お祝い事の食事の献立で悩んだ時に参考にしてください。
日本人は縁起を担ぐのが得意・好きな民族です。ここでは、縁起の良い食材や吉兆を願った食材を紹介していきます。また、葬式や法事などで出される料理についてもまとめました。
縁起の良い食材
鯛(タイ)
まず絶対に外せないのが鯛(タイ)です。「めでたい」の語呂合わせの他、鯛の赤色は神様が好む色、邪気を払う色とされています。鯛は尾と頭がついた「尾頭付き」が、縁起が良く、お造りや焼き物で出されることが多いです。
<代表的な調理>
お造り
塩焼き
炊き込みご飯
木の芽焼き
酒蒸し
兜焼き(端午の節句)
海老(エビ)
エビも尾頭付きで、出されることが多いです。
海老は「海の老人」とその漢字からもわかるように、長く伸びたひげと腰が曲がって丸くなった姿から、「腰が曲がるまで長寿を願う」という意味が込められています。
また海老でも、伊勢海老は、硬い甲羅が鎧みたいで、ひげも立派なのでお祝いごとによく使われます。
海老の縁起ポイントは3つ。
1:茹でると鮮やかな赤色になります。赤色には、邪気を祓う魔除けの力があるといわれています。
2:殻が鎧かぶとのように見えるため、力強さの象徴。
3:尻尾が常に曲がっていて、その様子を老人に見立てて、長寿を表す。
<代表的な調理>
兜焼き
具足煮
お造り
艶煮
昆布
「よろこぶ(喜ぶ)」との語呂合わせの意味があります。また、昆布は「ひろめ(広布)」「えびすめ」とも呼ばれ「福を広める」「エビス(七福神)」の語呂合わせもあります。
昆布は成長が早く繁殖力があることから、繁栄の象徴としてお祝いの席には欠かせません。結納でも子孫繁栄を願う意味を込めコンブが使われます。嫁入りの場合は「子生婦」「子布婦」、婿養子の場合は「子生夫」「幸運夫」と書くこともあります。
<代表的な調理>
昆布締め
佃煮
昆布船(お吸い物)
飾り昆布
切り昆布サラダ
数の子
ニシンの卵巣には数万の卵があることから、数の多い子、「子孫繁栄」の意味で縁起が良いと用いられるようになりました。
子持ちこんぶ
昆布と数の子。ニシンが卵を昆布に産み付けたものです。
ブリ
成長するにつれ名前が変わることから、出世魚の代表です。
関東:ワカシ → イナダ → ワラサ → ブリ
関西:ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ(その他、地域によって、呼び方は変わります)
<代表的な調理>
塩焼き
照り焼き
ぶり大根
ブリ以外にも出世魚は、、、
スズキ セイゴ→フッコ→スズキ→オオタロウ
ボラ オボコ(スバシリ)→イナ→ボラ→トド
イワシ シラス→カエリ→コバ→チュウバ→オオバ
があります。
小肌栗漬
小肌(こはだ)は、コノシロという魚の幼名。これから大きくなりコノシロと呼ばれる魚になるので出世魚として好まれ、縁起も良いとされます。
アワビ(鮑)
アワビの身を薄くそいで伸ばして乾燥させた熨斗鮑(のしあわび)は吉事の贈り物として使われていました。それが今では熨斗紙や熨斗袋として受け継がれています。
よくお祝い事の封筒などについている箸袋みたいな黒と赤のマークが熨斗鮑です。
これを熨斗と呼び、正確には熨斗飾りの中にある細長いオレンジっぽいものが熨斗鮑(あわび)です。長く伸びることから、永続して発展する意味があります。
蛤(ハマグリ)
蛤は殻どうしが合う組み合わせは世界で一つしかありません。
平安時代から“貝合わせ”と言って、貝殻の色合いや形の美しさ、珍しさを競ったり、その貝を題材にした歌を詠んでその優劣を競い合ったりする貴族たちの遊びがありました。貝の内側に金箔や絵を書いて遊んだり、器としても使われます。
2枚の殻がぴたりと重なり、対になっているもの以外は合わないところから、夫婦円満の縁起物としてよく使われます。
生涯をともにできるよい伴侶との出会いを期して、「夫婦和合」の象徴として古来から親しまれ結納・結婚式の膳にハマグリが出されようになりました。女性の美徳と貞節を意味するとして、桃の節句(ひな祭り)などでも食べられます。
女性に不足しがちなカルシウムや鉄分も豊富です。
バイガイ
バイ貝「しあわせが倍(バイ)になりますように」という意味が込められています。
麺類
特に「うどん」は、長く太い、濃いお付き合いになるという意味も込められます。
イクラ
意味:子孫繁栄
紅白の赤の役割として使われます。
<組み合わせ例>
スモークサーモン、クリームチーズ、イクラ
ごはん、イクラ
カマボコ、長芋、イクラ
紅白かまぼこ
彩りや形で、めでたさを演出しやすい練り物です。
カツオ(鰹)
当て字:勝男
端午の節句に強くたくましく育つようにという願いを込めて。
鰹節
当て字:勝男武士
よもぎ
「邪気を払い無事に成長する」という縁起を担いだ食材です。また、よもぎの薬効により「健康に育つ」という意味もあります。代表的なものは柏餅
れんこん(蓮根)
「穴が沢山開いている=見通しが良い」「良い未来を見通せる」という事で、受験や仕事など多方面に縁起が良いとされる食材です。
<調理例>
煮物
はさみ揚げ
サラダ
豆
「マメに生きる」「まめまめしく働ける」という意味で、健康に過ごせるようにと縁起を担いだ食材です。
豆の種類は特に決まっているわけではないですが、小豆や大豆、また彩りとして枝豆など使われます。
マメ(魔を滅する)ことから、厄除けの効果もありです。慶事(めでたい時)には黒豆などの色の暗いものは使いません。
納豆
納豆は、ネバリ強くなるということで、特に合格祈願など受験時に好まれます。
その他、おくら、モロヘイヤ、なめこ、海藻類などネバネバ系は、粘り強く頑張るという意味も込められます。
タケノコ(筍)
「真っすぐにスクスク育つように」という願いが込められています。筍は成長が早く真っすぐに伸びるので、端午の節句にぴったりです。
ゴボウ(牛蒡)
細く長く地中に埋まっている牛蒡は「長寿」を意味します。また『たたき牛蒡』は柔らかくなるまで煮た牛蒡を叩いて身を開いたもので、開運を願ったものです。
いりこ(煮干し)
いりこ=入校。合格祈願に。カルシウムが多い小魚なので、勉強のおともにも。
田作り
祝い肴三品のうちのひとつとして定番となっている田作り。
小魚は昔、田畑の肥料として使われて、その事により五穀豊穣を願った食べ物としておせち料理にも使われています。
タコ
たこ=多幸
縁起のいいスイーツ くだもの・フルーツ系
いよかん
いよかん=良い予感
きんかん
金色の実を付ける金柑は大願成就や幸運をもたらします。子供の成長の節目、お正月のおせち料理によく使われます。薬効もあります。食用の他、植樹など幅広く好まれています。
植樹としては、育てやすく、黄金色の実が成ることから縁起をもたらす樹です。
柑橘類はデザートでも料理にも使えるので便利です。
すだち(酢橘)
「すだち」は「巣立ち」につながるので人生の門出に縁起のよい食べ物です。
洋菓子
バウムクーヘン(2人がこれから年輪を刻んでいく、という意味)
和菓子
紅白まんじゅう、松竹梅などの縁起物を模った干菓子(らくがん)、
大福
丸くふっくらしている様子が ウズラに似ているので、うずら餅、はらぶと餅とも呼ばれる。のちに「腹太餅」を「大腹餅(だいふくもち)」とも呼び、大腹なら大福の方が縁起がよいということで「大福餅」となった。
その他
紅茶(幸のお茶)ということで、甘いものが苦手な方に使える。
お茶
桜の塩漬けを水洗いして、お湯で戻した桜茶(さくらちゃ)
大福茶(おおぶくちゃ)
昆布と梅干が入ったお茶。福梅と結び昆布に煎茶をそそいでいただきます。新年の喜びと息災を願っていただく、お祝いの縁起ものです。
大福茶(だいふくちゃ)と読むと、これは違うものとなり、お茶席でいただくものとして解釈されます。
大雑把に根菜類
根菜類は、地に根を張って力強く生きる野菜です。そのため、根性がつく、継続する、安定や繁栄などの意味を持ちます。
川を昇っていく魚
運を切り拓く
するめ
するめは『寿留女』、『寿』は幸せを示す文字で、昔より結納の品として使用され、めでたい祝儀の膳に欠かせない品です。昔は日持ちする食材として重宝された。
伊達巻
菊花かぶ
錦玉子
玉子の黄身⇒金、白身⇒銀に例えた金銀がおめでたい。また2色を「錦(にしき・にしょく)に語呂合わせしています。
栗きんとん
黄金色に輝く栗きんとんは、黄金に例えられ豊かな一年を願う食材として好まれます。また『勝栗』は縁起が良い食べ物として、戦国時代の武将たちが出陣するときに食べられた食材です。
鰻
時節による滋養強壮の目的で長寿や薬事効果を期待して食される。ウナギやアナゴなどの長い形の魚は『良縁』を引き寄せてくれると言われています。
逆にダメな食材
少し意外に思うかもしれませんが、
カニ
*両極の意見があります。
伊勢海老、ロブスターはえび・カニどちら?という突っ込みがありそうですが、伊勢海老は「エビ」と通称されるもののなかの最大種グループである「イセエビ下目」に属する代表種。ロブスターは、アメリカザリガニなどと同じ「ザリガニ下目」に属する大型種です。
<ダメな理由>カニは「ハサミが縁を切る」「カニは横にしか歩けないのでいつまでも前進できない」を連想させるので避けます。
<良い理由>蟹は霊性を持つ生物と考えられていました。
・子(卵)を抱いて育てる
・脱皮をして成長する
・ハサミを上下に振る姿がツキを招いているように見える
以上のような理由から、縁起が良いとされています。茹でて赤くなった蟹の色も縁起が良い色です。
学業運や発展運や幸運を招くという意味もあり、その理由は
「学業運」においては中国の甲というランク付けからカニの甲羅を当てはめたこと
「発展運」は脱皮をする習性から
「幸運を招く」はカニが手招きをするような様子をよく見せることなどからです。
アユ
夏に美味しいアユですが、生きる期間が短いので、お祝い時にはふさわしくありません。しかし、川を上流する姿から、発展・成長など縁起の良い食材としても使われることはあります。運を切り拓くという意味も持ちます。
黒豆
白黒の色使いはお祝い事にはNGです。不祝儀は黒白(こくびゃく)である黒豆ごはん、お造りのイカと海苔の鳴門巻きなどもNG
結納9品目
目録と結納金の金包、縁起物を色々セットにしたものです。一般的には九品目。略式結納だと七品目、五品目、三品目となり、割り切れないようにという意味で奇数で揃えるのがしきたりです。
九品目の品々
・目録書(結納品の品名や数を記したもの)
・長熨斗(あわびを干して長く伸ばしたもの、長寿の意味)
・金宝包(結納金)
・松魚節 / 勝男武士(かつおぶし)
・寿留女(するめ)
・子生婦(こんぶ、よろこぶ・子宝の意味)
・末広(すえひろ。純白の扇子。無垢と末広がりの意味)
・友志良賀(ともしらが。白い麻糸。白髪になるまで仲良くという意味)
・柳樽 / 家内喜多留(祝酒)
食材以外の要素
動物
鶴・亀・金魚・鯉・干支
色
お祝い事には紅白を入れる。ポイントは白を多めに大きく見せる事で色合いのバランスが取れる。
紅白なます、紅白けん(あしらい)など
数字
4と9の数字は4(死)、9(苦)を連想させるので使いません。偶数は「割り切れる」ため基本NGです。しかし、偶数の8は末広がりでOKです。
基本、お造りの数も奇数が良いとされているため1、3、5、7で盛ることが多いです。(9は省く)
普段の食事の時は、お客さんの数やバランスによっては偶数や、4、9をつかう場合もあります。
温かいもの
人は、体温が上がると気持が穏やかになり、体温が下がると怒りっぽくネガティブになりがちです。また、身体が冷える程ほど行動的でなくなります。
運気が下がると行動力が落ちるので、食べ物も同じく、身体を冷やすことで行動力が落ちて運気を下げるのです。できるだけ身体を温める食事を心掛け、血流を良くすることで健康や運気をアップ・改善します。
盛り付けで使われる
朝顔
別名「牽牛」(花は「牽牛花」)と呼び、その種(牽牛子)が薬として非常に高価で珍重されたため、種を贈られた者は牛を牽いて御礼をした。平安時代に、牽牛子は百薬の長として珍重された。
江戸時代には、牽牛との逢瀬を願う織女になぞらえて「朝顔姫」などと呼ぶことが一般的になり、花が咲いた朝顔は「彦星」と「織姫星」が今年も出会えたしるしとして、縁起の良いものとされた。
ほおずき
お盆の起源は仏教に由来する盂蘭盆会。日本では古来の先祖崇拝や精霊崇拝の要素を取り込んで、今でいう「お盆」の形になった。ほおずきは漢字で「鬼灯」と書き、
先祖の霊が迷わず帰ってこられるように導く灯りの象徴として、精霊棚に供えられる。
イチョウ
イチョウは生命力の強い植物で縁起物として好まれています。繁栄や発展の象徴ともされる。
その他
・松竹梅
・七福神
・宝船
・破魔矢・破魔弓
・お札(ふだ)
・絵馬
・熊手(幸運をかき集める)
・羽子板
法事の決まり事
使ってはダメな物
- 肉(本来は魚、かつおぶしもNG)
- 鯛、海老等のお祝い事の席に使用される物
- 焼前(焼物の皿に添える小枝類)に松竹梅など
- 梅酢、ねり梅、梅肉、梅干、梅酒もNGの場合がある
- 紅白や赤系、鶴亀などの敷き紙、食器
- にぎやかなめでたい寿司
- 金粉や金箔
- 派手な盛り付けや器
- 季節感を出す為に菊や穂紫蘇(ほじそ)等は使用OKだが、「桃の花」や「桜の塩漬け」等はダメ
ルール(法事)
- 地域によっては焼魚の向きを逆に置く
- 配膳者は笑顔をひかえる
- 「またどうぞ」「おまちしています」といわない
- 仲居さんの着物などは地味にする
- ハシは、竹の割り箸にする
- 竹は昔、火葬場で骨を拾うのに使っていたので法事はOK、慶事はNG
- 割り箸は不幸と決別する意味あり。 慶事の割り箸はダメ
- 緑茶はOK、こぶ茶・さくら茶はダメ
調理(法事)
- まわし切りにしてはいけない(きゅうりの漬物など)・・・葬儀の順番が回ってくる
- 結びこんにゃくは、お祝いで使われるので葬儀には使わない・・・三角切り
- 煮物は、濃い色に煮ない・・・ご遺体の白装束に合わせて白煮。
- 通夜には生もの(刺身)や肉は食べない・・・ご遺体が荼毘にふされていないので
- お蕎麦は食べない・・・お蕎麦は「細く長く」とお祝いの縁起物として使われますので、葬儀の時は「うどん」。
以上、いかかでしたでしょうか?色々と小難しいことが多そうにも見えますが、大事なのはおもてなしの心です。ちゃんと食事の目的に合わせて、お客さんのためを思い料理を作ることができれば、満足してくれることでしょう。