寿司のネタの方向・向き ~握りの皮目の位置はむこう側にするのか、手前にするのか?~
お寿司の本を見て、不思議に思ったことはありませんか?
今日は料理人だからこそ気付く、お寿司の皮目の位置について私の見解を述べたいと思います。
お寿司の皮目の位置・向きについて 奥か手前か?
このタイトルのとおり、寿司を握って盛り付ける時に、
上の写真のように皮のある方を奥(写真左)にするか、手前(写真右)にするかあなたはどちらだと思いますか?(右のは少しわかりづらいかもしれませんが、、、)または、どちらが良い、しっくりきますか?
なぜ、この議題に挑戦しようと思ったのかというと、実は私は、断然、皮目が向こうだと、ずっと信じてきて、これまで皮目奥(写真左)で盛り付けていたのですが、ある料理人からの質問がきっかけで、調べることにしました。
料理本などの写真を見ると、皮目が手前のバージョン、奥のバージョン、どちらもあります。
私は日本料理出身で寿司も握りますが、もともと寿司屋から修業を始めた料理人は、結構、皮目手前で盛り付けていることも多いのです。
そこで、色々と検証した結果、面白いことがわかりました。これからその検証結果をお伝えします。
まず、お寿司の皮目手前、奥の違いについて、私は3つの説があると考えます。ちなみに、説明で使う写真の魚の多くは、世界で一番多く食されるであろうお寿司のネタであるサーモンを例にとって解説します。
日本では店によっては(または季節によっても)あまり使わないかもしれませんが(特に高級すしの場合見る機会が少ないかも)海外では、ダントツサーモンを皆さん食べます。
寿司の皮目の位置 3つの説
最初に結論を言ってしまいますが、それぞれお店のスタイルによって、やりかたはさまざまなので、「これが答えだ!」というものではありませんし、どの場合も、ちゃんと自分の中で理論づけて料理をしているのであれば、質問された時に自信を持って答えられるので、自分が良いと思ったやり方でいいと思います。
さて、始めましょう!
まず、寿司の皮目の位置について、“職人によって何を重視するかが違う”というのが、分かれ目です。その何を基準にするのかというと大きく分けて3つあります。
1:日本料理の決まりごと
2:魚の食感・筋の方向
3:見た目の美しさ
では、それぞれ説明していきます。ちなみにお寿司を置く時に、右斜め下に向かって並べるか、左斜め下に向かって並べるかについては、日本は右利きが多いことから、食べやすい右下に向かって盛ることがほとんどです。
<右利き・右斜め下方向>
ただ、もしお客さんが左利きだった場合、左下方向に置いてあげるのが、良い場合もあります。(お客さんは左手を使って食べるので)
<左利き・左斜め下方向>
ただ、この上2つの写真のような二方向の向きまで、お客さんによって変えるとなると切り方などをいちいち変えなくてはならず、色々とややこしいので(ロスの問題とか)その部分は置いておいて、通常寿司を提供するであろう右利きの場合で、皮目の位置についてお話します。
あと、皮の面が内側か外側かについては、特に触れていません。
1:日本料理の決まりごと
和食の料理人が、日本料理屋で修業を積んでから寿司を勉強すると、ほとんどの場合、皮目が向う側になります。その理由として、お造り(刺身)の決まりごとがあるからだと推測されます。
というのも、お造りは、平造り、そぎ造りなどのほか切り方は色々ありますが、多くの場合、寿司ネタにする魚を切る場合、そぎ造り(斜めに切る)または、場合によっては平造り(縦に真っすぐ切る)の方もいるかもしれません(ほとんどないと思いますが)。その際に、ほとんどの場合、皮目を上側にして盛りつけます。
(左の写真はそぎ造りで切った白身、右はカツオ)
おそらく多くの和食料理人は、日本料理での、造りの盛り付けの感覚が身についてしまっているので、寿司を握って盛り付ける場合でも、またはお客さんの前に出す時も、皮目をむこう側にするのだと思います。
さらには、何貫も同じお皿に盛りつける場合、見た目のバランスとして、皮目はどちらかで統一した方がキレイに見えるため、バランスの面から見ても、寿司一貫が皮目奥であれば、他のお寿司も同じ向きにすると思います。そして、問題は切り方です。一般的な日本料理の決まり事として、
魚を切る場合、まな板の奥側を高くして、手前を低くして切りつけます。
平造り、そぎ造りも同じです。また、筋の方向によって、平造りかそぎ造りかを使い分けたりもします。それが、和食出身の方のスタイルで多いのですが、私が今まで見てきた経験上、結構な確率で寿司屋出身の料理人は、高い方を手前にして切るのです。
(高い方を手前にして切った写真)
ちなみに、基本と言われる切り方で、なぜ奥が高い方が良いのか?
その理由として『包丁の構造上の理由で力が伝わりやすいので、切りやすく、均一な厚さになる』というのが挙げられます。なので、何か理由が無い限り、ネタの手前を高くして切る理由が無いですし、包丁が切れて、技術がないと、同じ厚さにするのは難しいのです。
さらには、手前高くして、そぎ造りにする場合、左手でネタを押さえにくいという理由もあるため、全体を同じ厚さにするのが難しいと思います。(0.1mm単位くらいの厚さの違いですが、口に入れればその差はわかる人にはわかります)なので、手前が高いと部位や切り方によっては、とても切りにくいです。
そのような理由もあり、切ったネタをまな板に並べる段階でも、皮目向こう(奥)で並べるはずなので、
その位置のまま、お寿司も皮目向うになるのです。以上が日本料理の決まりごとから考えられるお寿司の向きの考え方で、皮目向う側の場合が多いです。
では次の
2:魚の食感・筋の方向
3:見た目の美しさ
については、まだまだ長くなりそうなので次回に回します。
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