食中毒についてまとめていたら、先にテイクアウトについて言及しておいた方が良いと思ったのでお伝えします。
コロナ禍でテイクアウトする飲食店も増えていると思います。参考になれば幸いです。
テイクアウト 7つのチェック項目 食中毒予防&対策
時世もあり、テイクアウトをする飲食店は多いです。
テイクアウト「Take Out」=店内で食べずに料理をお持ち帰りする、できあがった料理、または簡単な調理のみで食べられる料理を、家で食べるものです。
イギリス英語ではテイクアウェイ「Take Away」と言います。
私は、食べる方の消費者側だけでなく、飲食店としての提供側としての経験もあるので、その両者についてのメリット・デメリットも含めた食中毒を防ぐための注意事項をお伝えしようと思います。
【飲食店(提供)側】 テイクアウト 7つのチェック項目
1:ビジネスや環境
まず、そのお店がテイクアウトに適しているかを考える必要があります。
持ち帰り専門店であれば別ですが、「店内でも食べることができ、持ち帰りもできる」となると、お寿司屋さんなど生ものを扱う店は特に、細心の注意が必要です。
店内と持ち帰りとで別々の料理にすると、それはそれでオペレーションがややこしくなります。
コロナ時の営業停止中や、定休日などの限定にしないと、店内客とお持ち帰り客、両方ともに迷惑をかける可能性があるので考えなければなりません。
環境や立地も大事です。テイクアウトに適した場所かどうかも見定めなければなりません。つまり「ちゃんと需要があるかどうか」なども把握します。
そして、もう一つの環境要因として『季節』があります。
特に夏場や梅雨など湿気のあるときは、菌が繁殖しやすいです。食べる環境や温度も考えて、料理を構成してください。
重要:今までテイクアウトをしていなかったお店が、突然テイクアウトを始める場合
メニューの変更や、販売価格の低下により、客層が変わると思いがちです。
しかし実際には、今までイートイン(店内)で食べていたリピーター客がテイクアウトする場合が多いです。
テイクアウトを始めることによる新規客も若干数いますが、その場合、店から1~2㎞圏内のご近所さんがメインでリピーターになってくれます。
2:衛生・健康管理をしっかり
これは基本かつ最重要です。
菌やウイルスは、場合によっては味にも見た目にもわからない場合があります。
テイクアウトに限らずですが、新鮮な食材で火をしっかり通しても、食中毒になることはあります。
その原因は、仕入れ先の食品管理の問題もあるかもしれませんが、もっとも多いのは、お店で働いているスタッフや調理場環境です。
とにかく清潔にする、掃除をする、キレイにする。人も食材も器具も同じです。
特にテイクアウトの場合、どうしても低単価になりやすいので、たくさんの量を作ることが多くなります。
それだけ、より多くの人が食べる可能性があるということは、食中毒の危険性も高くなります。
人によって、食中毒の反応は様々です。健康な人はお腹を壊さなくても、病気がちの人が食べれば、不調をきたすことはよくあります。
さらに店内とは違い、テイクアウトは誰が食べるかわからないというのも問題の一つです。
家から出ることができない、病人が食べる時も少なくありません。
提供側は、そこまで把握できませんが、できる限りの衛生対策、そして衛生管理の記録までしておけば、何かあったときの保険となります。
ちょっと余談ですが
料理人の仕事って、料理を作ることがメインだと思われがちですが、実は大半は掃除です。大きい店で料理長とか偉くなったら別かもしれません。
たまに料理しているより、掃除している時間の方が長いんじゃないかと思うくらい掃除しています。(特に下っ端の見習いは掃除が主)
または、調理や仕込みをしながら、同時進行で片付け・掃除をしています。
これは慣れでもありますが、意識の問題でもあります。
お寿司屋さんのカウンターとか、めっちゃキレイです。キレイかどうかを見ただけで、その人が仕事できるかできないかがわかります。巡り巡って、衛生面、食中毒にも関係してきます。
これは過去の私(修行時代)ですが、
キッチン台の上はきれいだけど、テンパりすぎて、冷蔵庫がグチャグチャ。みたいなこともあるかもしれませんが、全部整えてこそプロです。
また、冷蔵庫も扉の表面とかキッチンで目に見える部分しか掃除しない人もいますが、しっかり冷蔵庫の中も、目に見えない奥の部分も毎日整理整頓・掃除しましょう。
これも当たり前ですが、手洗いとか、毎日体、髪を洗う。制服もこまめに洗濯。必要ならマスクとか手袋をするなどもしましょう。
お客さんのよく触れるであろう場所も、忘れずにしっかり掃除してください。
3:適したメニュー
長時間放置しても問題ない料理かどうかを考えます。例えば、生ものは避ける。特に魚介類などは危険です。
お客さん自身も生ものは持ちが悪いということはわかっていますが、正直、料理人と一般人の衛生観念はかなり違います。
料理人は職業柄、例えば調理師学校でも衛生面の重要さと食中毒の怖さについて徹底的に学びます。
しかし、そうじゃない消費者さんは、あまり知らないことも多く、料理人だったらぶん殴られて埋められるレベルのキッチンや冷蔵庫が汚い一般家庭も多くあります。
そんな劣悪な環境に、お店の料理が数分でも置かれたら、いくら店側で注意していても食中毒は避けられない場合もあります。
被害を受けるのは店側です。
そんなことも予想したうえでの、テイクアウトの提供ということを認識しておく必要があります。
これは脅しではなくマジです。
私が修業時代には、
「もしおまえが出した料理で、それを食べた子供が死んだら、その子の親にどう責任取る?それくらい緊張感を持って仕事しろ!できないなら今すぐにやめろ!」
と言われました。それも踏まえてメニューを考えましょう。
4:調理や提供方法
メニュー構成から繋がりますがテイクアウトメニューを作る前の段階で、料理の提供方法、内容、火の通し方など、すべて考えてください。
ポイントとしては、
- 必要のない水分をしっかり取り除く。
- 煮詰める。
- 液体は他の小さい容器などに小分けする。
- 中心部まで加熱する。
- 半熟卵やレアの肉などの提供を控える。
などです。
ちょっと勘違いしやすいのは、魚でも肉でも、見た目赤くなければ、火が通っていればOKだと思うかもしれませんが、多くの食中毒菌は75度で1分、ノロウイルスは85度で1分以上の加熱が必要です。
タンパク質の変性温度はたしか42度くらいからなので、見た目火が通っていても、温度は全然低い場合もあります。
逆に、肉などは低温で長時間ゆっくり加熱すると、いくら温度を高かったとしても中の色が赤いままになります。(ローストビーフなど)
ハッキリ言って、よほど経験がない限り、見た目で温度帯などを判断するのは危ないです。しっかり温度計を使って、最初は計るようにしましょう。
また、温度ばかりに目が行きがちですが、温度以外にも塩分や酸度、甘味にも注目してください。料理の塩分濃度、酸度や甘みの調整(増やす)だけでも食中毒菌を防ぐことができます。
そんなことも含め、調理含め、食中毒菌やウイルスの知識も身に着けておいてください。
正直、店内で食べられる料理と全く同じものを、家で食べてもらうことは不可能に近いです。(定食やなどテイクアウトも売りにしている低単価の店でない限り)
ということは、消費者さんもわかっているとは思いますが、テイクアウト料理はかなりレベルが落ちます。
なので、基本ガチの料理人は持ち帰りは好きじゃありませんし、よほどの状況じゃない限り、またはイベント事以外はやらないでしょう。
5:冷蔵・温蔵庫、保冷剤、クーラーボックスを使う
食中毒の菌は20~50度あたりで繁殖します。
調理した食品はすぐに10度以下まで冷やすのもポイントです。または温かい料理の場合は65度以上で保管してください。
実際、その条件下を守っていても、菌は生き残っていることもありますし、消えないウイルスもあります。
ただ、店側でできることとして、最低減の対策で、保冷剤を入れたり、保温器を活用したりしてください。
6:店の規模や人数、調理技術に見合って提供。
これ、結構ベテランの料理人でも陥りがちですが、というか私も経験ありますが「自分の能力を見誤る」というのがあります。
自分の能力しかり、周りのスタッフの能力も、自身の判断ミスにより、時間の遅れや、衛生面での低下、対応できなくなるなどの問題が起こります。
一応、ある程度の問題勃発も含めて、時間管理し人員配置したりしますが、そういうときに限って、予期せぬトラブルが発生します。
食材の入荷が遅れたり、スタッフが休んだり、天災などが起こり、焦って仕事が雑になったり、見落としたり、ミスしがちです。
何が起こるかわかりませんが、過去の失敗経験を思い出し、万全な対策をしましょう。
ちなみに私にも最悪の体験があります。(テイクアウトじゃないですが)
ケータリングで料理を出しに車で移動していたときに、時間がギリギリで焦りまくり、車内で色々準備していたら、ブレーキ踏むの忘れて、前の車にぶつけました。
その時は血の気が引いて「あ、終わった」と思いましたが、ほんの小さな車の傷だけでコツンと当たった程度だったので、ものの数分で事なきを得ました。
ただ準備は大事ですが、あまりにも前過ぎる準備だと、それはそれで衛生面でよくないです。
食中毒対策としてまとめると、
- 持ち帰りパックに詰める時は、清潔な場所を確保する
- 食べてもらうまでの時間を短くする。(オーダーを受けてから調理を開始するなど)
- すでに出来上がったものを長時間放置しない。
- 準備はしっかり、でも準備しすぎもダメ、バランス大事
そして
- 自分を過大評価しすぎない
7:お知らせをする
お客さんに料理内容を説明し、すぐに食べてもらうように説明すること。
妊婦さんやアレルギー持ち人も食べることを想定して、できる限りのことは説明してください。料理のこだわりなども軽く説明できるとGoodです。
また、お客さんに、出来上がり時間を伝えたり、取りに来る時間も守ってもらうことも大事です。
料理を提供したら安心してしまい、最終段階の渡す場面で忘れがちです。
たぶん口頭で言っても、9割のお客さんは目の前の料理に見入っているので、聞いていません。それでも伝えましょう。
または容器にシールなどを張るなどして説明してください。面倒ですが、手紙スタイル(一部手書き)の説明はかなり効果あります。
では次、お客さん視点バージョンです。
【消費者(お客)側】 テイクアウト 7つのチェック項目
1:店の選び方、環境を考える。
「あのお店の料理が食べたい!」と思っても、テイクアウトで家に帰るまでに3時間かかるとか、距離的な問題で難しいときは、きっぱり諦めましょう。
または、ジャンクチェーン店など、
明らかに防腐剤や保存料入りまくりで、1年情報で放置してもカビすら生えないようなテイクアウトフードなら食中毒にはならないかもしれませんが、
その後あなたが栄養失調になることは保証します。
店の選び方も大事。
私もやりがちですが、テイクアウトに慣れていない(最近始めた)店でオーダーする。
この場合、店内での提供は安全でおいしく食べられても、テイクアウトのプロではないです。
味的に、かなり残念な思いをすることもあるかもしれませんし、運が悪ければ、食中毒になるかもしれません。
店を選んでください。初めての場合はある程度のリスクは覚悟しましょう。
お客さんは調理場の中を見ることができません。結構「まじで!?」と思うような、ゴキブリやネズミの格好の住処みたいな調理場も中にはあります(残念ながら)。
夏場や梅雨など湿気のあるときは、菌も繁殖しやすいので食べる環境や温度も考えてください。
2:衛生・健康管理をしっかり
飲食店側が完璧でも、食べる側が浮浪者のように汚いとか家がゴミ屋敷なら、食中毒にもなるどころか、
たぶん、もうすぐ病院に行くことになります。
食べる側の衛生管理をしっかりすることと同時に、普段の食事から健康に気を付けたり運動したりと、あなたの身体の機能自身を上げておいてください。
超健康体であれば、(言い方悪いですが)多少不衛生で適当なテイクアウトフードだとしても、食中毒にも病気にもなりません。
妊婦さんやアレルギー持ちの人は、細心の注意を払ってください。命にかかわるので、店員さんにウザがられても、料理の原材料など聞くようにしてください。
また、あまりあてにならない場合もありますが、料理を目視で判断するのも大事です。
例えば、火が通っていなかったり、異物が入っていたりする。
クレームものですが、常連の店だからといって、安心しきっていると、たまに見逃して痛い目見る時があります。
私も、絶対入っていないだろうと思って、知り合いの店で買ったパスタにアレルギーのピスタチオが入っていました(原材料表示に書いてあったけど見なかった)。
そのパスタをがっつり全部食べてしまい、一日ぐったりしたときがあります。
またお店の外観やスタッフの身なりなど、清潔感をチェックするだけでも判断材料になります。
3:メニューを誤らない
まれにありますが、店側としてはOKな料理でも、テイクアウトとしての料理はOUTな場合があります。
特に、店で出している料理から選んでテイクアウトする場合、テイクアウト用にメニューが作られていない場合、危険な場合があります。
刺身とか寿司とかの生ものは、店側もお客さんもわかっているので、テイクアウトはしなかったりしますが、
ちょっとした総菜とか、実は仕込んだのが数日前の料理とか、お客さん側からではわからない事情で提供されているテイクアウト料理も少なからずあります。
慣れている店であれば無難なもの、例えば、オーダーしてから火を通す調理をする料理などがいいかもしれません。
4:そこまで味の期待をしない
意外と重要です。
普段慣れているテイクアウト専門店出ない限り、味の統一は難しいです。店内で食べる料理とは別物として捉えてください。
店側はわかっています。『テイクアウトはそんなに美味しくない』と。
でも、せっかく頼んだのに、
「ありがとうございます。この料理、店内で食べるよりだいぶ味は劣りますが、悪くはないので大丈夫です」
なんてことは言われたくないですよね。
ここは暗黙の了解で、消費者側として理解してください。
信頼できるオーナー・料理人のお店だとしてもテイクアウトとしての料理の味は全然違います。
もちろん提供側のお店も、家でも最高に美味しい状態で食べられるように最大限努力はしていますが、やはり『できたて』には勝りません。他にも雰囲気やサービスなども料理のおいしさには含まれます。
6:説明書きを読む、原材料を把握する
料理内容を説明してくれたり、説明書や原材料表示があれば必ずチェックすること。
提供側の料理人は、テイクアウトの料理でも、
- どのタイミングで、
- どういう環境で、
- どの温度帯で、
- どんなお皿に盛り付けて食べてほしいか
というイメージが明確にあります。
できれば、そんなこだわりも聞けたり、説明書きで添えてあれば必ず読むようにしてください。
また、出来上がり時間のちょっと前に来て、ちょっと待つくらいがいいです。
待っている間は、あなたがそのテイクアウトの料理を最短で最高の状態で食べることを想定して、シミュレーションするものいいです。
食中毒は時間の勝負でもあるので、最短で家に帰って食べるルートを考えましょう。
余談ですが、安いテイクアウト料理でも、キレイな器に盛り付けると料理が格段にレベルアップします。手間ですがおススメです。
7:テイクアウトをしないで家で作る
これを言ったらテーマから外れ、元も子もないですが、言わせてください。
ある程度料理ができるのであれば、家飯が一番いいです。スーパーで食材を買い、時間をかけてでも自分で作るのです。
時間的に難しいこともあるかもしれませんが、正直、ある程度のレベルの料理人なら、テイクアウトするより、自分で作ったほうがはるかにマシです。
味も金銭的にも満足度も全てにおいてです。
料理人視点で唯一難点を言えば「家庭のキッチンは使いづらい」「時間がかかる」くらいです。また、特定のこだわった料理を作る時、調味料や食材が余りやすい。
またお店でできる大量調理特有の利点は賄えない(例えば、マグロ1本買って、赤身、中トロ、大トロと少量ずつ味わうことができにくい)、などはあります。
テイクアウトの利点は、
- その料理(例えば寿司をにぎるなど)ができない場合に価値がある。
- その店でしか出せないような味がある
- これらは趣味・嗜好からの観点になります。
- 家ではできない調理、油もの、低温調理、スモーク、熟成などの料理が楽しめる。
- バラエティにとんだ食材を少量ずつ味わえる。
食中毒の観点では家で作る料理の方が良いと思いますが(作る人や家の環境にもよります)、考えようによっては、クリンリネス(清潔さ)が徹底されたお店のテイクアウト料理の方が安全かもしれません。
個人的には、自分で作った方が、衛生面で全て管理できるのでテイクアウトよりはるかに安心です。
番外で、スーパーなどにも売っているような、レトルトや冷凍、真空パックの持ち帰りフードもあります。
それらは食中毒にはならないかもしれませんが、栄養面や化学調味料・添加物も入っていることが多いので、個人的には家飯が一番です。
以上、飲食店側視点とお客さんの消費者視点からのテイクアウトにおける、7つの注意事項についてでした。