お食い初めの基本と基礎知識やレシピ、歴史についてお話しします。
海外に住んでいても、日本の伝統行事を大事にされているお客さんはいらっしゃいます。
お食い初めを頼まれるなんて、日本の料理屋で働いていても、めったにないことかもしれませんが、昔からある儀式を大切にされているのは嬉しいことです。
今回は、海外(オーストラリア)の食材も使いつつ、私独自の“オリジナルお食い初め”を作らせていただきました。
お食い初め(おくいぞめ)の基礎
お食い初めは日本、中国、韓国で行われる儀式です。赤ちゃんが生まれて100日目(または110日目、120日目)に行われます。ヨーロッパでも似たようなことはしているみたいです。
『お食い初め』は、別名『百日祝い(ももかいわい)』とも呼ばれます。
また、『真魚(まな)始め』『食べ初め』『箸揃え』『箸初め』『百日(ももか)の祝い』『歯がため』とも呼ばれます。
意味としては、初めて箸を使って食事をすることから、新生児の生後100日頃に乳歯が生え始めることから、「一生涯、食べることに困らないように」という願いを込めて食事をする真似をさせる儀式です。
日本では江戸時代に、ご飯や魚、五個のお餅、お吸い物、お酒などを揃えて、食べさせる真似をしていたと言われます。
お食い初めの基本構成
伝統的な形式では、一汁三菜の祝い膳です。
- 尾頭付きの鯛
- 赤飯
- 煮物
- 香の物
- 紅白の餅
- 汁物
- 歯固めの石
で構成されます。
汁物は吸い物と呼ばれることから、吸う力が強くなるようにという意味が込められ、歯固めの石は、歯が丈夫になるようにという考えから使われます。*石は実際に口に入れるのではなく、赤ちゃんの歯に当てたり、噛ませる真似をするだけです。
石の仕入れ先は、できれば、近くの神社の境内から借りて、儀式が終わったらまた境内に納めます。地域によって、石の代わりに栗やタコ、梅干し(の種)を使います。囲碁で使われる碁石を使う場合もあります。
男児と女児による違い
男の子の場合は、器の色は内外ともに赤色。女の子の場合は、外が黒色、内が赤色です。正式には。漆器で高足の御膳で提供されます。
Googleで「漆器で高足」って検索して画像を見たら、それっぽい写真が出てきます。*実物持っていないので写真を載せようとしましたが著作権の都合により載せれませんでしたm(_ _)m
食べさせる真似の順番
実際に赤ちゃんにお食い初めの料理を全部食べさせるわけではありません。真似をするだけです。ただ、その真似をするにも順番があります。
1:ご飯
2:お吸い物
3:ご飯
4:お魚
5:ご飯
6:お吸い物、、、と“ご飯→お吸い物”を間にかまして、その他の料理を順番に食べさせる真似をします。
それを3回繰り返します。
歯固めの石の儀式のタイミングは、食事の前か後(地域によって異なる)に行います。
お食い初めのお献立
まずは集合写真。
今回はこのような形で提供させていただきました。ちょっとおせち風に仕上げてみました。ちなみに店内で食べるのではなく、お持ち帰りで家で食べるため、器や容器などは使い捨て(または引き取り)です。
どうしても必要だと思う食材についてはこちら
・尾頭付きの鯛(めでたい)
小さめ800g程度の鯛を姿焼きにしました。
盛り付けて手前(見える側)は傷つけないように鱗などを取って、内臓やエラなどは、ツボ抜き、または盛り付けて反対側になる方に少し包丁を入れて丁寧にきれいに取り除きます。
その後、立て塩(海水程度の塩水)に1~2時間ほど漬け込んだあと、ヒレを立てながら、なおかつ焦がさないように焼きます。弱火でじっくり火を通します。(オーブンや炭火、サラマンダーなど)
周りには、タケノコ土佐煮、数の子、アワビ、生姜甘酢漬けなどを添えています。
・赤飯
今回は紅白でめでたさアピールのため、赤飯と飯蒸し(白いもち米)の両方を付けました。
・煮物
その時期に合った季節ものを使います。エビとレンコンは長寿や将来の明るさを願って。タコは多幸に通じる語呂合わせ。
などなど、食材すべてには意味が込められています。
・香の物
ぬか漬けでこちらも紅白(大根と人参)にしました。あと梅干し。
・汁物
お吸い物は蛤を使いました。(はまぐりの潮汁)
蛤の殻は、“貝合わせ”と言って、対になる貝は他にないことから、良縁を意味し、将来二枚貝のように、ぴったりと合う伴侶に出会えることを願って用意します。
・歯固めの石
シドニーに神社は無いので、、、河原でとった石をキレイに洗って使いました。
数種類の色の石を用意した意味は、色にもさまざまな意味があり、
ピンク:恋愛・幸福・結婚・かわいい・女性らしい
赤:決断・仕事・健康運・情熱・自信・積極的
黄色:金運・変化・変革・能力発揮
緑:健康・安らぎ・信頼・自然・リラックス・安心
青:冷静さ・安眠・勝負運・クール
紫:強い癒し・個性・気品・歴史・人間関係
白:浄化・改革・才能・清純・リセット
黒:静かな強さ・格調の高さ・精神的な強さ・逆境を乗り越える
など、それらの意味も含めて準備しました。
・その他
赤亀と白亀
赤亀は寺院のつりがねである梵鐘(ぼんしょう)を背負って竜宮城から持ち帰ってきた伝説があります。その梵鐘は実在し国の重文指定まで受けています。
また、漁師を助けたと言われる赤亀のために建てられた明亀神社というものがあり、洞門のある大きな岩がある。これを赤亀(あかがめ)岩と呼ばれています。そのような縁起の良い赤亀と、
白亀は、昔は元号を変えるのにある時は亀が主役で、元号の「神亀」や「宝亀」は亀が主役だったこともあり、 また、 白い亀が時の天皇に献上された時、縁起が良いということで元号を変えたなど言われています。
亀川中央町(亀の甲広場)には伝説の白亀塚も現存。
亀は幸運の兆しの象徴でもあり、開運、繁栄、健康、長寿等様々な願い事を叶えてくれると言われています。
海老有頭煮、煮しめ(野菜の煮物) 、数の子、漬物(ぬか漬け、梅干し)、飯蒸し、赤飯、昆布佃煮、アワビ酒蒸し、イクラ、筍土佐煮、スモークサーモンと大根の鳴門巻き、タコ旨煮 和牛のしぐれ煮、などなど
内容としては、ボリューム感たっぷりですが、お客様のご予算と、家族構成なども考慮して、今回のような形になりました。
色々な提供方法はあると思いますが、こんな“お食い初め”もありかなと、参考にしていただけたら幸いです。