
2:魚の食感・筋の方向
前回の続きです。読んでいない方はこちら、
ここでは「筋の向きはどうなのか?」という疑問点についてお話しします。
白身によっては、薄く筋に沿って切ることで、
歯ごたえを残し、存在感を出すという場合もあります。
また、魚の身質によって筋を切るか切らないかを分ける場合もあります。
その他、筋とか関係なく、
表面に切りこみや飾り包丁を入れて握る場合もあります(イカ・アジなど)
このように、魚の種類にもよりますが、おそらく多くの魚は、
筋を切るように包丁を入れると思います。
(上の写真では右上側からそぎ切りしていく)
ここでは、サーモンを使って説明しますが、
研究していくうちに、サーモンのような大きい魚(3~4kg以上)と
鯛のように小さい魚(2kg未満)では、柵どりの仕方(部位のカット)が違うため、
若干解釈が異なることも出てくることに気付きました。
とりあえず、サーモンでの
今回の場所別の筋の入り方についての写真を見てください。
<写真A>
(見にくい場合クリックして拡大してください)
下の写真は、<写真A>の④と⑤を頭の方から同じようにそぎ切りにした写真です。
<写真B 上:下身の腹側⑤、下:下身の背側④>
(右の写真は、上が筋に沿って切った場合、下が筋に逆らって(筋を切るように)切った場合)
ですので、本来筋を切ろうとした場合、⑤(写真B上)の切り身の場合は180度回転させて筋を切るようにしなければなりません。
筋についてこちらの写真を見てください。
<サーモンのおろした全体写真>
筋の入り方は、、上身と下身では、逆になります。
右の写真をクリックして見てもらえればわかりますが、
赤い線で描いたように、筋が通っています。
(*部位のカットは「なんでこんな切り方なの?」と思うかもしれませんが、お店の都合上のことなのでご勘弁を、、、)
さて、このように、魚の筋は必ず斜めになっているので
お刺身で食べる場合で平造りなら、筋を切る形になります。
しかし、寿司ネタにするようなそぎ造りの場合、
片方の身は筋が切れても良くても、もう反対の身に関しては、
同じような向きで(高い方向う側)切ると、筋と同じ方向で切る形になります。
↓写真の状態
ということは、筋を切るためには、高い方を手前にしてそぎ切りにしなければなりません。
↓下写真の上のような向きにして左側からそぎ切りする。
ちなみに、包丁の角度を90度変えて、切ることで
筋に沿って切ることを防ぐことができます。
まとめとして、
筋を断つように切る場合は、
魚の場所によって、切る角度や身の位置(奥が高い、低いなど)を変える必要があります。
それにより、寿司を握ったときの見た目も変わってくるので、切ったネタの形によって、
皮目の位置を手前にしたり、奥にしたりという違いが出てくるのではないかと思われます。
料亭・割烹のように、平造り、そぎ造りなど使い分けができるのであれば
上身、下身の部位によって、切り方を変えればそれで済むのですが、
お寿司屋など、寿司のネタとしての切りつけしかできない場合、
どのように対処しているのか?という疑問にあたると、
必然的に、ネタを切る時に高い方を手前にして切るやり方に落ち着くのかと思います。
さらには、寿司のネタを切る場合、
一般的には、尾の方から切りつけをすると言われていますが、
それを上身・下身すべて尻尾の方からそぎ切りとなると、どうしてもどちらかは筋に沿って切ることとなります。
どの考えを優先させるかによって、やり方は違うと思うのですが、
筋を切るようにネタをカットする場合、どちらかは尾側から
どちらかは頭側から切り付ける
ということになります。
または、90度角度を変えて切るという考えもあります。
その場合、切り方で皮目の位置が変わるといえます。
いくつかパターンがありますが、
皮を下、ネタの高い方を奥にして、そぎ切りした場合、
<写真C>
上の写真のように、同じ皮目を上にしても、
一方(下)は左が幅広く右に行くにつれ細くなり
もう一方(上)は左側が狭く、右に行くにつれ広くなっています。
ここで日本料理の基礎の概念も含まれてきますが
もしネタの幅の大きさが左右で違っていたら、
盛り付けの原則として、左が幅広(つまり大きい高い)
右は狭く(小さい低い)という盛り付けが主となるため、
寿司の握りについても同じように盛り付けることを考えると、
<写真C>の下の切り身の場合は写真通りの向きで“皮目奥”で寿司を握り、
上の切り身の場合は“皮目手前”にして握ることとなります。
さらにもう一つの考え方として、
切り身の大きさが左右全く同じ幅だった場合、
その切り身の左右どちら側が頭側なのか?尾側なのか?
で盛り付け(皮目手前か奥か)を変える方法です。
つまり、切りつけたネタを見て、
頭に近い方を左(上)、尾に近い方を右(下)にして盛りつけるという考えです。
例えば次のように切った場合、切り身は<写真A>の①の切り身なので、
上写真にあるブロックのサーモンの右側が頭側となります。
ということはつまり、写真左の切り身の右下方向が頭側となるため、
頭側を左にして盛り付けるという考えでは、この切り身は皮が手前でもりつけることとなります。
(しかし右側が幅広になってしまいますが、、、)
このように、色々な考え方があって
皮目手前か奥かを分けているかもしれません。
そして、最後にまとめとして
再度同じことを言いますが、ここでは筋を断つようにネタを切ったうえで、
その時に切ったネタの形や和食の考え方により、
握り方や皮目を手前にするのか、奥にするのかを変えているのではないのか?
というのが、今回の説2の私なりの答えです。
色々とパターンを考えていると、矛盾しているところも出てきますし、
ここまでこだわる必要もないようにも感じることもありますが、
みなさん、さまざまな理由が融合されて握っているのだと思いますが、
自分なりのこれだというポリシーを持っていれば、良いのかと思います。
以上、説2でした。
実はもう一つ、説3が浮上しました。
また次回をお楽しみください。
↓↓↓
お寿司の皮目の位置・向きは奥か手前か? 説3 ~見た目重視~