今さら聞けない鮨(すし)の歴史と作法 ~11の料理雑学~

鮨の雑学Q&A ご存知の方も多いでしょうが書いておきます。

Q1:鮨の起源は?

鮨発祥の地は東南アジアだと言われています。東南アジアの山岳盆地です。

この地帯に住む人は川魚を米や栗のでんぷん質と一緒に漬け込み自然発酵により生じる乳酸によって腐敗を防ぐ保存食を作っていました。

これは動物性タンパク質の保存の一つで、この場合のご飯はあくまで漬け床であって食用ではないです。

つまり「なれずし」というものです。これが日本に稲作が伝わった時に一緒に伝わったと言われています。

Q2:『寿司』『鮨』『鮓』の漢字の違いは何?

中国で文字本来の意味を見てみます。

魚偏に旨と書いた『鮨』は魚の塩辛を表します。『鮓』は飯と塩で魚を発酵させた保存食のことです。三国時代この二つの柱がありそれがそのまま伝わったと言われています。

今よく使われる寿に司の『寿司』は江戸時代に縁起を担いで作られた当て字です。

*この記事では、統一して「鮨」と表記しています。

Q3:鮨の種類と歴史とは?

鮨の原型を留めているのが琵琶湖周辺で作られる「なれずし」の一種、鮒鮨と呼ばれるものです。

使われるのは琵琶湖に住むニゴロブナという魚。数ヶ月塩漬けにした後に塩抜きをします。

ご飯と一緒に桶に入れて1年ほど漬け込みます。自然発酵によって独特な酸味と風味が生まれます。

「なれずし」には「本なれ」と「生なれ(半なれ)」があり、「本なれ」が鮒鮨。

「生なれ」は発酵時間が短く米に酸味が出るか出ないうちに食べます。この状態は魚も生に近く塩味とやや酸味のあるご飯そのものも美味しく食べられます。

この生なれの鮨が登場したのが室町時代。桶に使用した魚とご飯を交互にしき蓋をして、数日で軽い酸味のある鮨ができる。これが「押しずし」や「箱ずし」の原型です。

江戸時代になると米酢が広く販売されお米に酢を混ぜて酸味を作り出せるようになりました。

それが「早ずし」です。”柿の葉鮨”のように1日ぐらいはそのまま置いてご飯と具を慣れさせたものでした。

その「早ずし」が普及するようになると、その地方特産の魚介や野菜乾物などを使った「ちらしずし(ばらずし)」が作られ定着していったのです。

そして江戸時代後期この「早ずし」よりもさらに早く食べるために考えられたのが「握り鮨」です。

Q4:握り鮨はどのように誕生したの?

握り鮨ができた当時は、今よりもとても大きくて酢飯がにぎりめし(おにぎり)ほどもありました。

なので食べやすくするために二つや三つに切って食べたと言われます。

握り鮨は本来、屋台でつまむもので、今で言うファーストフードでした。握りたてをその場ですぐ食べられるので人気になったといいます。

握り鮨が誕生する前は押し鮨が主流でした。

Q5:どうして”江戸前”と呼ぶの?

江戸の町の目の前に広がる海で獲れた魚をネタに使ったからです。当時の東京湾は魚の種類や量とても豊かでした。

濃口醤油や赤酢が誕生したことも握り鮨誕生の条件と考えられます。

また江戸末期にはマグロの赤身を醤油につける「づけ」が考えられました。

江戸前鮨の原型は魚に塩をして酢でしめる、醤油に漬ける、煮含めるなどの手間をかけてから握りにしていました。このような仕事は「江戸前の仕事」と言われます。

Q6:鮨に最適なお米とは?

一般的には粘りが少なくあっさりした味わいのものが向いています。

銘柄で言うとササニシキ。コシヒカリでも他のブランドでも、産地や生産者によって鮨に向くものもあります。

新米の時には水の加減を調整して固めに炊いたり、古米に切り替えたり、ブレンドして使うところもあります。

Q7:鮨にはどんな酢を使うか?

赤酢が作られたことでお鮨の評判は一気に広まりました。

なので江戸前の握りは赤酢を使う人も多いです。 

Q8:鮨の醤油って何?

江戸前鮨の伝統では、醤油をそのまま使うのではなく、醤油やみりん酒などをあわせて一煮立ちさせた「煮切り」と呼ばれるものを使用します。この煮切りを刷毛でひと塗りして提供します。

でも煮切りには甘みがあるので、あえて醤油だけにしている店もあります。

お客さんが自ら醤油をつけて食べる場合は、醤油はご飯ではなく、ネタの方に付けます。

例えば傾けただけでそのネタが溢れそうな軍艦巻きなどは生姜を醤油につけて、それをネタに含ませる。もしくは醤油差しでちょっとだけかける。このようにしてもいいです。

Q9:鮨に合うお酒とは?

基本的には昔の鮨屋ではお酒を出さなかったです。でも次第に接待の場とかお酒の飲む場所に変わっていきます。

鮨に合うお酒は、やはり同じ米から作られる日本酒です。

しかし吟醸香の強いものは醤油との相性は良くなく、特にマグロの赤身のづけなどは、向いていないです。上品な白身には辛口の白ワインも合うでしょう。

Q10:生姜(ガリ)はなぜ食べるの?

生姜は鮨の味を消す効果があります。口の中に残る匂いを消して次の鮨をより美味しく食べる工夫です。

また殺菌効果もあります。

Q11:ガラスのネタケースと木のネタケースの違いは?

ガラスのケースは長時間ネタを入れとくと表面が乾いてしまいます。だから木箱にネタを並べて氷や保冷剤で適温を保つところもあります。