催眠術と料理の味覚・好き嫌いの関連性
催眠術と聞いて、警戒する人は多いです。これを読んでいるあなたも、「怪しすぎる、、、」なんて思っているでしょう。
もともと私は、小さいころから手品が大好きで、週1でマジックショップに通い、色々と教えてもらっていました。それくらい、手品好きでハマっていた時期がありました。そんな私が、催眠術に興味を持つのも自然な流れで、手品と催眠術は非常に近い関係性があります。
多くの人は、 『手品は楽しいが、催眠術は怪しい』と感じているかもしれませんが、催眠術も手品と同じく、 “タネ”さえ知っていれば、誰でも簡単にかけられるのです。 信じられないでしょうが本当です。
、、、そんな催眠術ですが、よくテレビなどで、《水をワインの味に変える》または、《嫌いな食べ物を好きにさせる》という催眠現象がありますが、レストランで出す料理の味をそんな魔法のように変えることができたら、どんなに素晴らしいことかと考える時があります。
催眠術で料理の味が変わる仕組み
簡単に原理を説明すると、味が変わるのは脳がそのように判断しているからです。しかしそれは、催眠状態に入っているからこそできる芸当であって、一般のお客様相手に、催眠で料理の味を変化させて、感動を生み出すのは至難の業です。
というのも、催眠をかけるには、“相手を催眠状態にさせること”が必要で、そのためにはお互いの信頼関係や安心感などが第一条件となります。現実的ではありません。
ある種のイベントとしての催しであれば、お店の演出としては可能でしょうが、毎回毎回というより、対複数のお客さんを相手に集団催眠をかけるというのはまず無理でしょう。
なので、イベントでない限り、料理屋で、お客さんを喜ばす、感動させるという意味で、催眠術は難しいです。
また、例えば、同じ水だとしても、イチゴの香料と砂糖を少し加えた水であれば、「見た目は無色透明の水なのに、味はイチゴジュース」 みたいな現象は起こせますが、これは催眠術ではなく、手品の要素が強くなってしまいます。
催眠誘導の一部として取り入れるのは良いですが、それは催眠術とは言いません。
催眠にかかっているときにしか効果がないのか?
人参が嫌いな人が、催眠術によって人参が食べられるようになるというのは、催眠にかかっているときにしか効果がないのか?というと、そんなこともなく、催眠が解けた後も、効果は持続させることができます。
もちろんやり方によりますが、基本的に相手が催眠状態になれるのであれば、大体の場合、偏食は治すことができます。これは、高所恐怖症など、食べ物以外にも効果は見込めます。
催眠にかかる人、かからない人
催眠術をかける場合、 催眠術師にいくらスキルや経験があっても、相手が「絶対にかけられたくない!」と強く思っていれば、かかることはありません。
さきほども言った通り、お互いの信頼関係が大事で、掛けられる相手も、「催眠術によって、人参嫌いを克服したい」と多少なりとも思っていなければ、効果が薄いです。
偏食の2パターン
食べ物の好き嫌いは、アレルギーなどのどうしようもない場合は別にして、2種類あります。
1:同系統の嫌いな食べ物
2:食品全般に好き嫌いが多い場合
<1:同系統の嫌いな食べ物>
例えば、トマトはダメだという場合、ケチャップやトマトを使っているミートソースもだめというケースがあります。
牛乳はダメでも、乳製品全部がダメなどは同系統に入ります。または人参の甘さ、食感などが要因、過去の何らかのトラウマによる嫌悪感から来るものも同じです。
このような偏食の場合、催眠でどのように好きにさせるのかと言うと、偏食は本人の体験によるものが多いため、過去のその部分を取り除いてしまえば、簡単に治る場合が多いです。
それでも治すのが少し難しいケースは、 “なぜ嫌いなのかを自覚していない場合”です。
例えば、バナナの味がダメ、匂いがダメ、食感がダメ「過去に大量に食べたから嫌い、バナナをのどに詰まらせて死にそうになった」などある程度具体的にわかる好き嫌いであれば、催眠で治しやすいのですが、そのような出来事がすっかり忘れてしまっている場合、難しかったりします。
同系統の食べ物でも、 例えば、乳製品は全て駄目だといいながら、アイスクリームはOK、コーンポタージュは美味しく食べられるなど、要するに、自分の中でのイメージによって、好き嫌いを判断している場合は、治しやすいと言えます。
2つの記憶
記憶には、
A:知識として追加して記憶されているもの
B:過去の実体験として固定されているもの
の2つがあります。
例えば、昔、大根の桂剥きを一生懸命練習して、うまくできるようになったとします。しかし、数年間桂剥きをしていなかったにもかかわらず、突然やってみると、「あら意外、結構できるじゃん」というのは、
B:過去の実体験として固定されているもの
にあたります。
車の運転も同じです。 体験として蓄えられた記憶はなかなか薄れません。つまり良い記憶も悪い記憶も、その体験に感情を混ぜて記憶していると忘れなくなります。
小さい頃の記憶ほど、表面上の記憶からは消えていても、潜在意識に影響として残っているのです。体験に感情を合わせた記憶は忘れにくいです。一時的に催眠で治った場合でも、またもとに戻る場合もあります。
また悪いイメージの記憶でも、バナナの皮をむく、匂いを嗅ぐなどの動作が引き金となって嫌いな場合も多いです。そうなると本人にとっては、見るのも触るのもイヤになります。そして、悪いイメージを増幅させます。
例えば、若いころには高いところは大丈夫だったが、年を取るにつれ高所恐怖症がひどくなるというのは、日ごろの経験の中で、高所恐怖症の話が出るたびにそれらの経験をどんどんつなげていってしまうため、増幅してしまうのです。
(例)最初は単に高いところが苦手だったのが、日が経つにつれ、振られた相手と一緒にスカイダイビングをした、風邪をひいているときに高いビルに行った、などの記憶と繋がり増幅していきます。
話がすこしそれたので、戻します。
なぜ催眠術で偏食が治るか?
実際、同系統の食べ物が嫌いでも、人参はダメでも、カレーライスに形を残さず入っているのは大丈夫等の場合など、もし犬であれば、その微量な差でも人参が入っているのに気付くのに、人間は気付きません。つまり、それだけ人間の味覚は鋭くないのです。
目隠しをして食べると、多くの人が、なんの食べ物かわからなくなるように、人間の味覚も半分は機能していないと言われます。そして年を取るにつれ、その感覚は低下します。それにほとんどの場合、味覚より、鼻から抜ける嗅覚で味を判断しています。
さらに見た目の色や形を過去の経験と照らし合わせ推測して料理の味を作り出してもいます。
つまり料理とは、“人間の持つ食品のイメージ”も含むのです。
偏食が治るのは、催眠を使ってその食品の悪いイメージを断ち切り、新たにその食品に対する良いイメージを植え付けているのです。人は、過去の経験の中からでも、より新しいうまいと思う欲求や刺激ほど手放さなくなります。
後から受け取ったイメージや体験が、本人にとって苦痛ではなく快感に近いのであれば、それを優先するようになり、それを催眠ですることで一度修正すれば、何かのきっかけが無ければ元に戻らなくなります。
治らない偏食の場合
<2:食品全般に好き嫌いが多い場合>
嫌いな物の比率が異様に多い場合、催眠術を使っても治らないケースが多いです。
「何か」に限定されることなく、 「魚も肉も卵も牛乳も果物もキライ」など、偏食と言うより、偏りすぎて食べられるものが少ない場合です。その場合、そもそも催眠術を受け入れられる人自体が少ないと言えるでしょう。本人も本気で偏食を治そうと思っていないケースがほとんどです。
ようするに、「催眠にかかる人であれば、偏食は治せる」ということは、「偏食が治せる人は、催眠術を用いなくても自分の意志で治すこともできる」と言えます。
なぜなら、催眠術にかかる時点で、その人は潜在的に偏食を治す可能性を持っていると言えるからです。
催眠術を使わず偏食を治す方法
先述した通り、人間の味覚というのは、繊細そうに見えて、実は鈍感です。思い込みや過去の記憶、そして、食感や嗅覚に大きく影響されます。
とすれば、料理人側で、キライな食品を使っていても、香りや食感の部分で、その食品の要素をほとんど消してしまい、少しずつ、キライな食品の要素を強めていく作業を繰り返せば、時間はかかりますが、偏食は治せると思います。
相手にとっては、「気付いたら食べられるようになっていた」状態を作り出せます。そこには、もちろん作る側と食べる側の信頼関係もとても重要になってくるでしょう。
そして科学の発達した現代の調理技術なら、意外に簡単に調理法次第で、相手の嫌いな食べ物に対する意識も変えることができるかもしれません。
そんな、“キライだった食べ物を好きにさせてくれる料理”を創作していくのも、相手にある種の感動を与えるという意味では、料理人の役目とも言えるでしょう。
この話は次回に続きます、、、