今回は、前回にお話したお酢の基礎知識をもとに、料理をしているときに「なんでお酢を使うとこうなるの?」などの疑問にお答えしたいと思います。(お酢の知識について詳しくはこちら)http://wp.me/p50ahn-1kd
質問1 お酢とポン酢の違いはなんですか?
米酢は穀物から、果実酢はりんご、ぶどうなどの果実を原料にアルコール発酵を経て、作られていますが、
ポン酢は、だいだい、ゆず、スダチ、かぼすのような柑橘類から絞った果汁に醤油などを混ぜたもので、発酵は関係なく、酸味の成分は“クエン酸”です。
米酢などの酸味は酢酸で、ポン酢はクエン酸の酸味なのですが、酢酸の酸味の方が、どちらかと言えば単純な刺激のある味で、クエン酸は落ち着いた味の中にも強い酸味を持っています。ちなみにレモンの酸味もクエン酸で、ミカンや梅干しもクエン酸です。つまり、そもそもの酢の成分が違うということです。
質問2 卵をゆでる時に酢を加えるのはなんで?
タンパク質の性質は、卵の白身を想像してもらえればわかりやすいですが、加熱をしたり、撹拌すると分子の状態が変化し性質が変わります。(これを《タンパク質の変性》と呼ぶ)
そして、ほとんどのタンパク質は、加熱や撹拌などで分子が絡み合った状態になり、自由にうごけなくなって(固まって)きます。(これを《タンパク質の熱凝固》と呼ぶ)
このタンパク質が固まるのは、肉や魚、卵などのすべての動物性食品に起こります。
タンパク質の熱変性は、塩や酢によって促進されるので、ゆで卵をつくる時に鍋の湯に塩や酢を入れておくと、“ひび”が入ったりして、卵の中の白身を固めて、飛び出すのを防いでくれるのです。落とし卵の場合でも、酢や塩を入れておくと形が決まりやすいです。
質問3 大根おろしに酢を加えると、辛みが出なくなるってホント?
ワサビや辛子、大根などの持つ辛み成分は、植物そのままの状態では辛みはありません。しかし、酵素の作用で分解することで、辛みを出すことができます。つまり、細かいおろし金でゆっくりおろすことで強い辛みが出ます。しかし、酢を加えることによって、その酵素作用が止まり辛みが抑えられるのです。
この辛み物質は、イソチアネートと呼ばれるのですが、大根の場合(その他のわさびとかも同様ですが)、その辛み物質の含有量が場所によって違ってきます。
例えば、大根の先端(土に埋まっている方)ほど辛みが強く、葉の付いている方に向かうほど、辛み成分が少なくなるのです。その他、生育具合によっても辛みは違い、若いほど辛みが強く、成熟するほど辛みが弱くなります。
質問4 蓮根(れんこん)や牛蒡(ごぼう)などのアクの強いものを酢水に漬けて変色を防ぐ原理とは?
レンコンやごぼう、うどなどを酢水に漬ける目的は、塩の場合と同じく、物質の酸化を進める酵素の作用を抑え、褐色を防ぐことです。そして、多くの野菜に含まれているフラボノイドという色素は、酸性で無色、アルカリ性で黄褐色になるため、酢水に漬けたり、酢を入れて煮ることで、色素が無色になります。
・物質の酸化を進める酵素の作用を抑える
・フラボノイド色素の性質
この2つの作用によって、白くなる条件が重なり色が白く仕上がります。さらにレンコンの場合は、レンコンの持つ糸をひく成分も酢によって粘りを取り除き、歯切れがよくなります。
以上、料理をするうえでよくありがちな疑問でした。