きく分けて、

1:米をアルコール発酵させてもろみをつくる

2:もろみを酢酸発酵させて酢にする

この2つがあります。

ある醸造蔵では、発酵を終えた酢は、熟成蔵に移し最低240日間熟成させてから、ろ過、殺菌して出荷します。その間、タンクからタンクへの移し替えを10回は行い、空気に触れさせるとよりまろやかな風味に仕上がるのです。

ちなみに、日本で作られている酢の7割は、醸造アルコールが使われています。そして、多くのメーカーは生産性重視のため、全面発酵でタンク内に人工的に空気を送り込み、わずか1~2日間で発酵を終えます。

ただ、この時間差が風味に大きく影響するため、足りない旨味を補助するため、うま味調味料を加えることもあるといいます。

最近は、果実を主原料とするフルーツヴィネガーも増えており、果汁そのものをアルコール発酵・酢酸発酵させた『フルーツヴィネガー』も人気があります。

ヴィネガーの分類

ヴィネガーは主に3つに分類されます。

『既成の果実酒を酢酸発酵させた、果実酒ベースのヴィネガー』

これは例えば、ワインヴィネガー、シェリーヴィネガー、シードルヴィネガー(りんご酢)など、長期熟成させたものもあります。

そこからフレーバーヴィネガーと呼ばれる、ワインヴィネガーに果実や香草などを添加したものもあります。

『果汁をアルコール発酵+酢酸発酵させたもの』

これは、フルーツヴィネガーと呼ばれるものになり、マンゴーヴィネガー、イチジクヴィネガー、ブルーベリーヴィネガーなど、果実の数だけ種類があります。

『煮詰めたブドウ果汁にアルコール発酵+酢酸発酵+樽熟成をしてできるもの』

これは一つは“バルサミコ酢”になります。イタリア・エミリア、ロマーニャ産で、木樽の中で発酵、熟成させて作ります。

あと、もう一つ“伝統的なバルサミコ酢(トラディツィナオーレ)”というものがあり、規定に基づいて、種類の異なる木樽に移し替えつつ、12年間以上熟成させたものになります。

 

以上、これらヴィネガーは材料と作り方により、さまざまな種類に分けられますが、共通して欠かせないのが、アルコール発酵と酢酸発酵で、これにより独特の風味と酸味が生まれます。