前回、催眠術と料理の味覚・好き嫌いの関連性・偏食は治せるのか、について話しました。催眠を使い「好き嫌い」を治す偏食治療法
今回は、催眠術と感動料理についてです。
料理の味を自由に変えることができたら、相手を100%喜ばせることができる
私は料理人の立場でありながら、常々、思っていたことがあります。それは、
「催眠術が使えたら、食べるすべてのお客さんに感動して泣いてしまうような料理を作れるのではないか?」という考えです。(ちなみに、「もっと料理を追究しろよ!」という声もごもっともですが、自己満足で日の目を見ずに終わってしまう料理人を何人も見てきたので、このような発想も時には良いかと思い書いております。)
このような私の考えに、共感してくれる方がいるかどうかわかりませんが、、、。
私が思うに、プロの料理人が料理で相手に、「おいしい!」「うまい!」と言わせるのは、当たり前ですし、当然のことですし、ある程度経験を積めば簡単です。
でも、、、本当に心から、美味しいと思ってもらえて、「今までにないくらい感動した料理だ」とか「感動して、何も言えない」など、相手を感動の渦に巻き込んで、大号泣させるくらいの破壊力を持つ料理を作るのはかなり難しいです。(少なくとも私は簡単にはできません)
奇跡の産物として、たまに、相手(食べる側)の感覚と作る側の料理がフィーリングして、サービスや雰囲気などの環境も加味し、相手が感動して、驚いて泣いてまでくれる料理は本当にたまのたまーにありますが、それを狙ってできるのは、そうとう至難の業です。
でも、、、もし、本当に、どんなお客さんでも、ものすごく感動させる料理が作れるのであれば、それは料理人名義に尽きるというものです。
、、、ということを日ごろから考えていたら、ブログでも書いているような、料理とエネルギー、氣の巡りやスピリチュアル系に足を踏み込んだ時期もありました。
全く目に見えない出来事が関連して、料理の味に影響を与えたり、 逆に科学的に検証して、 舌の味覚センサーである味蕾の感覚や嗅覚から検証して、ロボットなどの味覚判断なども利用し、栄養学や健康面なども勉強し、そこから感動させる料理が作れないかと試行錯誤したこともあります。
そんな中、全く違うアプローチの催眠術を使って、料理を食べて感動させられないかとも考えたのが、今回の話のきっかけです。
そもそも料理店で催眠術は無理
前回でもお話しした通り、http://wp.me/p50ahn-1vV 来店するお客さんすべてに毎回、催眠術を使って、料理の味を自由自在に変えるのは現実的ではありませんし、その店は“料理屋”というより“催眠術を楽しむ店”の要素が強くなってきます。
なぜなら、催眠術で料理の味を変えられるなら、極論、「何を出しても良い」ということになってしまいます。
催眠術を使えば、 水道水を出して、ワインの味に変えて、白飯を高級フレンチ料理に見せれば、原価は激安で、高単価の料理としてお店は大儲かりになります。
経営的には万々歳ですし、 それで、お客さんも喜んでくれれば、問題ないかもしれません。(そんなお店が世界のどこかに存在しても面白いかも、、、)
催眠術を使えば、ある程度の記憶も操作できるため、お客さんは、本当に数万円の高級料理を食べていると思い込むわけです。だから問題なくお金を払ってくれます。
、、、など、こんな夢のような話をしても、現実には難しいです。 というのも、催眠術は、10人の人が10人ともかかるわけではないからです。
催眠成分である、メラトニンを含む食べ物(バナナ、くるみなど)を多く使ったり、呼吸の調節に関係し、催眠作用に似た効果のある、アミノ酸の一種のグリシン(えび、ほたてなど)や、体内で神経伝達物質のセロトニンの合成を高めるトリプトファン(牛乳、バナナ、大豆製品)、鎮静作用のある香り成分テオブロミン(チョコレート、カカオ)。また、眠りに誘う香り(ラベンダー、ローズ)
これらの食材を使って催眠状態に持っていけるかと言うと、それも多少は催眠状態に持っていける確率は高まるでしょうが、100%ではありません。
催眠にかかってくれれば、料理で相手を感動させることはできる?
もし、催眠術で料理の味を自由に変えることができれば、相手を感動させることができるでしょうか?
だとしたら「どんな料理に変えますか?」 「万人が感動する料理ってなんですか?」その部分を考えると、結局のところ行きつく答えは同じな気がします。
それは、、、『食べる側の気持ちを深く理解すること』これに尽きるのではないでしょうか?
考えてみてください。もし料理がへたくそでも、催眠術が使えたら、美味しい料理に変えて、「あぁ、とっても美味しかった」と言ってもらえます。
逆に催眠術が使えなくても、美味しい料理がつくれれば、同じように「あぁ、とっても美味しかった」と言ってもらえます。
結論、身体に入る栄養的なものは別にして、催眠術でもとりあえずは、美味しいものは美味しいです。
でも“感動を生み出す料理”というのは、相手の感情を揺さぶらなければなりません。
それが、「催眠術でできるか」「料理でできるか」の違いです。
そこを考えると、相手のことを深く理解していないと食べる側に感動を与えるのは極めて難しいと言えます。ただ、料理を突き詰めて、突き詰めて、その先に出来上がった至高の、究極の料理であれば、ものすごい感動を与えることができるかもしれません。
「今までに食べたことのないくらい素晴らしい味だ」と思うかもしれませんが、
これもまた、想像してみてください。
あり得ないくらい美味い料理を食べたとして、あなたは「感動して泣きますか?」
私は泣きません。(そんな料理に出会ったことがないからかもしれませんが、、、)
せいぜい、「すごい、すごすぎる、、、」とブルブル震えて鳥肌が立つくらいが限度です。(それだけで十分かもしれませんが、、、)
感動の渦に巻き込まれて、わんわんと大声で、大号泣することはありません。
かなり驚く、鳥肌ものの料理は、世界中探せばあると思いますが、泣くくらい感動する料理はあるのかと言われれば、私は、疑問符(?)が浮かび上がります。
感動料理は愛情料理
ベタな結論に終わりそうですが、 最終的に、感動する料理と言うのは、一人一人違っていて、
・食べる人の過去
・想い出
・バックグラウンド
・母の味
などなど、人によって違います。
もしかしたら、数万円もする高級フレンチより、コンビニの100円おにぎりの方が感動する人だっているかもしれません。
超セレブリティシェフが作った料理より、大切なパートナーが作ったへたくそな料理の方が感動するかもしれません。
、、、料理ってそんなものだと思います。
もちろん、私も含め料理人はみんな、厳しい修行を経て得たスキルと経験を使って、“お客さんを笑顔にさせ満足させる料理を作る”のは、一つの【使命】だと思います。
しかし、どんな素晴らしい食材や技術を用いたとしても、食べる人のことを世界で一番考えて、想って作った料理には誰も敵わないかもしれません。
または、過去の記憶にある、母の味だったり、遠足の弁当の味やあの時、みんなで泣いて喜び合った時に食べた(例えば)ラーメンの味などとは比べることができません。あなたにも、そのような思い出の味が少なからずあるかもしれません。
だからこそ、もし料理人個人が、料理だけの力で、相手を感動させ、大号泣させる料理ができるときというのは、『相手のことを深く理解し、その人だけのために作った料理』または、『相手の過去の感動した時の記憶とリンクさせた料理』のどちらかが作れた時ではないかと思います。
これは催眠術で言えば、『相手の感動する記憶を呼び戻す料理の味に変えることができたとき』または、『想い出の人を目の前に現わせて、料理を差し出した時』(催眠では幻覚も見せることができます)ということになります。
また、料理単体で捉えるのではなく、全体の雰囲気などを使って、相手を感動させることは計算してできるかもしれません。
例えば、レストランでの、プロポーズの場面などで、指輪を乗せたケーキを持っていき相手を号泣させる、という状況はあっても、それは料理がスゴイからではなく、その状況や、雰囲気など全てのシチュエーションが含まれています。
未来の料理人
世の中にはいろいろな料理があります。
・味を突き詰めた料理
・健康に良い料理
・テクニックを使った料理
・誰も作ったことのない組み合わせの料理
・中毒になりそうな本能を刺激する料理
・相手を想って作った料理
・食べる側の過去の記憶を呼び起こす料理
・ただ自分が満足する料理
・高級食材を使った料理
・だれも使ったことのない食材で挑戦した料理
・安くて早くて美味しい料理
・大量に作れてうまい料理
・専門に特化した料理
・見た目、盛り付けがスゴイ料理
・感動する料理
または、
・これらを組み合わせた料理
、、、 さまざまな料理が生まれます。
まとめ
“感動する料理”というのは、催眠術でも料理テクニックからでも生み出されるものではなく、(色々な広定義で)愛情をこめて作った料理ではないかと思います。
最後に、まとめになるかどうかはわかりませんが、最近いいなと思った、中国拳法の武術家である、李書文(りしょうぶん)の言葉で締めくくりたいと思います。
『不怕千招會 就怕一招精』
「千招有るを怖れず、一招熟するを怖れよ」
これは、 「千種類の技を駆使する者よりも、ひとつの技を極めた者の方が手強い」という意味です。
どんな系統の料理も、一つのゴールやターゲットに向けて一生懸命に作った料理は、他のどんな料理よりも素晴らしく感動を与える料理になり得るでしょう。